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巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で整骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第二章 聖癒布躍進編 〜消えた王女の行く末〜

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第七十話 帰るべき場所へ

 ガルーダ国王たちが帰路についた頃、アルバスはファルケ国の城内に、聖骨院の三人と共に残っていた。


「治療ありがとうございます」

「治らない病気だと諦めていたので……家臣たちも喜びます」


 羽澄とコルヴァンはガシラにより変形した骨を、羽澄の技術で治す。


 アルバスとミロルは、ケツァル国王とエルシア王妹、そして解放されたダイールと共に、魔法鑑定について話し合っていた。


「この話し合いはガルーダ国王から、俺に一任されています。

 もちろん報告しますが、俺の言葉が国の総意だと思っていただいて構いません」

「わかりました……どうぞよろしくお願いします」


 昨日までミロルに関しての敵対から、協力関係に変わり、アルバスの口調も敬語になる。

 ケツァル国王もこの国を統括するものとして対峙する。


 ダイールは魔法石ではなく、あたたかいベッドの上で、謝るように首を曲げる。

 長年魔法石の上で過ごしており、年齢もあって寝たきりの状態だ。


「ローラ様、申し訳ありません……そして、ありがとうございます――やっと温もりを感じられました」

「いいんです、おかげで素敵な家族と出会えましたから」


 謝罪と感謝を述べるダイールと、優しく微笑むミロルの会話に、部屋の空気は穏やかになる。

 その中にも多少の緊張感が走り、アルバスが口を開く。


「聖権魔法についてですが、本来は一つの国が囲ってはならない魔法です」

「そうですね、魔法を管理できる魔法ですから……」


 頷くケツァル国王の言葉に、ダイールは付け加えるように口を開く。


「それだけではなく、継承を必要とする魔法は聖権魔法で譲渡することはできません。

 後継者を、生涯のうちに見つける必要があります」

「なるほど……本来なら三十年前から、後継者を探すこともできた……ということですよね?」


 アルバスの指摘にダイールは申し訳なさそうな顔になる。


「その通りです、せめて私がローラ様を継ぐ後継者を、見つけることができれば良かったのですが……」

「……アルバス様、意地悪なことを言わないでください」


 ミロルがたしなめるとアルバスはとぼけた顔をするが、言っていることは間違っていない。


「現術者と後継者は出会う周期があり、チャンスは数回巡ります。

 だから探し続けていれば、いつかは魔法鑑定の依頼がくる、という確信が私にはありました」

「しかしミロルさんは聖骨院を営んでいる上に、別世界に家族がいる……後継者を探す旅は現実的ではありませんね」


 アルバスの言葉にミロルも申し訳なさそうに頷く。

 ミロルにとって、それでは意味が無い。


「だからダイール様は、我が国に捕らえられる以前は、旅をされながら魔法鑑定の依頼を受けられていたんですね」

「その通りです」


 深く頷くダイールに、アルバスは少し考え込んだ後、顔を上げる。


「こういうのはどうでしょう。

 まず料金を、金貨五枚から銀貨十枚に戻します。

 そもそも金貨五枚は上げすぎです」

「ごもっともです……ガシラが王族になってから、値上げばかりしていました。

 おかげで他国との関係も悪くなりましたから」


 苦々しくエルシアが口にする。

 値上がりで影響があったのは財政だけでなく、ファルケ国の評判にも影響が出ていた。


「それならファルケ国を仲介役として依頼を受けていただきたい。

 魔法鑑定イコールファルケ国というイメージが定着していますから」

「ほう」

「それならば、全て仲介料としてファルケ国へお渡ししましょう」

「それはならない、今までの恩恵から脱却するため……そしてローラの力なのだから、全てローラが受け取るべきだ」


 その後料金も話し合ったものの、ミロルとケツァル国王の主張は変わらず、話し合いがまとまらない。

 アルバスはあまりにも加熱した話し合いに、思わず間に入る。


「二人とも一旦落ち着いて……まあ配当については、話が進まなくなるので置いておくとして」

「そうですね、お兄様が頭硬いので」

「ローラが頑固なんだ」


 文句を言っているが、お互いを思い合っているのは一目瞭然で、微笑ましく思いつつも、アルバスは話を進める。


