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巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で整骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第一章 聖骨院開業編 〜偽りの王子〜

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第二十一話 救われた者たちと、困った告白

 翌日。

 見違えるほど綺麗になった教会の前で、トリガ夫婦と数人の男たちが、聖骨院の三人と対峙していた。

――そして一斉に頭を下げた。


「お世話になりました! 治療していただきありがとうございます」


 トリガ夫妻から紹介された仲間たちが、治療の対価として教会の椅子、石像、演台の修繕。

 そして聖骨院の修繕や待合室の椅子、その他細々とした修繕や家具を作ってくれた。


「こちらこそ、教会や聖骨院を綺麗にしていただき、ありがとうございます」

「これでコルヴァンの教会が古いとか、今にも壊れそうとか、言われなくなるわね」

「ミロルさんはそんなこと思っていたんだ……」


 軽くショックを受けるコルヴァンも、みんなの笑顔に釣られて微笑む。

 すると後ろから女性の声がした。


「みんなおそろいか――ちょうど良いところに来たわ」


 つい昨日聞いた声、振り向くと職人ギルドマスターのヴェルがいた。

 昨日のドレスと違い、動きやすそうなハーフパンツにボアの着いたジャケットを羽織っている。


「どうされたんですか?」


 そう羽澄が訪ねると、ヴェルはトリガ夫妻たちと並び、彼らと同じように頭を下げた。


「ギルド仲間を助けてくれて、ありがとう」

「ヴェルさん……」

「今日集まると聞いて、是非お礼が言いたいと思っていたのよ」


 ここにいる全員、怪我する前は職人ギルドにいた。

 ヴェルは昨日お礼を言うことも可能だったが、全員集まったここに来ることに意味がある。


「みんな、また職人ギルドの仲間になってくれないか」

「もちろんです、我々もこのまま、ヴェル様に会いに行くところでした」

「ヴェル様のもとで、働きたいです」


 次々と上がる賛同の声に、ヴェルは嬉しそうに笑い頷いている。


「先生、みなさん、本当にありがとうございます」

「レウスさんも、魔法調合を助けてくれてありがとう」


 聖癒布を一緒に作った仲間として、ミロルはレウスに感謝の言葉を述べる。


「これからは安静にして、元気な赤ちゃんを産んでね」

「はい、ありがとうございます」


 レウスも働いたことにより、今まで不安だった生活が明るい未来になった事を感じた。


「あんたたちはすごいよ……本当に」


 ふとヴェルが羽澄に言う。


「絶望していたみんなを、こんなに笑顔にして救ったんだ……聖癒布も売り出したら、もっと多くの人を救えるだろう……何かあればすぐに言ってくれ、私が出来ることならなんでも手を貸そう」

「ありがとうございます、ヴェル様」


 笑顔で溢れる空間に羽澄も、コルヴァンとミロルも、この聖骨院を作った意味を見つけた気がした。



「先生っ、ど、どうか、お付き合い、してくださいっ」


 聖骨院営業中、以前治した元騎士の男性、治療後の再診察のために来ているはずなのに、なぜか羽澄に告白をしている。

 しかも告白の内容がこの世界独特だった。


「俺が宮廷騎士に戻ったら、愛人として養いますから!」

「愛人、ねえ……」


 この世界では、二十歳以上の巨乳の女性は体裁が悪いとされている。

 まして宮廷騎士となれば、正妻は身分ある者に限られる。


「あなたの、治療が忘れられないんです……」


 うっとりしている男性の顔を冷めた目で見つつ、思考を巡らせる。


(現代に住む私に身分なんてないし、巨乳アンチの世界だから言っていることは分からんでもなくもなくも……やっぱりわからん!)


