第六十九話 裁きの果てに、残された涙
ちょっと短めです、すみません。
明日は二章の最終話です。
罪人ガシラ、王統破壊者として有罪。
三人の王族殺し――その内一人は他国の元第一王子。
さらに国の乗っ取り……数々の魔法の強奪、ウツイ前国王とダイールを監禁等……。
ガシラはその悪質性から処刑が決まった。
一口に処刑といってもいくつかの準備をしなければならない。
念のためガシラが集めた魔法は全て消去、王統魔法を使用し王族からの排除――当然、エルシア王妹とも離婚となる。
「ローラ、この仕事を、お願いできるか」
「もちろんです、お任せください」
ミロルは魔法鑑定士として、ケツァル国王に魔法の削除を命じられ、少し緊張し背筋を伸ばす。
「まさか……ローラ王女が見つかって、いたとは――ああ、あとちょっとだったのに」
牢屋の中で、ガシラが悔しそうに呟く……しかしその表情は、少し晴れやかだった。
「余計なことは考えるな、黙って血判を差し出せ」
「一刻も早く済ませましょう……不愉快です」
エルシア王妹は自ら署名欄が記された、魔力を帯びた離婚の届けをガシラにひらひらさせる。
ダクラスが殺害された映像はすでに確認済みなため、本来なら同じ空気を吸うことすら嫌悪感がある。
そんな彼女に、国王として……そして兄として、一つの命令をした。
「エルシア、君に内震魔法の保護――王族の力を守る役目をお願いしたい」
「っ、それは……」
「頼めるか?」
「当然です、私以外に誰がダクラスの意思を継げるというのです」
「よかった……ローラ、譲渡を頼む」
「承知いたしました」
「お願いね、ローラ」
この準備が終わればガシラは処刑され、財政の立て直しが始まる。
ケツァル国王はまっすぐと前を向く。
(今度こそ、この国の未来を――正す)
場所は変わりガルーダ国王、専用高速船の中、主であるガルーダ国王はもちろん、ストリとレンカク、そして護衛騎士たちが帰路についている。
そして――カルロもまた、母国へと向かっていた。
「ぐずっ、ぐずっ」
「ストリ……」
「もっ、もうしわけ、ありませっ」
「……いや、今はいい……ここは裁きの場では、ないからな」
一室を凍結魔法で冷やし、麻布に包まれたカルロの、変わり果てた姿。
神選会教祖のレンカクが祈りを捧げる後で、涙が止まらないストリ。
その横で、ガルーダ国王も静かに涙を流す。
「処刑が、決まったとき……」
ストリは鼻をすすりながら、ぽつりぽつりと呟く。
「僕は覚悟を、決めました……ずずっ。
兄上が、やったことは、うぅ、死で、償うほどの、ことだと」
「……そうだな」
「だけど、いまっ、すごく悲しいですっ、覚悟、はー、決めていた、はずなのに」
「当然だ、家族だからな」
「でもっ悲しくて、悔しくて……うぅっ、こんなの、あんまりですっ」
「……私が、慈悲を出したのがいけなかったのか……」
「え?」
「――いや、なんでも……」
「いいじゃろう、国王が弱音を吐いても」
言葉を濁したガルーダ国王に、祈りを捧げていたレンカクが優しく諭す。
その言葉に国王の表情は父親の顔になる。
「罪を償い、平民として生きて欲しい……。
そう思わなければ、カルロはこんな死に方はしなかったのではないか……」
「家族ですから、お父様の願いは当然のことだと思います」
「……そうか」
「そうですよ」
「うぅ、カルロ……せめて我が国で、眠れ」
そしてガルーダ国王はとストリと共に声を上げて泣いた。
そんな二人の傷が癒えることを、レンカクは祈り願った。
登場人物
リューゲル国王:ヴァルディ・ガルーダ
第二王子:ヴァルディア・アルバス
第三王子:ヴァルディア・ストリ
元第一王子:ヴァルディア・カルロ
神選会の教祖:チャルボ・レンカク
ファルケ国王:セレーヌ・ケツァル
王妹:セレーヌ・エルシア
罪人:ガシラ
王妹前配偶者:セレーヌ・ダクラス




