表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
巨乳が価値のない世界へ――セクハラに疲れ、看護師を辞めて、異世界で整骨院を開業する  作者: 橋守 六花
第一章 聖骨院開業編 〜偽りの王子〜

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
19/55

第十九話 聖癒布誕生――価値の証明

「もう二週間で、ここまで来たんだ……」


 今日の準備中に呟いた羽澄の言葉に、二人は驚きの声を上げた。


「あら、時が経つのは早いわねー」

「いや、俺は長く感じた……色々ありすぎだ」


 そう言いながらも、コルヴァンの表情は充実している。


「ありがたいことに、繁盛しているしね」

「そうだな、平民の患者もだんだん増え、元騎士たちの支援も広がっているのが何より嬉しい」

「それは俺のおかげじゃない?」


 突然声が聞こえ、そちらを振り向くとフードとマスクを付けたルバが背後にいた。

 彼は自分の部下と一緒に、元騎士たちの支援も続けている。


「また一人でいらしたんですか?」

「うん、シコウを撒いてきた」

「シコウさん……かわいそう」


 羽澄の哀れむ声も気にせず、ルバはここ最近恒例となっている依頼を羽澄にぶつけた。


「暇なんですか? よくここに来てますけど」

「まあ、自分の出来ることはしてから来てるよ。

 兄上が優秀だから、俺がいないほうが仕事が捗るだろうし」

「ご実家が商売しているとかですか?」

「あー、まぁそんなとこ……それより今日こそ、先生と二人っきりの、念入りな診察をお願いしたいんだけど」

「今日も明日もそんな診察はしません」


 シュバとロガモを治療してからというもの、何が気に入ったのかちょくちょく聖骨院にくるようになったルバ。


「といいますか、今日の聖骨院はお休みですよ」

「知ってる、どこ行くの? そんな格好で」


 コルヴァンはいつも通り神父の服装だが、ミロルは緑を基調とした簡易的なドレス。

 羽澄は白いシャツに焦茶色のベスト、黒色のパンツスタイルだ。


「ギルド会議に、参加させていただけることになりまして」

「あー、なるほど」


 説明すると納得したような声を出し、それならと服装に口を出す。


「俺の瞳と同じ青色で谷間を見せつけるドレスがいいなぁ」

「またそんなこと言って……」

「とかいって、このズボン、コルヴァンが自分の瞳と同じ黒色を選んだとかではなく?」

「…………黒いズボンは無難なので、提案はしました」


 不自然な間はあったものの、理由としては何も違和感はない。


「前から思っていましたけど、ルバ様って、オヤジくさいですよね」

「……よくわからないけど、悪口言われているような気がする」

「わからないままの方がいいと思いますよ」


 助けにならないフォローをミロルから入れられ、複雑な表情をするルバだが。


「んー、まあ、今日は用事があってきたんだ」


 と、真面目な表情になる。


「明々後日、大事な仕事を依頼したい」

「大事な?」

「ああ、とある人の両足を治して欲しいんだ」

「両足、ですか」

「……」


 不思議そうな羽澄とミロルに対して、コルヴァンは驚くこともなく、少し険しい表情になる。


「治してくれれば前言ってた、城の書庫に招待するよ」

「それは、助かります」

「ただ治療日は、申し訳ないが休みはもちろん、誰も聖骨院に立ち入れないよう配慮して欲しい。

 そんなに簡単に話せることではないんでね」


 重々しい依頼、だが、返事は簡単だった。


「わかりました、お待ちしております」

「……それだけか?」

「はい、それだけです」


 今度はルバが不思議そうな表情になる。


「怪しいだろう、気にならないのか?」

「それだけ顔を隠している時点で怪しいです、怪我をされている方がいるなら、その怪我を治すだけ。

 それが私の役目です」


 覚悟ある声色に、ルバの表情は緩む。


「そうか、それならよろしく頼む……俺の診察も一緒に――」

「それはしません」


 断るところはちゃんと断りつつ、明々後日の貸切に了承する羽澄だった。



 コルヴァンが大きなカバンをもち、三人でギルド連合会館に入る。

 受付に案内された会議室に入ると、すでにトキアスとヴォルクスの姿があった。


「待っておったぞ、いつもの白衣ではないのだな」

「まあ最初ですし、ただでさえ新参者なので、服装だけでもきっちりしておかないと」

「やっぱりドレスはいいですね、張り切って三人お揃いのブローチ作っちゃいました」


 ミロルの言葉通り、羽澄が赤、コルヴァンが深い青、ミロルが黄色の宝石が付いた、雫型に後光をイメージしたブローチだ。


「ミロルさんはわしの宝石を、一番美しく使ってくれるから、作り甲斐があるのぉ」


 そのブローチを満足そうに眺めるヴォルクスは、すっかり肩がよくなり、調子がよさそうだ。


「そういえばトキアス様、体調の方はいかがですか?」

「ああ、おかげさまですっかり元気だよ」


 側から聞けば何気ない会話だが、夢酔草の蓄積毒が溜まっていたため、浄化に時間がかかっていた。


「定期的にコルヴァンが浄化しにきてくれていたからな、とても助かったよ」


(領主館に付き添ったっていってたよね、婚姻も解除をしに……)


