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巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で整骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第二章 聖癒布躍進編 〜消えた王女の行く末〜

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第五十八話 王が選んだ、偽りの決断

 時は少し遡る。

 羽澄が連れ去られたことを、ミロルが城に報告に行った後。


『助けて……羽澄ちゃんを、助けてっ』


 真っ先に駆けつけたアルバスは、ミロルから状況を聞きつつ、落ち着かせるように一つの事実を伝えた。


『ミロルさん、落ち着いて』

『だってっ、羽澄ちゃんが……どこにいるかもわからないんですっ』

『大丈夫……俺とストリが使える血統共鳴魔法は、どの国でも王族なら誰でも使える。

 ミロルさんも羽澄先生と連絡が取れるはず』

『え?』


 そう言われ、ミロルは最初意味がわからなかった。


『ミロルさんはファルケ国の王族の血を引いている、そして羽澄先生はミロルさんの娘だから……』

『つまり――羽澄ちゃんと、通信できる!?』


 まさかの真実に、早速ミロルは羽澄に語りかける。


[羽澄ちゃん……ママの声聞こえる?]

[ママっ、ママなの!?]

[!! 羽澄ちゃん、羽澄ちゃんっ]


 こうして、ミロルはずっと羽澄と連絡を取り合い、船でファルケ国に入ったことを知り、不安ながらも落ち着きを取り戻せた。

 ガシラがカルロから強制崇拝魔法を奪ったことも、羽澄から全て聞いており、親子の絆の深さを感じさせた。



「アルバス第一王子、この度は我が義弟が貴殿に対し、誠にあってはならぬ無礼を働いた」


ファルケ国城の謁見室にて、セレーヌ・ケツァル国王が頭を下げる。

 ミロルとは目元だけ似ていたが、とても逞しく貫禄のある見た目をしている。


「国を治める者として、まずは私より深くお詫び申し上げる」

「夫がご無礼を働きましたこと、妻である私からも心からお詫び申し上げます」


 セレーヌ・エルシア王妹も、自分の夫の行為に深く頭を下げた。

 エルシア王妹はミロルと姉妹だとわかるくらいには似ていたが、ミロルよりはおしとやかな雰囲気を醸し出している。

 二人に続きガシラも深く頭を下げ、一見すると反省しているように見えた。


「わかっていただきたいのは、ガシラは我が国を思う心が、このような行動に出てしまったのだ……」

「なるほど……気持ちが先走ってしまった、と」

「さよう……どうか、私の顔に免じて許していただけないか」

「国王陛下がそこまでおっしゃるなら……我々もファルケ国とは友好的な関係を築きたいと願っておりますから」


 そう言ったあと、アルバスも二人に対して頭を下げる。


「こちらも罪人をファルケ国で捕らえていただき、お礼のしようもありません。

 責任を持って罪人と、人質に取られた二人を連れて帰ります」

「その件なのですが……」


 ここまで自然な流れだったが、ケツァル国王は渋るように口を出す。


(やっぱり……手がかりを離したくない、か)


 予想できたことではあるが、どうしてもローラを見つけ出したいと言う意思を感じ取れる。


「いくつか伺いたい……あの羽澄という女性は、ローラ王女の娘なのか?」

「……はい、あなた方の考えている通りです」


 アルバスは素直に答えた、ここで嘘をついても残るのはしこりだけだろう。

 ミロルもこの状況を理解しており、取り乱すことはない。


「アルバス王子殿下よ、ローラ王女の居場所……わかっておられるのか」


 国の財政を費やしても探し出したいローラ王女の行方、当然アルバスはこの質問に対しても嘘はつかない。


「ローラ王女は我が国で、王女の身分を捨て、我が国民として過ごしています。

 斯く言う私も、ローラ王女が我が国にいらっしゃることを、最近知りました」

「そう、か……」

「ローラは、幸せに、生活しておりますか?」


 今度はエルシア王妹が心配そうに尋ねる。


「はい……我が国の民として、ローラ王女の幸せは国が保証します」

「そう、幸せなのですね……」


 ホッとしたような表情をしたエルシア王妹は、ケツァル国王と顔を見合わせ頷いた。

 ミロルは二人の質問に、何とも言えない複雑な感情を、顔には出さず胸に抱いていた。


「時にアルバス王子殿下、殿下には心が通じ合う家族はいるだろうか」

「……はい、おります」

「そうですか……」


 その質問にケツァル国王は、チラリとガシラに不自然な視線を向けた。


(? ……何か様子をうかがっている?)


