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巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で聖骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第三章 ギルド開設編 〜治療の光と、つきまとう影〜

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第七十九話 疑いのギルド幹部

【遊毒茸】


 そのまま、もしくは火を通して食すと腹を下す。

 しかし、乾燥し水分が抜けると内部に含まれる幻覚作用が強まる性質を持つ。

 特定の酒に浸し、鎮痛作用のある薬草を混ぜると、依存性のある違法薬物を作成することが可能。

 外敵要因があれば、無色の胞子を飛ばし子孫を残そうとする。



「幻覚作用は浄化魔法で消せますが、依存性は取り除くことができません」


 エルシア王妹の説明に、メモをしていたミロルが手を止め身震いをしてしまう。


(まさしく麻薬そのもの……こんなのが流行でもしたらっ)


 ミロルの思いと同じようにアルバスも恐ろしく思いながら、ケツァル国王に問いかける。


「こんなものが出回っている……と?」

「いや、売り込みがあっただけだ……遊毒茸を使った、兵士増強剤を購入しないか? と」

「兵士増強剤? 違法薬物ではなく?」

「まあ、ほぼ同じでしょう……言い方を変えて別物と思わせているだけです」


 暗いトーンでエルシア王妹は説明を再開する。


「幻覚作用は痛覚にも効果があり、意図的な極限状態を作り出すこともできる。

 その上、薬欲しさに売人の言うことならなんでも聞くようになります」

「……つまり洗脳に近い状態が作れる、というわけか」

「そうですね、似た状態になるでしょう……自我を失う可能性がある分、薬のほうが厄介でしょう。

 そんな薬を使用し、痛みを感じず特攻してくる兵士がいたら……」

「かなり厄介だな」


 アルバスの額には汗がにじんでいる。


――洗脳。


 かつて兄だった男が悪用し、自分もかかってしまった魔法。


(またあの悪夢が、薬によって作りだされるのか……)


 それよりももっと酷い、自我を失う可能性まであるという。


「わが国では怪しい商人の依頼は断り、取り締まりを強化したが……他の国にも声をかけているとしたら――」


 ケツァル国王の言葉に、その場は凍り付くように静かになった。



 その頃、ギルド連合会館ではバッセルがデスクで頭を抱えていた。


「ギブスー、受付で待たせている冒険者の対応を……」

「自分でやれ、ギルドマスター様」


――パタン


 目を通す必要がある書類の山に、途方に暮れるバッセル。

 厭味ったらしい言い方で、部屋を出ていくのはサブマスターとなったギブスだ。


(やっぱり、不機嫌だよなー)


 どちらがギルドマスターになるか、真っ先に名乗りを上げたのはギブスだった。


(やっぱりギブスがギルドマスターでもよかったと思うんだよな……確かに事務作業や知識量は僕のほうが得意だけど)


 ヒルンダの言う通り、貴族としてのプライドが高く人を選ぶ部分はあるが、その場に適応する能力は長けていた。


(実家がもともと商人から貴族になった家系だから、そういうノウハウを叩き込まれているんだよなー)


『俺がギルドマスターになれば、父上も認めてくれる……』


 そう呟くギブスの表情を思い出す。


「やっぱり、ギブスがギルドマスターになったほうが……」


 その言葉は同情からくる発言も含まれているため、ギブス本人が聞いたら怒るだろう。


(ダメだ、今やるべきことに集中しないと)


 そう思いながら書類を机に置き、受付へと足を運ぶバッセルだった。



「ギブスは監視対象にする、羽澄先生が見た映像のことは他言しないように。

 もちろんヒルンダ本人とバッセルにもだ」


 話し合いを終え、ミロルの魔法でリューゲル国に帰る三人。

 道中、アルバスの指示に二人は頷いた。


「もちろんしゃべりません、しかしギブス殿が遊毒茸を……」


 コルヴァンはギブスとは顔見知りなため、とても信じられなかった。


「俺はバッセルが、ギブス殿をギルドマスターに推している理由が少しわかります。

 ギブスが前に出てバッセルが裏方となれば、冒険者ギルドはかなり安定すると思います」

「だがそれはバッセルがあってこそのギブス……という形になるだろう」

「おっしゃるとおりです……そしてバッセルがギルドマスターになった今、ギブスは手助けなどしないでしょう」

「……それ、バッセル様がかわいそうなだけだと思いますが……」

「考え方の違いですね」


 ミロルの不満そうな声に、コルヴァンは言葉を続ける。


「バッセルは二人でギルドを支える考え、ギブス殿は一人前のマスターは苦手な仕事もこなさなければならないという考え」

「実際ギブスがマスターになれば、自らバッセルに助けを求めようとはしないだろうな」

「その代わりバッセルは勝手に事務作業してそう」


 ギブスはあまりよく知らないが、バッセルは会議の時の印象から、コルヴァンが言うとおりお節介そうだった。


「……なるほど、ギブス殿はただプライドが高いというわけではないんですね」

「責任感はバッセルより持っているだろう……だから遊毒茸の横流しなど、しそうにないんですが」

「俺もケツァル国王の話に不可解な点があった。

 しかしこれは全て予想だ……一つやってみたいことがある。

 確かヒルンダの経過観察があるんだよな?」

「はい、明後日……次の定休日ですね」

「うまくいけば、記憶を思い出させることができるかもしれない」


 こうして明後日、ヒルンダと共にアルバスも聖骨院に訪問することに決まった。

初登場

貴族でギルド幹部:コンカ・ギブス


登場人物

ファルケ国王:セレーヌ・ケツァル

ファルケ国王妹:セレーヌ・エルシア

宝晶生成術兼鍛冶屋 大将:アルケミ・ヴォルクス

新冒険者ギルドマスター:アルセイ・バッセル



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