 笑うトキアスに、羽澄はそう思いながら少し胸を痛めた。

 話が終わるとヴォルクスが口を開いた。


「わしと、トキアス様は職人と商人の代表として、いつも出させてもらっておる」

「そうなんですね、冒険者代表の方も来られるんですか?」

「いや、冒険者から帰ってくるタイミングと、会議が重ならない限りは参加しない」


 そんな会話をしていると、奥のドアから三人入ってきた。


「待たせたね、みんな来てくれてありがとう」


 優しく笑いながら労うのはロウフ。

 白いシャツに黒いコートを羽織った白髪の男性と、紫色の体のラインがわかるドレスをきたドワーフの女性が入ってくる。


「聖骨院の店主は初めてだから自己紹介からだね。

 俺は商人ギルドマスターのロウフだよ」

「わしは冒険者ギルドマスターのアクロじゃ」

「私は職人ギルドマスターのヴェルよ、よろしくねぇ」


 ギルドマスターの迫力に圧倒されつつ、羽澄は丁寧に頭を下げる。


「聖骨院で治療をしています、羽澄と言います」


 そしてコルヴァンがロウフに銀貨が入った袋を渡す。


「ロウフさん、商人ギルドの入会金、分割分持ってきました」

「おー、やっぱり早いねぇ、どれどれ……確かに銀貨二十枚、あと二十枚だね、今月中に終わっちゃうかな」


 明るく笑うロウフの目は、楽しそうと言うよりギラギラと獣のように鋭い。

 それは今日羽澄たちが持ってきたものが原因だ。


「早速話を始めましょう、ロウフから話を聞いて、ぜひ話を聞きたいと思っていたのよ」

「そうだな、今日はブツを持ってきているんだろう?」


 他のマスターも同じく期待しているらしい。


(アクロさんが、迫力ある見た目しているから、ブツって言われると、そのスジの人かと思っちゃうな)


 一人そんなことを思いつつ、羽澄はコルヴァンに視線を送った。

 答えるようにテーブルにカバンを置く。


「こちらが、完成した癒しの貼布……総称して聖癒布せいゆふと名づけました」


 そう言いながら全員に五枚の聖癒布を渡していく。

 個包装されており、シートに種類が書いてあった。


「全て効果が違いますので、説明書をご覧ください」


【聖癒布 効果】


温癒布おんゆふ

 患部を温め、血行を促進し、筋肉のこわばりをほぐす

 使用例:肩こり/腰痛/冷え性/寒冷時

 効果時間:最大効果四時間/持続八時間(温感は最大十二時間)


冷癒布れいゆふ

 患部を冷やし、熱を引かせ、捻挫・打撲の初期対応に有効

 使用例:腫れ/転倒時/軽度外傷/暑熱時

 効果時間:最大効果四時間/持続八時間(冷感は最大十二時間)


