第二話 二十二文字の大恋愛
「家出したママは、パパに一目惚れして結婚したの」
「……それ、句読点抜けば二十二文字もないけど? 終わり?」
「終わり」
「はあぁぁ?」
全く何も説明されていない昔話に、羽澄はかなり呆れた。
「うふふ、怒ってる羽澄ちゃんかわいいっ」
「いい加減にして母ちゃん」
「イヤー、ママって呼んで!!」
「じゃあふざけてないで、私職探しに忙しいんだから」
完全にあきれた羽澄は、求人情報に視線を戻す。
「ちょっとふざけただけじゃなーい、パパに似て冗談が通じないんだからー…まあ、そういうところが好きなんだけどっ」
全く話が進まないミロルだが、一通りのろけたあとに、まじめな口調で話し始めた。
「これは冗談じゃないんだけど、ママがいた異世界は、魔法が中心、魔法がどれだけ使えるかで、次期国王が決まると言っても過言ではなかったの」
「はぁ」
「ママね、最初回復魔法しか使えなかったの」
「え、回復魔法だけでいいんじゃないの?」
「まあ羽澄ちゃんは回復好きそうよね……でも王族としては致命的」
遠い目をしながら「魔力は普通にあったんだけどねー」と呟く姿は哀愁が漂っている。
「三人兄弟の中で落ちこぼれはママだけ、長男と長女は魔力が高く、使える魔法も多いの。
勉強をして色々な知識を得ても、認められることはなかったわ」
そんな兄弟に囲まれて、ミロルは冷遇を受けていた。
親はミロルに興味がなく、家臣たちも冷たい。
日々、城から逃げたいと思っていたある日、一つだけ使える魔法が発見された。
「ママがもう一つ魔法使える事が分かったの、それがこの世界に転移する魔法……気がついたら真っ先に家出したのよね。
訳も分からず転移して、この世界にたどり着いたの」
今までとは全く違う景色……ミロルにとっては、ここが異世界だった。
「見たこともない服着た人たちが歩いてる。
突っ立っているだけの私に、いろんな人にぶつかっては舌打ちされ、最終的には突き飛ばされたんだけど」
『大丈夫?』
「って手を差し伸べて、声をかけてくれたのが、まだ大学生だったパパなの! まるで王子様だったわぁ。
そのお姿がもう、一目惚れせずにはいられなくてぇ」
体をくねらせて、またものろけ始めるミロル。
その話は説明されても意味が分からなかった。
「え、っと、パパは、それ知っているの? その、おひめ、様?」
「知っているわ! お城まで連れて行って顔合わせしているから」
「はぁ?」
「まあ、お父様に激怒されて、結局駆け落ちしたんだけどね……でもでもっ、今のサラリーマン姿のパパもかっこいいから、駆け落ちしても幸せなのー」
やはりついていけない羽澄は、頭がはてなだらけだったのだが。
「とは言っても、ちょっと前から異世界には帰っててね。ママが生まれた国じゃなくて隣国のリューゲル国って言うんだけどね」
羽澄に構わず喋り続けていたミロルだったが。
「……話に、ついてこれてる?」
「いや、ついていけるわけなくない? え、魔法が強い異世界って何? お姫様って何―!?」
完全に取り乱している羽澄だが、ミロルはどこ吹く風だ。
「じゃあ、これを見て」
そう言ってミロルが出したのは一枚の写真。
「……これって」
「異世界で撮った写真、記念に撮ってきたの」
複数枚の写真、そこには若い両親の姿。
背景には洋風の大きなお城が建っているものや、角が生えたウサギなど見たことない動物と一緒に撮っている写真もあった。
「全部異世界で撮った写真よ」
「……本気で言ってる?」
「まあまあ、まずは一緒に異世界に行きましょう、就職先もそっちで紹介するから」
「はあ?」
全く意味が分からない母親の発言に、羽澄はぽかーんと、間抜けな顔をしていたが。
ミロルに手を引かれるまま、ついていくしかなかった。




