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巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で整骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第一章 聖骨院開業編 〜偽りの王子〜

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第二十八話 これ以上、応援は来ない

 馬車の中で、ラヴェンの事件と強制崇拝魔法について共有されていた。


「まさか、第一王子が……」

「まだはっきりはわからないが、兄上がトキアス殿の元奥方に術をかけた可能性は高い」

「……そうか」


 そう呟いたきり、トキアスは俯いたまま何も喋らなくなった。


(こんなに小さくなったトキアス様はみたことがない)


 コルヴァンはそう思うものの、かける言葉が見つからなかった。



 地下労働場入り口――だった場所に到着した。

 瓦礫で塞がり、地下で働いていた労働者たちで溢れかえっている。

 無傷な者、大怪我を負って横になっている者。

 そして彼らを助ける者もいた。


「動ける者は、重傷者を近くの宿泊所まで運べ!

風魔法が使える者は、瓦礫を動かせっ」


 元神選会教祖のレンカクが大きな声で指示を張り上げている。

 歳に似合わず張りのある声だ。

 彼の仲間たちもともに救助活動に当たっている。

 しかしレンカクもその仲間たちも、年配が多く人を運べず、風魔法を使える人間も少ない。


「俺、風魔法使えます!」


 ギルドの馬車に乗っていたシュバが飛び出し、瓦礫の山と対峙する。

 通常攻撃のために使う風魔法だが、瓦礫をどかしたり穴を開けたりするには向いている。


「残っておるのは女性一人だ。

 急いで救出が必要だが、瓦礫の雪崩を誘発しないよう、くれぐれも気をつけろ!」

「はいっ」


 レンカクの指示のもと、シュバを中心にして風魔法で瓦礫を飛ばしていく。


「フォルンっ」


 トキアスの悲痛な声が響く。

 残っている女性がフォルンの可能性は大いにある。


(ラヴェンが口封じで崩壊させたとすれば、なおさらフォルンが危ない)


 そう思うと自然に馬車から飛び出し、シュバたちと合流しようとしたのだが……。


「そっちに行くな、コルヴァン」


 アルバスが制止する。


「っ、何故ですか!? 早く瓦礫をどけないと……」

「瓦礫はいつ崩れるか分からない、繊細な作業だからこそ人数を多くするより、法力を温存して備えておいた方がいい。

 それに今日は結界の魔法を多用して、法力が少ないはずだ」

「それは……」


 アルバスの言葉は正しいし、自分を犠牲にしてしまうコルヴァンにとっては耳が痛い指示だ。


「お前は使える魔法が多い、他の魔法を求められた時のために、法力をとっておけ」

「――はいっ、承知しました」

「よし……ではコルヴァンはここに残り、必要であれば救出を手伝え。

 回復ができるものは、レンカク殿以外、我々と一緒に宿泊所へ……この場はお願いしてよろしいですか?」


 アルバスは丁寧にたずねると、レンカクは眩しそうに目を細めながら。


「……わかった、第二王子の仰せのままに」


 と頭を下げ。


(少し見ない間に、ご立派になられて……)


 と、表に出さず感動していた。


「状況が変わり次第報告を!」

「私もフォルンを確認しに、宿泊施設へ連れて行ってくれ」


 アルバスは指示をし、トキアスはわずかな希望をもって、羽澄、ミロルと回復が使える数人と宿泊施設を目指した。



 そこは部屋中で呻き声が聞こえている、重体の人間はベッドに寝ているものの、明らかに回復魔法が足りてなかった。


「痛ぇ、血が止まんねえよぉ」

「誰かっ、こいつに回復を、早く!」

「はい、ただいまっ」


 聞こえる悲痛の声。

 一緒についてきた数人が、声に応えるように飛び出し、より重症の人に回復をかけていく。

 羽澄とミロルも各部屋の状況を確認し、トキアスもフォルンがいないか飛び出した。


「神選会と城の治療師はまだか!?」

「は、はい、レンカク様が駆けつけてくれてからは、アルバス様まで誰も……」

「っ、なんてことだ……」


 怒りを露わに拳を握るアルバスだが、今はそれどころではない。


「アルバス様、ご報告します」


 羽澄が声をかけ、自分が見た今の状況を説明する。


「まず怪我の状況ですが、軽症も重症も混在し、無差別に回復魔法をかけている状態です。

 そこで軽症患者を大部屋に集め、簡易的な治療を行うことを勧めます」

「時間がない、簡潔に頼む」


 いつもと違うアルバスの言葉に、ミロルが聖癒布の束を取り出した。

 それはロウフの手土産にと、偶然持ってきていたもの。


「この再生布で軽症な人の治療をします」

「そして私は重症患者は順次治療していきたいのですが……」


 ミロルが指示通り、簡潔な再生布の提案と、羽澄の説明に非の打ち所がなかったが、おもむろに羽澄が口を開く。


「私たちでは聞く耳持ってくれないので、ご指示を、お願いしたいのですが……」


 羽澄はほんの一瞬だけ、悔しそうに視線を落とした。

だがすぐに、何事もなかったかのように顔を上げる。

 確かに女性二人、白衣を着ているものの、聖骨院に足を踏み入れていなければ、彼女らの実力はわからないだろう。


(今の彼女たちが指示しても、聞き入れて貰えない可能性が高いだろうな……)


 アルバスは羽澄とミロルをしっかりと見つめ、頷いた。


「分かった、指示を出すので、何かあれば助言をくれ」

「よろしくお願いします」

「トキアス殿は?」

「フォルンさんがいらっしゃらなかったので、事故現場に戻りました」

「……そうか」


 トキアスも今は周りのことを考えられる状況ではない。


(それなら、俺が……やるしかないっ)


「聞け! 軽傷のものは大部屋に移動し、簡易的な治療を受けろ。

 重傷のものはベッドで待機!

回復魔法を使えるものは重傷者に魔法をかけつつ、聖骨院の羽澄先生を補助しろ」


 アルバスの指示により、その場の空気が変わり、羽澄を受け入れ治療できるようになったのだった。



「城の治療師、到着しました!」


 二台の馬車が到着し、その中から合計六名の治療師が馬車から降りる。


「……六名だけか?」

「はっ、申し訳ございません。

……カルロ様が、六名で問題ないだろうと……客人もてなすとかなんとかで、そのまま神官と治療師を連れて……」

「……客人?」

「はい、神選会の幹部とのことで」


 報告を受けて頭が真っ白になる――つまり、神選会の応援は、来ない。


「くそっ!」


(今は父上も外交会談で不在なんだぞっ)


 そう憤りながらも今をなんとかしなければならない。

 深呼吸をして城からの治療師に指示する。


「治療師五人は俺とともに重傷者の治療へ、詳しい指示は羽澄先生から受けろ。

 一人は大広間へ行き、軽症者の治療をしているミロルさんに現状を伝え、その後の指示を仰げ」


 指示をしてから羽澄のところへ向かう、アルバスは気づかぬうちに、国を統べる者としての振る舞いをしていた。


登場人物

第二王子:アルバス・ヴァルディア

魔法剣士:カグー・シュバ

商人ギルドマスター:ロウフ

大富豪:ハルビア・トキアス

神選会の元教祖:チャルボ・レンカク

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