↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で聖骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第三章 ギルド開設編 〜治療の光と、つきまとう影〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
91/102

第八十九話 束の間の休みは恋人とラブラブデート、のはずでした



 そして次の日、ギルド連合会館では治療師ギルド関係者による、最後の話し合いが執り行われていた。

 ストリも含めた各ギルドマスターと聖骨院メンバー、そしてアルバスとご意見番としてトキアスが参加している。


 そしてストリの進行で話は進んでいた。


「それでは偽聖癒布のことはこれから禁制治療布と呼ぶことにします。

 禁制治療布を販売した者は、賠償金と禁固刑……使用していた者には罰金が科せられます」


 決まったことを読み上げるストリは、緊張や不安になっている様子はなく、ギルドマスターとして心強い存在に見えた。

 この話し合いで、石工職人たちの処分も決まった。


「今回は処分について決まっていなかったのと、羽澄君のお叱りに免じて罰金は無し。

 ただ、再度禁制治療布を使用すれば、倍の金額の罰金を支払ってもらうってことですね」

「はい、それでいいと思います……羽澄先生のお説教はとても見事でした。

 治療をすぐにしないというのも罰の一つですし」

「見事な説教って……褒められています? それ」


 ヴェルとストリのやりとりに、羽澄は少しふてくされる。


「褒めているさ、このことを説明してあげれば皆泣いて喜ぶんじゃないか」


 そうヴェルが言うものの、羽澄は納得がいっていない表情をしている。


「まあまあ、羽澄君をいじめるのもそれくらいにして。

 しかし偽物に遊毒茸が使用されていたとは……」


 最初は冗談のような口調だったトキアスが、顔を顰めてことの重大さを口にする。


「今回使用していた職人たちは、どうケアしていくつもりか」


 その質問に答えたのはミロルだった。


「現在遊毒茸をとある研究所にお願いしており、依存性の浄化に効果的なものを研究中です」

「職人たちの状態としては、手元に禁制治療布が無いため我慢せざるを得ない状態……だな」

「今は研究所頼りか……ちなみに依存すると、本人たちにはどんな変化があるのか?」


 ミロルとヴェルの説明にトキアスはより詳細な質問をする。


「職人が言うには、常に空腹状態で禁制治療布を使うと満たされるそうです

 また研究施設によると、何も食べずに放っておけば幻覚症状が再発するそうです」

「そこで私がそれぞれの家族に食事の管理と、空腹を誤魔化すために魔獣の干し肉を配布した……解決方法が見つかるまで、誤魔化している状態だ」

「……そうか、残念だが今はそれしかなさそうだな」


 トキアスの言葉の後、次の話に移り、明日の設立に向けて順調に話が進んだ」



「んーっ、こうも動かないのもキツイわねー」


 最後の打ち合わせが終わり、ギルド連合会館を出た瞬間ミロルが背伸びをする。


「でも色々決まってよかったんじゃない? 明日から治療師ギルド開設だし」

「まあ、遊毒茸と禁制治療布のせいで決めることが増えてしまったから、長引いたのは否めないな」


 続けて羽澄とコルヴァンも良いながら腕や肩を伸ばしている。

 そんな二人にミロルはにんまりと笑う。


「まあでも、帰るには早いからデートして、ご飯食べてきたら?

