第四話 神父、巨乳に屈する(物理)
「ハイっ、おわりー」
「……羽澄ちゃん、人使い荒すぎー」
「……うぐぅ」
汗だくの羽澄とミロル、コルヴァンはベンチに足をはみ出しながら、横になって唸っている。
「あー、つかれたぁ……でも魔法なかったらもっと時間かかったわよね?」
「年単位でかかるね。……定着と回復促進の効果がよかった……その代わり痛みがすごかったと思うけど」
「い、いえ、俺は、元聖拳士、ですから、なれていますので、全然平気、ですけど」
見栄を張っている事が、声の震えでよく分かる。
しかし痛みだけではなく、驚きもある。
「この体の軽さ、痛みを伴わない腰と背中、何より戻ってきた魔法力……」
「体の歪みを治せば、血流や体調が良くなります、つまり私のおかげですね」
「そんなことはっ……いや、まあ、その、先ほど、仕事が出来なさそうと言って、悪かった」
素直に頭を下げるコルヴァンに驚きつつ、羽澄はにやりと笑った。
「いいでしょう、私の実力を分かって貰えればいいのですよ」
「って事は、入社試験合格って事で良いかしら?」
「そうですね、以前相談したとおり、ここで働いていただきたいです」
そう言いながらコルヴァンは椅子に座りなおす。
ミロルとコルヴァンの中で話がまとまったところで、羽澄は軽く手を上げた。
「っていうか、本当にママから何も聞いてないんだけど……働くってどういうこと?」
「ああ、そうだったわ、うっかりうっかりー」
自分の頭を軽く小突きながら、かわいこぶる自分の母親に。
「いい加減早く教えろ、ババア!」
「ババアやめてー、ママはまだぴちぴちなのよー」
と親子げんかを、虚無の視線で待つコルヴァンだった。
鷹野家の収入源はエリート商社マンの父親と、売れっ子アクセサリー作家の母親、ミロルから成り立っている。
「ママのアクセサリーは、この異世界で製作していたの。
この国には宝石を作る職人がいて、現代より簡単に手に入れることができるからね」
「異世界で制作とか、宝石が作れるとか……衝撃の事実なんだけど」
「宝石は普通に現代で使える代物よ。
そしてここからが本題」
ミロルにぴしっと指をさされて、羽澄は不機嫌そうにその指を握り、ぽいっと放りだした。
「余計なことは良いから、続けて」
「あらそう? まあつまり、今まで宝石を買うお金はこの教会で、怪我した人たちに治療をして、貰っていたの」
「ただ、俺の怪我が悪化して、魔法が使えなくなったので……困っていた時にミロルさんの娘さんが、根本的に骨を治す職業をやられていると聞いたので」
「それで私が呼ばれたというわけね」
やっとここにいる理由が理解できた、羽澄は納得して口を開く。
「ちなみにコルヴァンさんの魔力は戻ったんですか」
「はい、この通り」
座ったままコルヴァンは、手をかざして炎を手に宿した、ほっとしたのと、魔法が珍しいので、羽澄は正面に立ってマジマジと見つめてしまう。
そんな羽澄の後ろから、ミロルがニヤニヤしながら背中を押した。
――ドン
「えっ」
「は?」
――もぎゅぅ
「ギャー、あつ、あつっ」
「えっ、えっ」
いきなり背中を押されたかと思うと、羽澄はそのまま炎が灯るコルヴァンの手にダイブ。
かざしていた手が、そのまま羽澄の胸を掴んでいた。
大慌てで羽澄は離れ、コルヴァンは炎と手を引っ込める。
「た、たすけ、もえ……燃えてない?」
「は? えっ」
急いで胸を叩く羽澄だったが、全く燃えてないことに気がつく。
叩いた胸がポヨンポヨン跳ねているだけだ。
「え、炎は偽物?」
「本物よー、ただ魔力に反応しない現代の人間には効かないの」
「……それを早く言ってよー」
「うふふ、実践がわかりやすいでしょ?
でも羽澄ちゃんはハーフだから、回復魔法は効果あるのよ」
「へー、そうなんだ、よく知ってたね」
「羽澄ちゃんが赤ちゃんの時に試したから」
「……一歩間違えたら死んでたでしょ、それ……そんな危ないことしないでくれる?」
親子が言い合っている中、コルヴァンは一人。
(すっっっっごく、柔らかかった……)
羽澄の胸を掴んだ手を、じーっと見つめていた。




