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巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で整骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第一章 聖骨院開業編 〜偽りの王子〜

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第四十六話 仮面が剥がれ、嘘が砕ける

「お前のっ、せいで!!」


 トキアスが叫び、ラヴェンに襲いかかろうとする。


「トキアス様、落ち着いてっ」

「裁きは我々でできるものではない、気持ちはわかるが、フォルン嬢のためにも、落ち着きなさいっ」


 ここにいる全員が初めて見る映像に、ずっとこらえていたトキアスの感情が弾けた。

 必死にロウフとレンカクが止めに入る。


「っ」


 冷静だったラヴェンは、この状況に魔力のないトキアスにも怯えてしまう。


「許せない、許せないっ」

「トキアス、こらえてくれ……大丈夫だ、もうラヴェンという、見目のいい男はいなくなる!」


 アルバスの声にトキアスは止まるが、その眼光は殺意が見える。


「トキアス様、これを……」


 羽澄が近づき、トキアスに水筒を渡す。

 受け取ると、素早く蓋を開けラヴェンの顔にかけた。


――バシャッ


「くっ」


 そしてラヴェンという仮面は崩れ落ちた。


「はぁ、はぁ……羽澄君ありがとう、少し落ち着いた」


 息は荒いが、瞳から殺意がなくなる。


「失礼だが、そちらの女性は?」

「ご挨拶が遅れました、ストリ様とフォルンさんの治療をしました、聖骨院の羽澄と申します」

「聖骨院……アルバスと事故現場で治療したものたちか」

「はい……ラヴェンの化粧を落とすために、トキアス様に水をお持ちしました」


 羽澄の言葉につられるように、ラヴェンの顔を見ると、国王は思わず声を上げる。


「……そなた、見たことあるぞっ」


 国王が驚きの声をあげる、ラヴェンの化粧が落ち別人が現れた。


「――セグロかっ、カルロの護衛騎士……国民を守るための騎士が……」


 呆れの中に怒りを含んだ声色で、ラヴェンだった男……セグロとカルロを見つめる。


「まさか私利私欲のために国王になりたいとは……」


 頭を抱えて深いため息をつく。


「しかも……カルロよ、強制崇拝魔法が使えるのか……」

「……」

「国王、魔法の存在をご存知でしたか……」

「ああ、王として、危険な魔法は把握しておく必要がある」


 国王はふと遠くを見ると、そのまま思い出話のようにカルロに尋ねる。


「確かに、あるときからカルロの周りでは、不自然な味方が多かった……アルバスも、その中の一人か?」

「……はい、おっしゃる通りです」

「……」


(もしかしたら、この魔法がカルロの目を曇らせたのかもしれん……)


 国王は思う、魔力さえあれば簡単に作れる味方……努力をせずに、自分の欲を優先させようと思うには、十分な材料だろう。


(……だからと言って、許されるわけがない)


「カルロ、セグロ……どういうことか、真実を話せ」

「はっ、はい……国王の仰せのままに」

「……」


 セグロは不安そうだが、カルロは意外とあっさり返事をする。


「なぜこんなことをしたのか……それは、焦りでした。

 ストリはアルバスと違い、魔力が強く俺の魔法が通用しないことに、恐怖したのです」


 どこか酔っているように話すカルロ。

 ガルーダ国王はカルロを見透かすように、レンカクに視線を向ける。


「協力を頼めるか、レンカク」

「はい、国王」


 呼ばれたレンカクは、手のひらに白い球を浮かび上がらせる。


「これは魂視魔法の、偽りを発見するのに特化した形態だ。

 お前たちが嘘をつけば、この真伽珠まがたまが赤く光る」

「っ!」


(まさか、この魔法を使わないでいけるとは思わなんだ)


 魂視魔法の存在はアルバスも知っていた、洗脳や嘘を見破れるが、その内容までは見破れない。

 どうしても嘘か本当かわからず、アルバスから依頼されればこの魔法を使おうと思っていたのだが。


(魔法に頼らずよくぞここまで……やはりあなたは国王にふさわしい)