付き合ってからろくに二人きりになっていないでしょ」


 その言葉に頬を染めながら顔を顰める二人、フォルンも優しい笑顔でその光景を見守っている。


「もう、ママはすぐそういうこと言うんだから。

付き合ったからといって、仕事でもギルド関係でも一緒にいるんだから気を遣わないで」

「それに羽澄と恋人という事実だけで、日常が幸せに変わったのでデート行かなくても平気です」

「そうだよ、私もコルヴァンといると心が温かくなるんだから、気を遣ってくれなくても大丈夫」

「……あれ、私のろけられている?」

「不意打ちののろけは卑怯よ」


 恋人たちの素直な気持ちは、ミロルとフォルンに地味なダメージを与えていた。


「やっと二人はくっついたのか」


 後から声をかけてきたのは、打ち合わせとは違い穏やかな表情のトキアスだった。

 フォルンは思わず一歩引いてしまう。

 そんな彼女をかばうように前に出て、口を開いたのは羽澄だった。


「トキアス様がおっしゃっていた治療師ギルドが、とうとう設立しますね」

「ああ、構想だけで終わるかと思っていたんだが……聖骨院のおかげだ、ありがとう」


 トキアスは実現できたことに感謝し、羽澄たちに頭を下げる。

 その様子に、フォルンは勇気を出して言葉を発した。


「トキアス様っ、ありがとうございます」

「っ、フォルン……」

「治療師ギルドのおかげで、私のように利用される不幸な人間を守ることができます」

「……ああ、その役目――頼めるか?」

「はいっ、もちろんです」


 まっすぐトキアスを見つめ、彼から貰った杖を握りしめて誓う。


「治療師が平等に、働けるよう努めます」


 その言葉にトキアスは嬉しそうな表情で頷いた。


「期待している……羽澄君」

「――はい」

「フォルンを、よろしく頼む」

「もちろん、フォルンは私たちの大切な仲間ですから」


 羽澄の返事にトキアスは安堵の笑みを浮かべた。



「結局おいて行かれたね」

「まあ、フォルンのお願いごとは、ミロルさんしか答えられないからな」


『トキアス様に、謝罪とお礼の品を贈りたい』


 トキアスがいなくなった後、フォルンの口から自然とこぼれた願い。


『私に任せなさいっ!』


 アクセサリー作家のミロルが、率先してフォルンと馬車に乗り城下町へと消えていった。

 取り残された二人は、少し気恥ずかしい気持ちになりつつ……そっと手を繋いだ。


「しようか、デート」


 いたずらっぽく、でも頬を赤くした羽澄の言葉に、コルヴァンの表情筋は一気に緩む。


「そうしよう……こんなだらしない表情で申し訳ないが」

「ふふっ、大丈夫……私も同じような顔をしているから」


 お互い笑顔のまま、どこに行こうか話し合いながら歩き始めた。



「うーっ、緊張する―」

「俺はすごく楽しみだ」

「……もっと緊張するから、期待しないで」


 羽澄には珍しく情けない声で弱音を吐いている。

 楽しそうなコルヴァンは両手いっぱいに食材を抱えている。


「期待というよりは、羽澄の手料理が楽しみでしょうがない」


 デートに行った先は食材が売っている夜市。

 朝市で残った食材を調理して、夜市で売る……あまり料理をしないコルヴァンは、よく愛用していた。

 羽澄とデートとなり、屋台も複数でるため誘ってみると。


『食材は売っていないの?』

『いや、食材も安くで売っている……朝の取れたてをレストランや弁当屋が購入し、残った分を夜庶民が購入するのが普通だ』

『それなら、よければ――本当にコルヴァンがよければ……私が作ろうか?』


 遠慮がちにされた提案に、コルヴァンは目を輝かせて頷いた。

 こうして買い物からコルヴァンに手料理を振る舞うまでの、デートプランが決まっていた。


「こっちの世界で料理するのは初めてだから……おいしくなかったらごめんね?」

「大丈夫、羽澄の手料理を食べられることが嬉しいことだから」


 相当嬉しかったようで、手料理の提案をされてからのコルヴァンは行動が早かった。

 食材は二人ではとても食べきれない量を買い、調味料と料理道具も一式購入。

 そして包丁は切れ味が良く、誤って手を切らないよう魔力を施した包丁を即決で購入。

 決して軽くない荷物を、コルヴァン一人で抱えて帰路についている。


「やっぱり少し荷物を持とうか? 食材も買いすぎちゃったし」

「いや、大丈夫だ……元聖拳士としてのプライドがある」

「荷物持ちにプライドって関係ある?」


 二人で笑いながらたわいもないやりとりをしていると、あっという間に教会へ着いた。


「……」

「? 羽澄、どうした?」


 すると突然黙り込んだ羽澄、コルヴァンは不思議そうに覗き込めば、何ともいえない表情になっている。


「こっちの世界で料理作って帰るって言ったら、ママも食べたいって」

「血統共鳴か」

「うん、それでフォルンは宿舎に帰るんだけど、ママがパパも連れてくるって聞かなくて」

「……」

「コルヴァン、大丈夫かな?」

「ちなみに翔さんは俺たちのこと……」

「ママがパパに言わないわけないよね」

「……だよなあ」


 翔とは、カルロ事件の時に手助けをして貰、顔馴染みではあるものの付き合ってから会うのは初めてだった。


(これって、顔合わせってやつ?)


 なんて羽澄が思えば、同じことを考えていたのかコルヴァンの表情が引き攣っている。


「い、いいんじゃないか? 食材も、多めに買った、ことだし」

「ちょっと声が震えているけど、大丈夫?」

「お、おん、大丈夫っ」

「ほんとかな」


 不安そうな羽澄に、コルヴァンは真剣な表情で言った。


「それに、真剣にお付き合いしていると、安心させたいし」

「……嬉しい」

「まあでも、緊張するけど」


 こうしてデートから、彼女の家族に食事をするという重大イベントに変更されたのだった。



 そして始まった羽澄の料理、助手としてコルヴァンが手伝ったものの。


「すごく手際がいいな、手先が器用だとは思っていたが、見事なものだ」


 異世界で初めての料理だったものの、羽澄は調味料の味を自分で確かめたり、コルヴァンに聞きながら次々と料理を作っていく。

「そんなに褒められると、照れるよ」


 顔を真っ赤にする羽澄を愛おしむように見つめるコルヴァンは、気付いたように声を上げた。


「……なるほど、確かに」

「え、何が?」

「ミロルさんが言っていた、二人きりになる時間……確かに必要だなって」

「……言われてみれば、そうね」


 心が通じ合い、そばに居られるだけで幸せだと思っていた二人だが、この甘い空気感もたまらなく幸せを感じる。


「さっ、料理の完成ももう少し……コルヴァンが不器用なのはわかったから、お皿並べてくれる?」

「……すまない、役立たずで」


 チラリと見た無惨な切り口の野菜たち、申し訳なさそうなコルヴァンを可愛く思いつつ、羽澄は料理の仕上げに取り掛かるのだった。



――パンッ


「翔さん、連れてきたわよー」


 突然キッチンのドアを開けるミロル、そこにはお玉を持って驚いている羽澄と、危うくお皿を落としそうになるコルヴァンの姿があった。


「わっ……びっくりしたー、もう、ノックしてよっ。

 お鍋をこぼしちゃったらどうするの」

「本当にびっくりさせないでくれ、俺もお皿を落とすところだった」


 料理の準備を中断され、不満そうにしている二人に、驚かしたミロルも不満そうな表情になる。


「もっと、色気ある驚き方をして欲しかった」

「は?」

「ミロルさん、意味がわからない」

「……二人に期待するだけ無駄かしら」


 ミロルは二人がイチャイチャしているだろうと踏んでキッチンに入ったのだが。


「もうちょっと、スキンシップした方がいいと思うわ」

「……ママ、ふざけすぎると、ご飯食べさせないよ」


 怒っている羽澄へ肩をすくめながら、ミロルは翔が待っている食堂へと逃げていった。


登場人物

第三王子:ヴァルディア・ストリ

職人ギルドマスター:ヴェル

大富豪:ハルビア・トキアス

羽澄の父親:鷹野 翔

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。