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巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で聖骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第三章 ギルド開設編 〜治療の光と、つきまとう影〜

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第七十三話 全てを受け入れ、聖骨院は彼女の居場所になる

 次の日の聖骨院にて、羽澄は貰ったヘアピンを付けていた。

 コルヴァンと向き合うと、二人とも照れたようにもじもじし始める。


「ああ、付けてくれたんだ」

「うん……プレゼント、ありがとう」


 羽澄と一緒に来たミロルは、まだ付き合っていない二人に呆れたように笑う。


「はいはい、そんなところでもじもじしていないで、さっさと仕事始めるよ」


 聖癒布制作のために教会にいたフォルンは、そんな三人の日常を微笑ましく見守っていた。



 この日はヴォルクスの定期診断の日。

 仕事柄ハンマーを振り下ろし、片腕を酷使するヴォルクスにとって、この定期検診はなくてはならないものだ。


「その髪飾り、似合っているな」

「ふふっ、ありがとうございます」

「コルヴァンが、真剣な顔で削っていたからな……羽澄君も喜んでいるようで良かった」


 宝石の購入と加工をヴォルクスに店でしていたため、コルヴァンが悩みながら作成していた姿を見ていた。


「そうだったんですね……あの、私も何かお返ししたいのですが、相談乗っていただけますか?」

「ほう、いいね。

 それならミロルさんに聞いてみたらどうだ?」

「ママは冷やかしそうなので……嫌です」

「……確かにな」


 簡単に想像できるミロルの様子に、ヴォルクスは深く頷き、羽澄の相談に乗ることにした。



 その日の午後、城の紋章が入った馬車が止まる。

 降りてきたのはロガモとシコウに護衛されたアルバス。


「アルバス様、いらっしゃいませ。

 またサボりですか」

「またサボりとは、二言目にそう言われるなんて……俺はとても傷ついた。

 羽澄の胸で慰めてくれないと、立ち直れない」

「そう言うところですよ、アルバス様」

「普段の行いの結果だと、思います」


 羽澄に軽くいなされただけでなく、ロガモとシコウに突っ込まれる始末。

 納得いかないアルバスだったが、本題に入る前に口を開いた。


「羽澄、その髪飾り作ったのか?

 少し宝石に粗があるが、初めてにしてはよくできているし、とても似合っている」


 一目見ただけで手作りと言い当て、さらりと褒める。

 しかし作り手だけは言い当てられず、羽澄は嬉しそうに微笑みながら。


「これは私が作ったわけではないんです」


 と、デレっとした顔になった。


(ああ……コルヴァンから貰ったのか)


 そう気づくと、アルバス自身その話題から冷めるのがわかった。


「そんな情けない顔には、似合わん」

「は? そ、そんな顔してませんっ」


 慌てて頬を隠すように顔を覆う羽澄に、意地悪なことをしたと思ったが。


「アルバス様、そろそろ」


 フォローするようなロガモの言葉に、アルバスは仕切り直すように本題に入ることにした。


「えー、来週の土の日に、城でギルド会議が行われることとなった。

 議題はギルドマスターの選定について」


 アルバスの言葉に、羽澄の表情が硬くなる。


「冒険者ギルドのマスター、ですか?」

「そうだ」


 元第一王子カルロに洗脳され、崩落事故の犯人捏造に荷担された、冒険者ギルドマスター・アクロ。

 洗脳されていたとはいえ、その罪は重くギルドマスターの剥奪をされてから、未だ代わりは見つかっていなかった。


「決まったんですね……」

「そうだ、会議で国王の許可が下りれば、任命されることとなっている。

 その会議に、聖骨院の三人も参加して欲しい」

「私たちも、ですか……?」

「ああ、聖癒布の国外販売についても報告があるからな」

「わかりました、コルヴァンとママにも伝えておきます。

 王子自ら、ありがとうございます」


 羽澄の返事にアルバスは、にんまりと笑う。


「うむ、くるしゅうない」

「羽澄先生は気にしなくていいですよ」

「王子が外に出る口実として、申し出ただけですから」

「最近、護衛たちがコルヴァンのように厳しい……」


 部下たちの物言いに、落ち込むふりをしつつ、穏やかな日常に笑った。



「フォルンさん、包装をお願いしてしまってすみません」

「いえいえ、私は荷物を持てないので、このくらいが丁度いいです」


 引っ越しの準備のため、直前まで使うもの以外は梱包し始めている。

 フォルンは崩落事故の大怪我のせいで、いまだに杖をついた生活をしている。


 そんな彼女にとある相談のために羽澄たちは三人で、フォルンが作業しているところにやってきていた。


「ただでさえ居候の身ですから……このくらいはお役に立ちたいので」

「その、居候のことですが……」

「羽澄ちゃん、私から話すわ」


 言いにくそうな羽澄に、ミロルが自ら伝える役を買って出る。

 そんなやりとりにフォルンは察した。


「すみません、あまりにも心地がよくて、ここにお世話になりっぱなしでした。

 移転もしますし、私も家を見つけて……」

「ああ、違うの違うの、その話ではあるけど、家を見つける必要はないのよ」


 慌ててミロルが止めに入る。

明るい口調だったため『家を出て行って欲しい』と言われそうな雰囲気ではなかった。


「新しい聖骨院の近くにある長屋を買い取って、従業員が住める共同宿舎にしようと思っているの」

「それは、とても素晴らしい考えですね」

「そうでしょ? 羽澄ちゃんのアイディアなのよ、本当に自慢の娘っ」

「ママ、それはいいから……」

「あら、ごめんなさい」


 思わず話が娘自慢に脱線しかけたが、本題はここからだった。


「よかったら宿舎に住まない? というか、正式に聖骨院で勤めて欲しいの」

「今は手伝って貰ったら、都度お給料を渡していたけど、もう毎日手伝ってくれているから……それなら正式に勤務して欲しいなと思って」


 ミロルと羽澄の説明に、コルヴァンも大きく頷く。

 だけどフォルンは顔を顰めた。


「私は、とてもありがたいのですが……その、いいんでしょうか」

「洗脳されていた時の事を気にしているなら、フォルンさんは罪を償っている。

――少なくとも私たちはそう思っているの」

「ミロルさん……」


 大富豪でフォルンの元夫、トキアスの殺人未遂をした彼女だが、それは罪人カルロの洗脳のせいだ。

 一緒に過ごした羽澄たちには、フォルンが悪い人ではないことと……別れたとはいえ、トキアスを今でも本気で愛していることはわかっている。


「是非、聖骨院の仲間として、一緒にがんばりましょう?」


 聖骨院の中で一番仲良く、恋バナが出来る友人として、ミロルが手をさしのべる。


「……はい、よろしくお願いします」


 フォルンは目に涙を溜め、ミロルの手を取りながらにこりと笑った。


※フォルンは整骨院の仲間になったため、後書きの登場人物欄には載りません


登場人物


宝晶生成術兼鍛冶屋 大将:アルケミ・ヴォルクス

第二王子:ヴァルディア・アルバス

護衛槍騎士:ホージ・ロガモ(クール、ツッコミ役)

護衛弓兵:チョウ・シコウ(一番後輩)

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