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巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で整骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第二章 聖癒布躍進編 〜消えた王女の行く末〜

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第五十話 裁きの先で、進む未来

「スカート……!」

「スカートどころかドレスよ、報告の時は急な呼び出しで白衣だったけど、謁見室で式典なんだから、ちゃんと正装していかないと」

「女の正装は華やかなドレスですよねー」


 褒賞授与式に向けて、以前訪れた王室御用達の仕立屋に来ている。

 羽澄は言われるがまま採寸も終わったが、ナース服以外スカートすらほとんど着ない羽澄にはハードルが高い。


「そうそう、聖骨院として儲かっているんだし、これから社交界に顔出す可能性もあるんだから、もう一着作ってもいいかも」

「そんな可能性、あるの?」

「ありますよ、王族であるストリ様を治療した功績と、治らないといわれていた怪我を治し国に貢献。

 加えて崩落事故での実績、王族や貴族からの推薦で招待されることもあります」

「……さすが大富豪元夫人、詳しいですね」


 多少げんなりしながら、羽澄は考えたこともなかった可能性に顔が引きつる。


「まあまあ、ドレスのことはママとフォルンさんにまかせて……あと、多少の谷間は我慢して」

「谷間に多少も何もないでしょ……」


 半ば諦めながら店のソファーに座っていると、ぐったりとしたコルヴァンが採寸室から出てきた。


「俺も新しく作らなきゃダメなのか……」

「当たり前、小さな教会とはいえ、法衣くらい持ってないと……一人だけぼろぼろの司祭服じゃ、恥ずかしいでしょ」

「聖拳士の時に貰った勲章も必ず着けてください……まさかなくしてないですよね?」

「も、もちろん! 大事に保管してあります」

「……つまりしまいっぱなしってことですね、ミロルさん、あとでチェックしてあげてください」

「まかせて、アクセサリー作家として、埃も濁りも取ってピッカピカにしてあげるから」

「……はい、よろしくお願いします」


(今は、何を言っても無駄だな)


 コルヴァンは悟りながら、同じように諦めている羽澄の隣に座る。


「コルヴァン、お疲れ様」

「羽澄は、もっと決めることが多いんだろ?」

「……そうみたい」


 力なく笑う羽澄に、コルヴァンも笑う。


「いやぁ、採寸とは言え、べたべた触られるのは嫌だよなぁ」

「そうよね、私も胸を触られた」

「……採寸した人、女性、だよな?」

「もちろん。

 ちゃんと同性が採寸できるように、スタッフが控えているあたり、さすが王家御用達」


 自分の採寸が男性だったため、少しやきもきしていたコルヴァンだったが、羽澄の返答にホッとする。


(やはり、仕事とはいえ、下心を持つやつがいないとは限らないからな……)


