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巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で聖骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第三章 ギルド開設編 〜治療の光と、つきまとう影〜

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第七十四話 ギルドの新星、聖癒布に忍び寄る影

 今日は土の日の国務会議、国務に関わる各組織の代表者が集まる場だ。

 羽澄とミロルはドレスを着て、コルヴァンは法衣を着ている。

 三人ともミロルが以前作ったお手製のブローチを着けて、会議室の椅子に並んで座っていた。


「ほら、ドレスを用意しておいてよかったでしょ」

「確かに……悔しいけど」

「ああ、ミロルさんに得意げに言われると、より悔しく思える」

「あら、失礼ね」


 まだ人が少ないうちは、いつものかけ合いをしていた。

 しかし人が集まってくると、羽澄の緊張が高まっていく。


(見たことない人もいるし……緊張するなって言う方が無理だよ)


 そう思いながら羽澄は会議室を見渡すと、いつのまにかガルーダ国王以外は皆席に着いているようだった。

 最上座にガルーダ国王の席があり、次にアルバスと第三王子のストリが向かい合うように座っている。

 それぞれ王子の隣に男女の家臣が座り、その隣に現在のギルドマスターであるロウフとヴェルが座っている。

 そして商人ギルドのロウフの隣に、初めて見る男性。


(アクロさんほどではないけど、しっかりしている体格……あの人が新しい人かな?)


 アクロよりも親しみやすさがある男性は、穏やかそうで少し緊張したような表情をしていた。

 その男性と向かい合うように――つまり、ミロルの隣に神選会の教祖、レンカクが座っていた。


「羽澄君はわかるが、ミロルさんも緊張しておるようじゃな」


 ミロルがレンカクに話しかけられ、羽澄も彼女を見ると、確かに居心地悪そうに座っている。


「確かに、ママが緊張するなんて意外です」

「私はこのような場に縁がなかったので、緊張しないわけがありませんよ」


 いくら元王族といえど、幼く出来損ない呼ばわりされていたミロルが、公的な場に呼ばれるのは考えにくい。

 小さな声で反論するミロルに、羽澄もレンカクもなるほどと納得する。

 しばらくして国王が部屋に入り、椅子の横に立ってから宣言した。

 

「皆、私の声によくぞ集まってくれた。

本日の議題について、忌憚なき意見を聞かせて欲しい」


 ガルーダ国王の一声に、会議室の空気が引き締まる。

 国王が着席したのを確認して、アルバスの隣にいた家臣が席を立った。


「本日、わたくしが進行役を務めさせていただきます」


 その女性は長めの黒髪を一つに束ね、黒縁の眼鏡をクイッと押し上げる。

 そして厳しそうな視線で部屋全体を見渡し、羽澄とミロルをゆっくりと見てからまた、口を開いた。


「宰相のホウヅキ・ヒルンダと申します。

 初めてお目にかかる方もいらっしゃいますので、改めてご挨拶申し上げます。

 以後お見知りおきを」


 言われて羽澄とミロルは会釈する。


(わざわざ私たちのために、自己紹介してくれたんだ)