「こほん、それで話の続きですが……一旦は安くなったことで、国への評判も多少回復するでしょう。

 依頼が増えるでしょうから、継承者を探しつつ様子を見ましょう」


 細かい決め事はあるものの、一旦話をまとめるアルバスに、ケツァル国王は一つ質問をする。


「とても現実的で、我が国の評判まで考えていただきありがたいのですが、依頼の度にファルケ国へ来るのは大変じゃないでしょうか?」


 ケツァル国王の質問に、待っていましたと言わんばかりに、アルバスは説明する。


「ミロルさんの転移魔法を使えば可能だと思います」

「別世界転移魔法……ですか?」

「はい、実は最近この魔法について調べていたんです」


 女にだらしない一面もあるアルバスだが、ガシラを追い詰めたときや、話し合いの姿は別人のように鋭い。

 そして何より知識と探究心が計り知れない。


「結果から言うと、王統魔法で国王との友好関係を結べば、別世界を経由して、国間の移動ができるはずなんです」


 アルバスの言葉にケツァル国王は、ぴくりと眉を動かす。


「……それが本当なら、この世界の移動概念を覆します」

「その通りです、この世界唯一の瞬間移動かもしれない」


 アルバスの言葉に、全員驚きを隠せない。

 この世界には船や、気球はあり、魔法を使ってスピードを早くすることはできる。

 しかし、瞬間移動に関する魔法はなかった。


「私も知りませんでした……」

「別世界転移魔法の研究資料と、魔法保持者の日記を照らし合わせて、俺なりの結論がこれです」


 ダイールの言葉に返答したアルバスは「研究施設にはまだ伝えていませんが」と付け加えた。


「これは……瞬間移動できたとしても、簡単に公にしないほうがいいかもしれません」

「ローラがまた狙われてしまいます」


 冷静なケツァル国王と、妹を心配するエルシア王妹の言葉に、アルバスはゆっくりと頷いた。


「ひとまず試してみたほうがいいでしょう」



「この扉の向こうがリューゲル国です」

「本当に、繋がりましたね」


 ミロルの言葉に、コルヴァンが驚きながらつぶやく。


 ファルケ国から別世界転移魔法を使うと、通常なら現代へ続く道のみだが、もう一本道が続いていた。

 進んだ先はリューゲル国への扉。


 羽澄はぽかんと扉を見つめ、アルバスは自分の推理が当たって嬉しい反面……。


「これは危険だな、絶対誰にも知られないように全員気をつけてくれ」


 そう警告し、全員真剣な表情で頷く。


――ギ、ギィー


 扉を開けると見慣れた――教会の倉庫にたどり着いた。


「本当に、帰れたんですね」


 ミロルが呟く。ファルケ国の御触れを知ってから、怯えていた日々を思い出すように。

 だけど、無事に教会へ戻ってこられた今――もう、怯えて暮らす必要もない。


 安心感で誰もが言葉を失った、その時――


――キィー


「誰か……え?」

「フォルン、大丈夫か?」


 ドアを開けたのはフォルン、そして心配そうなトキアスの声が聞こえる。


「みっ、みなさんっ……どうして……」


 フォルンは驚きと嬉しさで、目に涙を溜めている。

 そんな中、羽澄が冷静に口を開く。


「……早々にバレてしまいましたね」

「これ、なかったことにならない?」

「なりませんね」


 答えたコルヴァンの言葉に、アルバスはがっくりと項垂れたが。


「フォルンさん、ただいま帰ったわ!」


 ミロルが嬉しそうに返事をすると。


「よかった、よかったーっ」

「フォルン、心配かけてごめんっ」


 と、ミロルとフォルンが嬉しそうに抱き合う。


「フォルンはずっと、教会で皆の無事を祈っていたんだ。

……私も一緒に祈ることしかできなかったが……よかった、本当に」


 トキアスが優しく教えてくれ、アルバスは「まあ……フォルンとトキアス殿は、いいか」と呟き、苦笑する。


――その声色は心から安堵していた。


第一章、完結。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

毎日更新でここまで来れたことがとても嬉しいです。


これからのことですが、第二章執筆のため、準備期間をいただきます。


第二章 聖癒布躍進編 〜消えた王女の行く末〜

(タイトルが変わる可能性もあります)


毎日更新を目指し、今回は8月1日再会は難しいかもしれませんが、そう遠くないうちに再会今しますので、少々お待ちいただけると嬉しいです。



登場人物

ファルケ国王:セレーヌ・ケツァル

王妹:セレーヌ・エルシア

大富豪:ハルビア・トキアス

聖骨院居候:フォルン

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