 レンカクは改めてアルバスを支持することを誓う。

 そしてガルーダ国王は厳しい声で二人に宣言する。


「真伽珠が赤く染まれば、お前たちの罪が重くなると思え……たとえ息子でも、ことと次第では処刑にすることも辞さない」

「あっ、あうぅ」


 ガルーダ国王の迫力に情けない声しか出せないカルロ。


「どうした、真実を話すと約束したはずだ……まさか、この期に及んで嘘をつくつもりだったわけではあるまいな」


 その言葉に、カルロはがっくりと項垂れた。


「……話します、全て話します」


 そう告げると、カルロは重い口を開いた。


「俺は不安だったのです……父親には日頃から『お前が王位継承者になるとは限らない』と言われ、ストリに強い魔力があるとわかって……絶対王位継承者になれる方法を考えたんです」

「俺もカルロ様を不憫に思い、コルヴァンが【聖】の称号にも不満を持っていたので、カルロ様の計画にのりました」

「なるほど……それが動機、と言う訳か」

「はい、さようでございます」

「二年半前の横領は関係ないのだな?」


 ガルーダ国王がそう言うと、二人とも顔を引きつらせ、そしてレンカクの真伽珠が赤く染まる。


「違うんですっ、俺は、国のためを思って……」

「そ、そうです、カルロ様の念願が叶えば、この国はもっともっと大きく」

「じゃあお前たちの欲のためではないというのだな?」

「「もちろんです!!」」


 揃った声に応えるように、また真伽珠が赤く光る。

 深いため息のあと、ガルーダ国王が最後の忠告をする。


「下手な小細工や感情に訴えようとするな……こうなった経緯と事実を言え」



「俺たちは女とギャンブルにはまり、二年半前に国の金を横領しました」


 抵抗を諦めたカルロは、隠すことなく素直に話し始めた。


 動機は遊ぶ金が欲しいという理由、王子としてあるまじき行為だ。

 結局財務大臣にばれて、返金すると言う形でその時は終わっていた。

「こんなくだらない理由で……」


 トキアスはまた生まれそうな殺意をグッと抑える。


「大臣から報告は受けていた……しかし、反省していたと言う言葉を信じていたのに……」

「で、でも、ギャンブルは国のためになりますから! 大きくあたれば……」

「――余計なことを言うな、すぐ死刑にしてもいいんだぞ」

「ひぃっ、も、申し訳ありませんっ」


 話は二年ほど前、カルロとセグロが偶然盗賊姉弟と遭遇したところからことは始まる。


 盗賊姉弟は、金のためならものを奪うことも、人さらいをして売り払うこともする極悪非道だった。

指名手配されるほど腕がたち、のらりくらりと逃げ延びてしまう。

 そんな二人と遭遇したカルロは、仲間に引き入れる事にした。


「セグロと盗賊姉弟が、顔を変えて神選会を乗っ取る、俺が国王になって治療師を独占して、金を集めてギャンブルで増やす……そして国を大きくして、様々な国を支配下に――」

「いい加減にしろっ、この愚息が!」


 謁見室に響く国王らしからぬ声……それは一人の親として、恥ずかしく悲しい心からの叫び。


 完全に開き直り、壊れたようにヘラヘラと笑うカルロだったが……この後、希望も何もかも打ち砕かれることを、彼はまだ知らない。

登場人物

第二王子:ヴァルディア・アルバス

第一王子:ヴァルディア・カルロ

国王:ヴァルディ・ガルーダ

大富豪:ハルビア・トキアス

商人ギルドマスター:ロウフ

神選会の元教祖:チャルボ・レンカク

神選会幹部:ラヴェン(元騎士:セグロ)

冒険者ギルドマスター:アクロ

第三王子:ヴァルディア・ストリ

現教祖:海藤 純太

巨乳の武闘家:ノクス(盗賊姉:ノーチ)

魔法使い オルロック(盗賊弟:ロックス)

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