 見かけによらない優しさに、羽澄とミロルは少しだけ緊張がほぐれたような気がした。


「それでは一つ目の議題ですが、現在不在である冒険者ギルドマスターについて」


 ヒルンダは淡々と、カルロ元第一王子が、王位継承者になるため、崩落事故を起こした事件を説明する。


「――ですので、洗脳されていたものの、証拠を捏造に加担していた責任として、アクロにギルドマスター及び幹部資格剥奪含む処罰を下しました。

 では、冒険者ギルドマスターが不在時の対応と、後任者の任命を、ロウフ殿からお願いします」


 ヒルンダは説明が終わると席に着き、代わりにロウフが立ち上がる。

 そのヒルンダの向かいにいる家臣は書記係らしく、発言を全て記録していた。


「それでは現在の対応とこれからについてご説明します。

 現在ギルドマスター代理として、事務・経理担当のバッセル殿と、現場担当のギブス殿で対応しておりました。

 この度、このバッセル殿を正式なギルドマスターとして任命します」


 ロウフの紹介に隣で座っていたバッセルが立ち上がり、自己紹介をする。


「ロウフ殿よりご紹介にあずかりました、アルセイ・バッセルと申します。

 まさかギブスではなく僕がギルドマスターに推薦されるとは、いまだ信じられませんが……選んでいただけたからには、職務を全うします」

「バッセル殿は元騎士として、腕も確かであり冒険の知識も豊富です。

 何よりギルド内部からも賛同の声が多かったので、ヴェル嬢とも話し合い決定いたしました。

 これからも各ギルドを、どうぞよろしくお願いします」


 ヴェルも立ち上がり、三人で深々と頭を下げる。

 バッセルの緊張感が伝わってくるようだった。


「それではこの決定に、意見がある方いらっしゃいますでしょうか」

「……では、一つ聞きたい」


 ヒルンダの言葉に、少し間を置いてから国王が発言をする。


「以前アクロから、バッセルの仕事ぶりは聞いている。

 時にギブスが選ばれると思った理由は、何かあるのか?」

「はっ、僕は人と話すのが苦手です。

 見ての通り、アクロ殿のように威圧感もありません。

 逆にギブスの生まれは貴族なので、家柄も申し分ないでしょう」

「くだらない」


 ボソリと響いた呟き、それはヒルンダの口から発せられたものだ。


「ヒルンダ宰相が物申したいようだな」

「失礼しました」


 表情は一切変わらず口をつぐむヒルンダだが、ガルーダ国王は楽しそうにしている。


「いや、大丈夫だ。

 ぜひヒルンダ宰相の意見を聞きたい」

「恐れ入ります、それでは少しだけ」


 と、一言断ってから喋り出した言葉は決して少しだけではなかった。


「まず、人と話すのが苦手と言いましたが、苦手なのではなく威圧感がないだけです。

 ギブスは目上との話し方が上手いだけで、一般的な冒険者の対応は、全てバッセルに任せっきり。

 それにアクロ殿の威圧感は少しやりすぎでした、初心者の対応はバッセルを間に挟まないと泣き出す子もいました。

 あとは事務や経理に関わっている分、アクロ殿と並ぶほどには知識が豊富です。

 バッセルは冒険者ギルドには城から派遣された身ですが、冒険者を知るために初心者パーティーに一ヶ月間参加。

 その一ヶ月間で初心者パーティーを達人まで押し上げたんです。

 その行動力、気遣い、努力、知識がバッセルにはあります。

 逆に貴族という家柄しか利点がない男はマスターに相応しくありません」


 怒濤の情報量に、羽澄とミロルは目を丸くする。

 コルヴァンは笑うのを必死にこらえるように肩をふるわせていた。


「うむ、見事な解説だったな……まあ、最後の言葉は聞かなかったことにするが」

「重ね重ね、失礼いたしました」

「褒めてくれてありがとうございます、ヒルンダ宰相」

「褒めたわけではありません、事実です」


 表情を変えず赤くすることもないヒルンダと、対照的に嬉しそうに微笑むバッセル。

 そんな二人に戸惑っているのは羽澄とミロルだけで、コルヴァンも含めみんな温かい目で二人を見つめている。


「あの二人は俺やストリ様と同じ、この城の離れで暮らしていた幼なじみだ」

「そうなんだ」


(幼なじみ……いたんだ)


 この数ヶ月共に仕事をしてきたが、アルバスの交流関係は騎士仲間と王族くらいしか知らない。


(まあ……知らなくて当然と言えば当然、私のことだって、コルヴァンあんまり知らないだろうし)


 そう思うものの、羽澄の中で小さなもやもやが、生まれていた。


「では、新ギルドマスターにバッセルを任命する」


――パチパチパチ


(いけない、会議に集中しなきゃ)


 羽澄はガルーダ国王の宣言で我に返り、その場の雰囲気に合わせて拍手をする。


「それでは次の議題ですが、今回お呼びした聖骨院が制作、ギルドにて販売されている聖癒布についてです」


 突然呼ばれて羽澄とミロルは姿勢を正す、その様子をコルヴァンは優しく微笑んでみていた。


「こちらもロウフから説明と、提案があるそうです」


 先の議題と同じようにロウフが立ち上がり説明を始めた。


「聖骨院にて開発された聖癒布ですが、好評につき国外でも販売されることが決まりました。

 ですが、その前に対応しなければならない問題も発生しております」

「問題……それはなんだ?」

「以前から恐れていたことですが……聖癒布の偽物が、町に出回っております」

初登場


コルヴァンの幼馴染

女宰相:ホウヅキ・ヒルンダ

新冒険者ギルドマスター:アルセイ・バッセル


冒険者ギルド幹部:コンカ・ギブス(名前のみ)


登場人物


国王:ヴァルディ・ガルーダ

第二王子:ヴァルディア・アルバス

第三王子:ヴァルディア・ストリ

神選会の教祖:チャルボ・レンカク

商人ギルドマスター:ロウフ

職人ギルドマスター:ヴェル

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