 見られているガシラは気づいていないようで、反省していたように見えた仕草から、一転して大きくふんぞりかえりながら、口を開く


「これは由々しき問題です」

「……何のことだ?」


 意味不明なガシラの言葉に、アルバスは不審な顔で問い返した。

 しかし答えたのはガシラではなく、ケツァル国王だった。


「つまり」


 いつのまにかケツァル国王の視線はアルバスに戻り、一瞬眉を寄せ……話を続けた。


「ローラのことを監視し、人質に取っている、と」

「……は?」


 突然の言いがかりに、アルバス一行全員、顔を顰めた。


「そんなこと、あるわけないでしょう」

「……信じられませんね――ガシラ、彼らを危険人物とみなす、封印魔法を」

「はっ」


 毅然とした中に感じる言葉の揺れ、アルバスは違和感を胸に抱えながら、その封印魔法を受けた。



 呼ばれたガシラは、アルバスご一行全員に魔法を使用できなくなる封印魔法をかけ、周囲の騎士がアルバスたちへ攻撃態勢を取る。


「なっ……これは、どういうことだ?」

「申し訳ないが、通信魔法の使用を禁じる」


 突然のことに驚き、ケツァル国王に聞き返すが、まともに答える様子はない。

 そして謁見室に、ノック無しで入ってきた二人の騎士に、ケツァル国王は命じる。


「この者たちを、全員牢屋へ案内しろ!!」



「どういうことですかな、これは国として由々しき問題だぞ。

 我々がローラ王女を人質に取っているなど、言いがかりもいいところだ」


 レンカクがアルバスに変わり二人の騎士に訴える、騎士はフルフェイスの鎧を被り、顔が見えない。


「黙って歩け……従えば危害は加えない」


 少し若そうな男性の声で、片方の騎士が注意する。


「レンカク殿、ここはおとなしくしましょう」

「むぅ……せめて年寄りをいたわってくれよ」


 コルヴァンにたしなめられ、レンカクはおとなしく従う……が、二人とも内心はそこまで焦っていない。

 それはアルバスも同じだった。


(なんでわざわざ確認したんだ……血統共鳴魔法が使えるとわかれば、封印魔法は無駄だとわかるはずなのに)


 通信魔法なら封印されれば使えない、しかし血統共鳴魔法は魔力ではなく絆があれば、どんなときでも連絡ができる。

 思い出されるのはガシラの存在。


(国王と自分の妻である王妹がいる場だというのに、威圧感があったな……対照的に、王族の二人は覇気の弱さを感じる……)


 その違和感から導き出されるのは……。


(……欺くために、俺たちを捕まえた……?)


――ガンッ


「痛っ」


 アルバスの真後ろにいた騎士が、何もいわず剣の束でアルバスの背中を小突く。


「さっさと歩け、立ち止まるな」


 もう一人の騎士が補足するようにアルバスに指示する、考えすぎて立ち止まってしまっていた。

 アルバスが小突かれたのを見て、さすがにコルヴァンが少し苛立った声を上げた。


「立ち止まったからと言って、さすがに乱暴ではないか」

「大丈夫コルヴァン、麗しいお嬢さんに小突かれるなら本望だよ」

「「え」」


 アルバスの言葉に、思わず騎士二人が声を上げた……そのうち寡黙だった騎士の声は確かに女性のもの。

 しかし鎧とフルフェイスで固めた騎士の性別を判断するのは、通常ならできるはずがない。


「気品ある仕草を俺は見逃さないよ……おっと、この話は牢屋までとっておこうか」


 バチン、とウィンクを決めて得意げに歩き出すアルバスだったが、本人以外の仲間たちは、生粋の女ったらしぶりに、少し引き気味だった。



 地下の牢屋に到着し、騎士は檻の鍵を開けた。


「ここにお前らの仲間がいる」


 そう言うと、奥からレイルが恐る恐る歩いてきた。


「コルヴァン、さん」

「レイルさん、良かった、無事で……」


 ホッとした笑顔を浮かべるコルヴァンに、レイルは目に涙が溢れ泣きそうになる。

 ミロルも駆け寄りたかったが、男装しているためなんとか抑える。


「怖かった? 大丈夫?」


 そんなレイルに、コルヴァンは慌てて駆け寄るが、レイルは首を振りながら。


「わ、私のせいで……こんな、ことにっ」


 どうやら洗脳が解け、人質にとられたことに責任を感じているようだった。


「レイルさんのせいじゃないよ、洗脳はどうしようもないから」


 慰めてくれる優しい声に、レイルは心が締め付けられる。


(違うんです、コルヴァンさん……)


 俯きながらレイルは首を横に振る。口には出せない罪悪感が、彼女にはあった。


(私、このまま、羽澄さんがいなくなれば……そう思ってしまったんです)


 洗脳されたせいではあるが、自分が考えてしまった事実が、レイルを苦しめていた。


「レイルちゃんは優しいから……でも、気にしなくていいよ」


 レイルの後ろから、もっと優しい声が聞こえた。

 それは一緒に捕まっていた羽澄。

 さすがにミロルも駆け寄り、羽澄を見守る。

 変装の練習を見守っていた羽澄は、少し驚いたものの、嬉しそうにミロルに微笑んだ。


「羽澄……良かった無事で、怪我はないか?」


 コルヴァンが羽澄の姿をみて、パッと笑顔になる、先ほどとは比べものにならないほどに嬉しそうな笑顔。


「大丈夫、怪我もしてない……」

「腕、どうした」


 特に手を振ったわけではないのに、コルヴァンは羽澄の手にある縛られた痕に気づく、擦れたのか真っ赤に擦れていた。


「っ、ご、ごめんなさい、私気づかなくて……」


 すぐそばにいたレイルでさえ気づかないほど、羽澄は顔に全く出さなかったのに、コルヴァンは気づいてすぐ手に取る。


「こんな傷をつけるなんて……許せないっ」


 心の奥底から出る低い声で唸るコルヴァン。

 回復魔法をかけようとするが、封印されている為今は何もできない。


「っ……くそ……こんなに痛そうなのに、何もできないとは……」

「落ち着いて、たいした傷じゃないから」


 羽澄の怪我を心配するコルヴァンと、心配かけないように努めて微笑む羽澄。

 お互いを思いやる気持ちが、見ているだけで伝わってくる。


(やっぱり……ちゃんと諦めよう)


 二人の様子に、レイルは心の中で静かに、その想いに終止符を打った

初登場

ファルケ国王:セレーヌ・ケツァル

王妹:セレーヌ・エルシア

フルフェイスで男女の騎士


登場人物

神選会の教祖:チャルボ・レンカク

王妹配偶者:セレーヌ・ガシラ

姉回復魔法:レイル


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