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巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で整骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第二章 聖癒布躍進編 〜消えた王女の行く末〜

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第五十二話 その布が救うもの

 褒賞授与式が無事に終わり、城からの使者に案内され、羽澄たちはある場所へと連れて来られた。


「これが褒美って、マジ?」


 思わずミロルが呟く。


「……え?」

「ここ、全部……?」


 羽澄とコルヴァンは驚きで、たったそれだけしか声が出なかった。


「この土地だけでなく、建物も褒美に含まれています」

「私が聞いて、大工たちに依頼するから、遠慮なくわがまま言ってくれてかまわない」


 職人ギルドマスターのヴェルが説明すると、ようやく羽澄が「ありがとう、ございます」と惚けながら呟いた。

 羽澄たちへの褒美は、拡張のための土地と聖骨院建設、提案者はアルバスらしい。

 まさかの申し出に信じられなかったが、教会からも遠くなく、城下町に行くにも便利な立地のいい土地に案内された。


 まだ驚いている羽澄たちをみて、ヴェルは真剣な眼差しで言った。


「何信じられないって顔してんの。

 この褒美を貰えるくらい、あんたたちはすごいことをしたんだ。

 遠慮なく貰っておきな」


 その言葉に、三人は顔を見合わせ小さく微笑みあうと、使者に向かって頭を下げた。


「ありがたく、受け取らせていただきます」


 こうして新聖骨院の建設が、始まるのだった。



 褒美の土地を見終わり、ミロルはギルド連合会館にいた。

今日は聖癒布販売日であり、聖癒布に詳しいミロルが待機していたのだが……発売して間もないのにすでに人で溢れ、ミロルは驚きを隠せない。


(こんなに人が来るなんて……待機しておいて良かったかも)


 この盛況ぶりは崩落事故で再生布の活躍が広まっていたのもあるが、温癒布と冷癒布を細かく切って、手に貼って貰うという試供を行ったからだ。


「こんな布が、本当に冷たいっ」

「暖かい……貼った部分だけお湯に触っているようだわ」

「寒い日は必需品になりそうだ」

「夏の大工もこれがあれば楽だな」


 試した全員が必ず購入し、あっという間に全ての商品がなくなってしまった。


「いやー、最初は週一回の販売のみにしたのは正解だったね。

 これじゃあ材料調達と制作が間に合わないよ」


 ロウフは急遽売り子に加わったミロルに話しかける。

 完売したため、やっと一息つけたところだ。


「本当ですね……試供は、やり過ぎだったかしら」

「いやいや、最初の印象が大事だから……それにギルド連合会館のみの販売っていうのも良かった。

聖骨院で販売となると本来の営業か聖癒布制作が止まってしまうしね」

「そうですね……制作している三人には、急遽ジェル以外の作り方は全て教えましたから……ロウフさんが言った通り、制作はあの子たちに一任することにしました」

「よかった、三人とも信頼に値したかな?」

「はい、とってもいい子たちで……子供が三人増えたようで、つい面倒見ちゃうんです」

「……たまに本当に母親か、疑ってしまうよ」

「ふふっ、若く見えてしまってごめんなさいね」


 ミロルは嬉しそうに笑い、聖癒布の売れ具合にも満足していた。



 一方その頃、教会では絶賛聖癒布を作っていた。


「どうかな、調子は」

「あ、コルヴァンさん、おはようございます」


 教会の聖癒布制作室にて、コルヴァンが様子を見に来ると、三人はにこりと笑い挨拶をする。

 リーノはコルヴァンに抱きつきや、触りに来ることはなくなったし、以前より明るくなったようで、三人で作業している姿はほほえましい。


「聖癒布を作って、何か不便なところはある?」

「そうですねー……」


 レイルが呟くと、アイルとリーノは困ったようにレイルに視線を向けた。


「遠慮なく言っていいよ、全ては難しいかもしれないけど、できるだけ改善するから」


 コルヴァンの優しい声色に、三人の代表としてレイルが口を開く。


「作業場が少し狭いのと、炉が欲しいです。

 調合で火を使うときに、リーノは炊事場まで行っています。

 私とアイルは調合が終わるまで、待たないといけないので非効率かと」

「なるほど……炊事場の方が狭いから、作業場を移動させるのも難しいな」

「あ、あ、あと、えっと……」

「あと、ジェルを使用しきっても私たちの法力が残っていて、もったいないなと」


 アイルが発言しようとどもっていれば、レイルがすぐ代弁してくれた。

 コルヴァンも、レイルの目を見て、真剣に答えた。


「ジェルの増産か……わかった、検討しよう。

 あと部屋や炉に関しては、今新しい聖骨院の建てる準備をしている。

 そこで今聞いたことを作業場の増築と、設備について検討する」

「コルヴァンさん、ありがとうございます」

「いや、レイルさんも言いにくいことを教えてくれてありがとう」


 コルヴァンはまとめ役なレイルに礼を言うと、彼女は嬉しそうにほほえみ。


「い、いえ、とんでもないですっ」


 と少し顔を赤らめた。


「頼りになるお姉さんだ」


 と、まるで妹のように頭を撫でると。


「えへへ……」


 と、レイルは耳を真っ赤にして喜んでいた。



「すみません、商人ギルドで手続きした者ですが……」


 聖癒布を販売して数日後、聖骨院開店中に二人の男女がおそるおそる契約書を持って訪ねてきた。

 二人は聖癒布で貯まった補償金を初めて使用して、治療しに来た夫婦だ。


「ほ、本当に、治療費を支援していただけるのでしょうか」

「はい、自己負担は二割で治療が可能です」


 男性の質問に羽澄が答えると、二人とも嬉しそうに目を輝かせる。


「まずは治療の金額を確認してから、実質負担がどのくらいになるか計算しますね」

「お願いしますっ」

「では、こちらへどうぞ」


 コルヴァンもこの状況に胸が熱くなるのを抑えつつ、羽澄の補助をする。

そして検査が終わったあと、羽澄は心配そうな表情の夫婦に金額を告げた。


「旦那さんの症状だと、負担金額は銅貨四十六枚ですね」

「あ、あの、実際の金額は……」

「銀貨二枚と銅貨三十枚です」

「それが四十六枚……本当にいいんでしょうか」

「はい、大丈夫ですよ……治療、受けられますか?」

「受けます、受けさせてくださいっ」

「良かった……あなた良かった」


(ああ、私たちが目指していたのはここだ)


――この制度があれば、もっと多くの人を救える。


 羽澄とコルヴァンは顔を合わせて、微笑み合う……同じ志を持つ仲間として、この喜びを分かち合っていた。


登場人物

商人ギルドマスター:ロウフ

職人ギルドマスター:ヴェル

従業員(幼馴染三人組)

巨乳料理好き:リーノ

姉回復魔法:レイル

弟攻撃魔法:アイル

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