 もやもやしたがすぐに解消され、一瞬すぎてそれが嫉妬だということにコルヴァンは気づかない。

 隣を見ると、不安そうな羽澄の姿が目に入る。


「どうした? 何か心配なのか?」

「ドレスとか、似合うかなぁ」

「似合うだろ、羽澄ならどんな服でも」

「お世辞はいいよ」

「お世辞じゃない、顔もスタイルも整っているから……いや、なんか恥ずかしくなってきたな」

「すっごい褒めるから……私も恥ずかしいよ」


 お互い頬を染め、俯く。

 コルヴァンはいつも冷静な羽澄のそんな珍しい表情を、ちらちらと見てしまう。


「で、でも私のおっきい胸……邪魔じゃない?」

「俺は羽澄だったら気にならん……いや、露出が多いのはダメだ」

「あー、私も露出度高めは嫌だ」

「……正直言うと、俺は見たい」

「見たいんだ……」


「ねえミロルさん……これって」

「しっ、本人たちは二人の世界って気づいてないからっ」


 ミロルとフォルンがこっそり見ながら、色気のない二人の会話に聞き耳を立てる。


「私もコルヴァンのいろんな服見てみたいな」

「ずっと司祭服だからな……どこか出かける時に、違う服でも着てみるか」

「持っているんだ」

「当たり前だ、さすがに司祭服だけじゃない」

「コルヴァンこそ、スタイルいいから、似合う服多いんじゃない?」

「そんなことないと思う、が……確かに、褒められると照れるな」

「ふふっ、でしょ?」


 今度はコルヴァンが褒められて、また二人で顔を赤くする。


「そうだ、今度司祭服以外で城下町を案内してよ……よく考えれば城とかギルドとかしか行ってないから」

「あー、確かに……わかった、案内しよう」

「えへへ、やった」

「嬉しいか?」

「うん、楽しみ……あ、迷惑だった?」

「いや……俺も嬉しい」


「羽澄ちゃんのデート服作らなきゃ」

「お手伝いします、ミロルさん」


 こうして無意識のうちのデートが決まったのだった。



 別の日のギルド連合会館にて、複数貼られているお知らせの紙を、ロウフが満足げに見つめている。


「ロウフさん、こんにちは」

「ああ、みなさん、呼び立ててすまないね」


 聖骨院の三人と車椅子のフォルンが会館に入ると、ロウフはにこやかに迎えるが、羽澄たちは少し表情が暗い。


「処分、決まったんですね……」

「ああ、アクロね……いくら洗脳されていたとはいえ、やったことがやったことだから」


 お知らせとして入り口に貼られたのは、冒険ギルドマスターの交代。

 そして監視下の元、半年間無償で特定のクエストを行うこと。


「薬草のクエストをアクロにやってもらうことになった、冒険者として腕は確かだから」

「可哀想だが、やったことが事だけに仕方ないだろう」


 コルヴァンは冷静にそういうが、表情は硬い。


「ただ、冒険ギルドの追放じゃないから……無償なのはクエスト報酬だけだし……半年間、しっかり勤めを果たしてくれるさ」


 ロウフは被害者だが、その声は仲間としてアクロを信じている声色だった。

 そしてロウフはそのまま、表情が固いフォルンに向き直る。


「まず一つ目の用事は、フォルンさん、あなたの処分が決まりました」


 アクロの処分が決まったということは、フォルンの処分も決まったということ。

 言われてフォルンは姿勢を正し、真剣な表情でロウフを見る。


「あなたも洗脳されたとはいえ、殺人計画の実行犯です……決して軽くない処分なので、心して聞いてください」

「お願いします、どんな処分でも受けます」


 覚悟を決めた返事に、羽澄たちも真剣な眼差しでフォルンを見守る。


「では、処分ですが……一ヶ月間、聖癒布の売り子をしてください、減給五割……一ヶ月経過したら通常の給料に戻します」

「……え、それでいいんですか?

 仕事までいただけることになりますが……」


 拍子抜けしたような、驚いた表情でロウフに尋ねるが。


「大丈夫……証拠の協力もあったし、何より被害者のトキアスが許しているからね」

「よかったですね、フォルンさん」


 処分の内容に羽澄たちもホッとし、笑みが溢れる。


「……また、トキアス様に、救われました」


 フォルンは顔を俯きながら、困ったような嬉しいような顔で呟いた。


「あと、嘘の証言をした作業員だが、すぐに罪を告白したことでトキアス、俺、レンカク様に謝罪をして許したよ」

「それはよかったです」

「完全に巻き込まれただけだが、アルバス様のナイス判断でもある」


 コルヴァンの言葉に、全員深く頷く。


「アクロは残念だったけど、新しい冒険ギルドマスターは今選定中だ。

 決まったらまた、ここでお披露目があるから、またお知らせするよ」


 崩落事故の件に関しては、次の褒賞授与式が済んだら落ち着くだろう。


「さて、今日呼び出した本命はこれ」


 ロウフが指を指したのは、聖癒布販売のポスター。


「聖癒布の発売日が迫ってきたからね、フォルンさんの売り子の件も併せて、最終打ち合わせに入ろう」


 聖癒布の販売は、今まで治療が届かなかった人たちも救うことができる……。

 カルロが起こした事件を霞ませるよつに、明るい未来にむけて、羽澄たちの打ち合わせは熱を帯びていった。


登場人物

聖骨院居候:フォルン

商人ギルドマスター:ロウフ

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