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巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で聖骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第三章 ギルド開設編 〜治療の光と、つきまとう影〜

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第八十二話 ギルドに集う、疑惑と使命

「今日は名目上、治療師ギルド開設にあたり、各ギルドメンバーとの顔合わせを行う。

 バッセルにギブスを連れてくるよう伝えてある、そこで羽澄先生には見た映像との照合をお願いしたい」

「はい、わかりました」


 次の定休日、ギルド連合会館の会議室にてアルバスから指示を受けていた。

 今日はフォルンも加わり、四人で席に着いた。

 治療師ギルドマスターとして、ストリもアルバスから事情を聞いていた。


「僕もできる限りの調査はします」

「ありがとうストリ、ただでさえギルドマスターという使命があるのに……お前には負担をかける」

「いいんですお兄様、それに……国としても見過ごせないお話しですから」


 そんな話をしていると、部屋が開く音がした。


「私は場違いだろう」

「そんなこと無いよ、冒険者ギルド幹部として……アルバス様からもご指名があったわけだし」

「……同席はするが、ギルドに関しては全てギルドマスター様が話せよ」

「はいはい」


 バッセルに連れられて、部屋に入るギブス。

 アルバスの指示したとおり、バッセルはいつも通りに彼に接していた。

 そしてギブスは真っ先にアルバスとストリへ挨拶しに来る。


「アルバス様、本日はわざわざギルド会館まで来ていただきありがとうございます」

「我が弟の晴れ舞台だ……それを抜きにしても立会人として、しかと役目を果たそう」

「ストリ様も、今後ギルドにて会う機会も増えるでしょう……何かあれば遠慮なしにお申し付けください」

「お気遣いありがとうございます、至らない点があるかと思いますが、ギルドの先輩として、ご意見をいただければと思います」


 丁寧なやりとりにさすが貴族としての振る舞いを感じる、しかし近くにいた羽澄たちには会釈だけで終わる。

 とはいえ王族でも貴族でもない、ましてや発起人兼幹部としてこの場にいるだけだ。

 羽澄たちにしても挨拶は不要ではある。


(だけど、もうちょっと観察するためにも、話しかけてくれた方がいいんだけど)


 そんな羽澄の気持ちをくみ取ったのか、隣にいたコルヴァンが口を開いた。


「ギブス殿、顔を合わせるのは久しぶりだな」

「確かに……お互い忙しい身だからな。

コルヴァン殿は神父兼治療師か……かなり評判がいいようだな」

「ああ、良い仲間に恵まれたおかげだ。

 特に羽澄の治療技術は素晴らしいんだ」

「ほう、元聖拳士お墨付きの治療師か」

「まあな、平民も平等な治療のために、共に尽力している」


 誇らしげに微笑むコルヴァンに、羽澄は思わず顔を赤くしてしまう。

 そんな自分が恥ずかしく、思わず俯けば頭の中に声が聞こえた。


[コルヴァンに褒められて嬉しいなー、じゃないのよ。

 ちゃんと映像とギブス様を確認しなさい!]


 ミロルがわざわざ血統共鳴でツッコミを入れてくる。

 魔法の無駄遣いな気もしたが、言っていることは正しい。


 気を取り直して顔を上げてにこりと笑った。


「初めまして、鷹野羽澄といいます。

 体のことでお困りでしたら、是非我が聖骨院にいらしてください」

「ああ、丁寧な挨拶ありがとう。

 私はコンカ・ギブス、冒険者ギルドの幹部だ。

 何かあれば、そちらに訪問するとしよう」


 そう言って先ほどより丁寧に頭を下げるギブス、羽澄は少し驚きながらも挨拶は終わった。


[思ったよりちゃんと挨拶してくれたね]

[そうねー、てっきり『平民に治療? はっ、無駄無駄』とか言うのかと思ったわ]

[ママったら、どんなイメージもっていたの]


 頭の中でミロルに呆れていると、様子を見ていたフォルンが声をかける。


「羽澄ちゃん、コルヴァンに褒められて照れている場合じゃないでしょ」

「もうフォルン、それは言わないで……」

「そんなに嬉しそうにしていたのか……顔見たかったな」

「もう、コルヴァンったら」

「……一応、場所をわきまえてくれるか」


 アルバスから冷たい視線が刺さり、いたたまれなくなる羽澄とコルヴァン。


「失礼いたしました、気をつけます」

「ごめんなさい」


 申し訳なさそうな二人に、なんとも言えない気持ちになりつつ、アルバスは羽澄に質問をする。


「それで、ギブスはどうだった?」


 それだけの質問に、羽澄は声を潜めて答えた。


「映像の方とそっくりでした」



 治療師ギルドの顔合わせは、他ギルドマスターと幹部への挨拶、そして開設に至る経緯を説明する。


「……というわけでして、治療師の値段統一、聖癒布や薬草に関する違法行為の取り締まり、加えて平民への保証を中心に経営していこうと考えています」


 ストリは説明を終え席に座る、ロウフが進行役として口を開く。


「発起人兼幹部に聖骨院の四名が参加します、予定としては受付と聖癒布の販売担当をフォルンさんにしてもらう予定です」

「よろしくお願いします」


 事前に聞いていたフォルンが挨拶をする、ふと治療師ギルド提案者として参加していたトキアスと目が合った。


(トキアス、様……)


 フォルンは一瞬絡み合う目線に鼓動を早くさせながらも、冷静を装い席に座る。


「一通り挨拶も終わりましたので、治療師ギルドの提案者、トキアス様は何かありますか?」


 呼ばれたトキアスは表情を変えず立ち上がり、部屋の中を見渡しながら口を開く。


「私は前から治療師の待遇について疑問を持っていた。

 金額を釣り上げる者、治療師を利用して自分だけ利益を得る者、逆に自分の身を削って無料で治療する者」


 コルヴァンとフォルンは思い当たる節があり、思わず背筋が伸びる。


「料金格差をなくすことを目的とし、治療師ギルドを提案したが……賛同者がいたこと、そして実現することに心からの感謝している。

 もちろん私も治療師ギルドへの協力は惜しまない。

 治療師ギルド発起メンバーの皆さん、どうぞよろしくお願いします」


 深々と頭を下げるトキアスに、部屋中から拍手がわき起こる。

 そしてフォルンは少し涙ぐんでいた。


(私が、奴隷のように扱われていたから……なんて、うぬぼれかな)


 トキアスと出会う前のフォルンは、男に良いように使われていた。


(いや、トキアス様は私に限らず、不幸な治療師を作らないために……考えてくださったんだわ)


 そんなフォルンの視線にトキアスが気づいたのか、再び二人の視線が重なり合う。

 トキアスはフォルンに対して、僅かに微笑んだ。


(……トキアス様)


 フォルンはその笑顔に会釈で返す、トキアスの信念に同意するように。


(必ず、ご期待に応えられるよう……治療師ギルドを成功させます)


 そう誓い、フォルンはまっすぐ前を見た。



「それでは顔合わせはこれで終わりますが……せっかく集まったのですから、何かこの場で報告や、議題の提示などありますか?」

「それでは一つよろしいでしょうか」


 そう言って手を上げたのは――ギブス。


「処分対象の遊毒茸について、ご報告があります」


登場人物

大富豪:ハルビア・トキアス

第三王子:ヴァルディア・ストリ

女宰相:ホウヅキ・ヒルンダ

新冒険者ギルドマスター:アルセイ・バッセル

貴族でギルド幹部:コンカ・ギブス

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