「お断りします、ごめんなさい」


 はっきりとそう言うと、男性はショックを受けた顔をしたが、それ以上言うこともなく、とぼとぼと帰って行った。


――バチィッ


「ひぃっ」

「……コルヴァン、その電気の強さだと、患者さん気絶しちゃうわよー」

「……失礼しました」


 告白が聞こえて、事務所でアクセサリーを作っていたミロルがコルヴァンを注意する。


「羽澄ちゃん、これで二人目ねー、前は貴族の妻子持ちだったかしら」

「……あまりにも失礼じゃないか、愛人前提とか」


 電気魔法を調節しながらも、不機嫌なコルヴァンにミロルはほくそ笑む。


「ほんと失礼な話よね-、コルヴァンだったらお嫁さんに貰ってくれるわよ、きっと」

「はぁ? おおおお、俺がぁ?」


 取り乱したコルヴァンに、電気も併せて取り乱す。


――バチバチィ


「うわぁ、助けてくれー」

「あ、失礼しました……」



 落ち着いて治療を終え、店を閉店してから話し合う。


「愛人前提の告白には、困ったわね」

「まあ、結婚申し込まれても困るんだけど。

 でも、そう滅多にいないとおもうし、告白なんて」

「甘いわよ! いくら巨乳アンチの世界でも、胸を押し当てられたら男は悪い気はしないから。

 逆に巨乳の魅力に気づくんじゃないかしら」

「えー」


 不服そうな羽澄の声だが、密かに巨乳の魅力に気づいているコルヴァンは深く頷いている。


「……コルヴァンさんも、そういうタイプ?」

「そういうタイプ、と言うか……俺は巨乳の女性と戦って、頭を思いっきり胸で殴られて倒れたから、胸ってハンマーのように堅い物かと思っていたんだ」

「何それ、その衝撃のシーン、見てないんだけど」


 以前コルヴァンの過去を見たときは、もうすでに倒れていた場面だったが。


(まさかあのシーンの前が、巨乳にぶっ飛ばされていたとは……)


「コルヴァンも、相当な経験をしているのね」

「……まあ、俺のことは別にいいけど」


 ごまかすように、こほんと咳払いをし、コルヴァンは話を続けた。


「トキアス様と親方も言っていたけど、俺は正直、こんなに柔らかいのかと、驚いた」


 思い出したのか顔を真っ赤にして当時思っていたことを正直に話す、隠し事がなくなったと言うよりは恥ずかしい発言ではあるが。


「でもこればっかりは不可抗力だし、そんな事言っていたら治療出来なくなるし……」


 困ったように首をかしげる羽澄に対して、ミロルもコルヴァンも対策を考えていた。


「私が思うに、コルヴァンと結婚したら?」

「はあ? え、お、俺、ですか?」

「そうよ、結婚したと知られたら、そんな告白減るんじゃないかしら……嘘でも良いし」

「いや、俺と羽澄が、結婚……いやまぁ、別にいやとか、そういうのは……どうしても、というなら」

「えー、やだっ」

「……いやなんだって、コルヴァン」

「別に……傷ついていないので、わざわざ言わなくていいから」


 ミロルの発案は却下となり、無駄に傷つくコルヴァン。

 何度目かの気を取り直して、提案をした。


「俺が治療を覚えるっていうのはどうだ?」

「あー……」

「難しいのはわかっている、簡単にできないとは覚悟の上だ。

 しかし万が一出来るようになったら、男性は俺が治療すれば告白も減るだろう

 ……嫌なら無理にとは言わないが」


 無謀な提案にも聞こえるが、整体を覚えることは悪いどころか、知識を広げるという意味ではとても良いことだ。


「その申し出はありがたいけど、この治療は一つ間違えると、怪我が悪化してしまったり、最悪体が動かなくなることもあるの」

「ああ……すまない、軽はずみな提案を……してしまった」


 羽澄の指摘に声のトーンが落ちたコルヴァンだったが、羽澄は逆に提案する。


「違うの、教えることはできないんだけど、補助ならできるかも」

「補助?」

「そう、私が治療の時に体全体を使ってズレを治すことがあるんだけど、それって私の体が小さくて、手だけでは支えられないからなの」

「ほう、なるほど」

「たから、代わりに支えてくれたら、そんなにくっつかなくてすむかも……私が教えるから、やってみる?」

「いいじゃなーい、ルバ様の依頼が終わったら教えてもらったら?」


 乗り気の羽澄とミロルに視線を送りつつ、またあの柔らかさが体験出来る期待が、コルヴァンの胸の中に広がるのだった。


「教えてくれ、羽澄」


登場人物

平民夫婦(大工):トリガ・アウレ(夫)

         リウス(妻)

職人ギルドマスター:ヴェル


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