鎮炎布ちんえんふ

 炎症を抑え、赤み・腫れ・痛みを同時に緩和

 使用例:魔法使用後の身体負担/筋肉炎症/慢性的な腫れ

 効果時間:最大効果四時間/持続八時間


鎮痛布ちんつうふ

 痛みを緩和する

 使用例:頭痛/神経痛/戦闘後の応急処置

 効果時間:最大効果三時間/持続六時間


再生布さいせいふ

 傷の治癒を促進し、体力の回復を補助する

 使用例:裂傷/切り傷/止血処置

 効果時間:傷の程度により変動(軽度で約三時間)回復補助は最大六時間


【使用方法】


 聖癒布には簡易誘導魔法が付与されています。

 シートを剥がし、貼付したい部位を唱えることで、最適な箇所へ自動で移動します。


【注意】


・開封後はジェルの粘着力が低下するため、速やかに使用してください

・未開封状態であれば、約一年間の保管が可能です

・時間が経つほど効果が薄れます、効果時間は目安です



「いやー、いいね、色々いいね」


 ワクワクした声で語彙力なく呟くロウフ、どうやらお気に召したらしい。


「早速使ってみたいわ、肩こりは回復魔法じゃ治らないのよねー。

 この温癒布でいいのかしら?」

「はい、この布はシートの上から切ることも可能です。

 切って両肩に使うこともできますし、片方だけ使って残りを保管することも可能です」

「あら、じゃあ両肩に作ってみようかしら」

「ただ、そのドレスだと肩に貼ると目立つので、家で貼るか見えない背中に貼る方がよろしいかと」

「確かに……背中で試してみるわ」


 羽澄の説明通り「背中」と唱えると、自動で二枚の聖癒布が移動する。

 そして貼られた背中に、じんわり温もりが広がっていく。


「あら、即効性なのね、背中が暖かくてほぐれる感じがするわ。

 それにこのシート、透明で初めて見るわね」

「これは独自のルートから仕入れているもので、詳しくはお話できません」

「あら、残念」


(貼り付け部分を保護するイメージで、現代から持ってきたシートだけど、魔法を通さず逃さないのがわかったんだよね)


「あーそれにしても気持ちいいわー」


 気持ちよさそうなヴェルの表情に、今度はヴォルクスが声を上げる。


「ほう、それならわしも羽澄嬢に治してもらってから調子はいいが、毎日ハンマーを振り続けると、肩がだるくてなぁ。

 これも温癒布か?」

「いえ、この場合は動かし続けた肩が熱を帯びているので、冷癒布ですね。

 切らずに肩から腕にかけて貼り付けるのがいいでしょう」

「わかった、では……」


 ヴォルクスもシートを剥がして、自動で聖癒布が貼り付く。


「これはこれは……ひんやりして気持ちいい、仕事終わりに使用したいな」


 その様子にうずうずしたアクロが、勢いよく立ち上がり、シャツをはだけさせ、右肩を曝け出す。


「ひっ」


 その姿が刺青を見せるヤクザにしか見えなくて、羽澄は思わず小さな悲鳴をあげた。

 しかし現れたのは生々しい傷。


「昨日魔物に不意打ちを喰らって噛まれてしまった、まだ回復魔法はかけていないが、この怪我は再生布で治るか?」

「あ、はっ、はい! そこまで深くないので、三時間ほどで治るかと……」

「ほう、それでは試してみよう」

「本当に魔物に噛まれた場合は、もっと時間がかかりますが」

「……ああん?」


 ギロリと睨まれ羽澄は固まり「ご、ごめんなさいっ」と、小さく呟いた。


「こらこらアクロ、羽澄君が怖がっているよ、ただでさえ怖い風貌なんだから、もうちょっと笑ってー」

「むう、ロウフが言うほど恐ろしい顔はしてないと思うが……」

「私たちは怖くないけどねー、普通のお嬢ちゃんからみれば、何人か殺しててもおかしくない風貌してるから。

ごめんねー、羽澄ちゃん」

「いえいえ、娘は露骨に危害を加える人には強いのですが、アクロ様のように色々、想像を掻き立てられる方は苦手と言いますか」

「ミロルちゃん、それなんのフォローにもなってないから……って言うかこんな大きな娘がいたのね、その若く見えるコツを知りたいわー」


 ヴェルの言葉に苦笑するミロル、そしてまだ怯えている羽澄。

 宥めるように優しい声で、ロウフが質問をする。


「それで羽澄君は、何故アクロの怪我が、魔物じゃないと思ったんだい?」

「あ、はい、魔物に【噛まれた】と言うには、綺麗な切り口だったので」

「ほう、日向の人間にしては、見込みあるな」

「すみません、すみません……ヤクザだけは勘弁してください」

「ああ? なんだヤクザって」

「ご、ごめんなさいっ」

「羽澄ちゃん落ち着いて、気持ちはわかるけど、落ち着いて」


 ミロルのフォローが入りつつ、話が脱線している。

 その様子を見ていたコルヴァンに、トキアスが肘で突く。


「ニヤケすぎだぞ」

「えっ、あ、そ、そうですか?」

「まあ、羽澄君があんなに怯えるのは珍しいからな」

「ですよね、なんか可愛い……」

「ほう」

「……そんなことは思っていません」

「その誤魔化し方は、無理があるな」


 鋭いツッコミに眉を顰めながらも、コルヴァンは顔が真っ赤になるのを止められない。

 そんな中、ロウフは冷静に、だけど楽しそうな声を発した。


「さて――次は俺の大好きな、お金の話でもしようか」


初登場

職人ギルドマスター:ヴェル

冒険者ギルドマスター:アクロ

登場人物

上司:ルバ

商人ギルドマスター:ロウフ

大富豪:ハルビア・トキアス

宝晶生成術兼鍛冶屋 大将:アルケミ・ヴォルクス(ドワーフ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