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巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で聖骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第三章 ギルド開設編 〜治療の光と、つきまとう影〜

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第八十五話 戦争の影と、禁断の生成所

 バッセルとヒルンダが書庫から出ていき、アルバス、聖骨院の四人、そしてトキアスが残った。


「これから情報共有をし、今後の対策を考えたいと思う。

 協力してくれるか?」

「もちろんです、アルバス様」


 コルヴァンの返答に羽澄たちも頷く、トキアスも深く頷き口を開いた。


「私も商人の仕事をしている中で、色々と気になる話を聞いております……どうか協力させてください」

「ありがとう……では早速だが、その気になる話を聞かせてくれるか」

「はい」


 返事に続けて、トキアスは聞いた話を報告する。


「先ほど話に出た、ギブスを名乗る商人のことですが……複数の国で兵士増強剤の売り込みをしていると聞きました」


 トキアスはリューゲル国だけでなく、他の国でも名の知られている敏腕な商人だ。

 情報は自然と集まってくる。


「そしてあくまでも噂ですが……とある国が増強剤に興味を示しているそうで……」

「なんと……そこはどこだ?」


 アルバスの質問にトキアスは少し眉を顰め、そしてゆっくりと口を開いた。


「――武力国家、モズ国です」

「っ、よりにもよって……」


 名前を聞いた瞬間、アルバスは頭を抱えた。


「確か魔法より武術が栄えていて、国外へ傭兵や助っ人として人材を派遣している国でしたよね?」


 コルヴァンが聞くと、アルバスはゆっくりと頷いた。


「そうだ、兵士の派遣で財政を確保している……ただ、それは制限があるからだ」

「制限?」

「もともと武力で周辺の村を取り込み、領土を広げた国だ。

モズ国は荒野が広がり鉱山が無く、武器や鎧を作るための鉱石がない」

「それが制限……ですか」

「そうだ……武器や鎧の代わりに増強剤で恐怖も痛みも感じない、強い兵士を抱えられるとなれば……元の武力を振りかざす国になるだろう」

「……つまり戦争を起こす国になる、と言うことですな」


 コルヴァンとアルバスの会話を、トキアスが一番恐ろしいことを呟いた。

 それは平和なこの世界を揺るがす、最悪の可能性。


「その通り……そして一番に狙われるのは、地下労働場も復旧し鉱石が潤沢にある我が国だろう」

「っ……しかも、増強剤の原料である遊毒茸の生息地がわが国の領土内にあれば」

「どんな犠牲を払っても、手に入れたいと思うだろうな」


 アルバスとコルヴァンの言葉に、書庫はシン――と静まり返った。


(そんな……戦争、なんて)


 羽澄は突然現れた脅威に、立ち尽くすしかなかった。


「しかし、コンカ家もモズ国がリューゲル国に戦争を仕掛けるかもしれないと、想像できるのでは?」


 コルヴァンの言葉に、首を振ったのはトキアスだった。


「いや、コンカ家はそこまで考えていないだろうと、私は思う。

 私をやたらライバル視しているからな、おいしい話があれば飛びつく男だ……あいつは」


 苦々しい表情のトキアスに、コンカ家に迷惑を被っている様子が想像できる。


「俺はこの話を父上に報告する……ミロルさんはファルケ国に増強剤についての報告と、遊毒茸についての進捗を確認して貰えるか」

「お任せください」

「ストリは治療師ギルド開設と並行に、ギブスの動向に目を光らせてくれ。

 コンカ家の調査自体は……バッセルが独自にやるだろう」

「わかりました、お兄様」

「トキアス殿は商人のついででもいいので、増強剤の売り込みについて引き続き情報収集を頼む」

「承知しました」

「羽澄先生とコルヴァン、フォルンは自分の仕事を全うしてくれ……先生に関しては、過去視魔法の依頼をするかもしれないが」

「大丈夫です、その場合はいつでも聖骨院に来てください」


 そう優しく微笑む羽澄に、アルバスはいつものようにチャチャを入れようとしたが……。


 羽澄とコルヴァンの距離の近さに、口を噤むアルバスだった。



 それから各自慌ただしく過ごした数日後のある日、聖骨院の事務所にてフォルンが不思議そうに報告をしていた。


「これは報告なんだけど、鎮痛布の売れ行きが悪くなったの」

「鎮痛布だけ? フォルンが気になるってことは、たまたまっていうわけじゃなさそう?」


 商品によって売り上げに差が出ることはよくあることだが、羽澄の問いかけにフォルンは真剣な顔で頷く。


「そうなの、石工職人たちが一斉に購入しなくなったの」

「一斉に?」

「そう、それで職人ギルドマスターのヴェルさんに相談したら、調査してくれることになったわ」

「石工か……」


 コルヴァンが呟き、聖骨院の患者台帳を確認する。


「……確かに、ここ数週間石工職人が治療に来ていないな」

「石工職人は慢性的な筋肉疲労や骨のズレがあるから、定期的な治療が必要なはずなのに……」

「ここはヴェルさんの調査を待ちましょう」


 ミロルの言葉に頷き、その日は通常通り営業を始めた。



――パァー


 その頃、城ではアルバスがとある男に生命共振魔法をかけ、状態異常を解いていた。


「どうだアクロ、何か思い出したか」

「……は、い……俺は、なんてことを」


 前冒険者ギルドマスターのアクロ、彼は今でも償いとして処罰を献身的にこなしていた。そして遊毒茸の生息地を発見したのも彼だった。


「重ね重ね、アルバス様にはご迷惑を……」

「謝罪の言葉は、思い出した内容を聞いたあとに受けよう……いったい何があった」

「はっ、ご報告します」


 アルバスの言葉に顔を真っ青にしていたアクロは、姿勢を正し思い出した記憶をアルバスに報告した。


「薬草クエスト中に遊毒茸の生息地を発見、ここまでは記憶があり報告も致しました」

「なるほど、続けろ」

「はい、後日その生息地を確認したところ……コンカ家の別荘がありました」

「別荘?」

「実際は製薬所……コンカ家は遊毒茸の栽培をし、違法薬物を作成していたのです」


初登場の国

モズ国 武力国家


登場人物

第二王子:ヴァルディア・アルバス

第三王子:ヴァルディア・ストリ

大富豪:ハルビア・トキアス

前冒険者ギルドマスター:アクロ

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