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看護師の私、セクハラに疲れて異世界へ ~巨乳アンチの世界で夢の聖骨院開業、骨も人生も整えます~  作者: 橋守 六花


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第十話 距離が近すぎる施術の先で見えたもの

「二日間、弓は引かないで、背中に痛みや呼吸に問題がなければ、運動や訓練などなど再開しても大丈夫です」

「はい、ぐずっ、色々お恥ずかしい姿を見せて、ずびばせん」


 落ち着いて来たシコウは、恥ずかしそうに濡れたタオルをコルヴァンへ渡していた。


「本当に、くずっ、治ったん、だなっ」

「そうですね、次はテリクスさん、の治療なので……泣き止んでくださいー」

「うぅ、シコウ、よかっだ、よがっだなー」


 今はシコウよりも、テリクスの方が大泣きしている。

 妻のアルケもうるっとしている中、息子のオプだけが「いたいいたい?」と、不思議そうに聞いている。


「パパはね、これから痛くなくなるんだよ」

「そっかー」


 微笑ましいやり取りを聞きつつ、羽澄は次の施術に取り掛かる。


「それではテリクスさん、始めますよ」

「ずびっ、お願いします」


 鼻を啜りながら涙を堪えるテリクス、座っているテリクスのふくらはぎに抱きつくように、密着して足を支える。


――むに


「は!?」


 そんな声を出したのはコルヴァンだった、ミロル以外はみんな驚いたようにその光景を見ている。

 抱きつかれたテリクスも驚きで涙が止まっている。


「ちょっ、羽澄、近すぎないか」

「遠かったら治療できないから」


 慌てるコルヴァンに、なんでもないように答える羽澄。

 そのやりとりにはたから見ていたアルケが「……治療、そうよね」と呟く。


「それじゃあ私がハイっと言ったら、少し痛みが走ります。そうしたらコルヴァンは股関節に回復魔法をかけて」


 一人羽澄だけ冷静に言いながら、少しずつ足を股関節側に押していく。


「ハイッ」


――ガコッ


「いっ」


 痛がるテリクスにコルヴァンが回復魔法をかける、そしてゆっくりと羽澄が力を抜いていき、体を離した。


「はい、次は膝の……え?」


(あれ……何でみんなそんな顔しているの?)


 少し微妙な顔をしている大人たち。

 その表情を不思議に思う羽澄に、ミロルだけ苦笑しているのだった。



――ブン、ブン


「振れるっ、現役のように、剣が振れる!」


 治療が終わり、治った事に感動しているテリクスを、アルケとオプが嬉しそうに見つめている。


「テリクスさんは今日からトレーニング等、体を動かして大丈夫です」

「おお、もういいのか、ありがとう」

「班長、本当に、よかった……よかった」

「おいシコウ、また泣くのか? ……お互い治って良かったな」

「はいっ」


 二人の会話に、にっこり微笑む羽澄だったが。


――ジー


(なんか、コルヴァンの視線が刺さるんだけど)


 苛立っているような、その中に困惑しているような、そんな視線。


(いくら治療だからって、あんなに、くっつかなくても……)


 そんなことを考えているなんて、当然わかるはずもなく。

 まったく理由がわからない羽澄だったが、今は患者たちと向き合う。


「先生、ありがとうございました!」

「俺のことも、シコウのことも……助けてくれてありがとうございます」

「主人がお世話になりました」

「あいがとっ」

「いいえ、とんでもないです。

 あと、怪我のあとは、すぐ回復魔法をかける事を広めてください」

「分かりました」

「ああ、必ず広めよう」


 この『回復魔法をすぐかける』お願い事は、施術を効果的に行うため、患者全員に伝えている。

 こうして全員からのお礼を受け取り、嬉しそうに帰っていく背中を見送った。



「羽澄、開店前に、少し話がある」


 なぜか妙に低い声でコルヴァンに言われ、羽澄は「へぇ?」と変な声が出た。


「え、何?」

「ふふっ、さあ?」


 ミロルが笑っていることも不思議だったが、コルヴァンの態度は意味不明だった。


 事務所に入るなりコルヴァンは、羽澄に物申す。


「あんまり、ああいうのは、良くないと思う。前から思っていたけど」

「ああいうの?」

「誰にでもやるのか」

「だから何が?」


 きょとんとした顔の羽澄は全くわかっていない、そんな彼女にわかってもらうにははっきりと言葉で伝えるしかない。


「えー、だから……その」


 かと言ってはっきりいうこともできず、コルヴァンがモゴモゴしていると。


「施術でおっぱいがくっつくのが気になるみたいよ」

「ぶふっ、み、ミロルさん!?」


 ミロルがあっさり代弁し、図星だったコルヴァンが慌ててしまう。


「はあ? しょうがないよ、施術なんだから」

「いや、まあ……」

「それにそんなこと思うのは、コルヴァンだけだって」

「それは、あの、でも」


 いつものコルヴァンとは違い、歯切れが悪い。次に口を開いたのはまたしてもミロルだった。


「そうでもないわよ、なによりテリクスさんの奥さんもいたわけだから、ちょっと配慮があってもいいかもね」

「配慮?」

「そう、例えば『体全体で足を押すため密着します、ご了承ください』とか、『施術の一環なので、ご理解いただけるとありがたいです』とか」

「……ふむ」

「あなたの師匠も、そういうこと言ってなかったっけ?」

「ああ」


 言われて思い出すのは、幼い自分を助けてくれた女施術師。

 羽澄が柔道整復師の資格を取った後、師匠となって色々教えてくれたのも彼女だった。

 その師匠が初診の患者に『こんな婆さんにくっつかれても嬉しくないだろうけど、我慢してくれよ』と言っていたのも、配慮の一つだ。


「なるほど、確かに私は配慮も何もなかったかも。

 コルヴァン、ママ、教えてくれてありがとう。

 気をつけるね」

「いいのよー」

「……まあ、そういうことで」


 にこにこのミロルに対して、まだ腑に落ちない表情のコルヴァンだったが、ふとまじめな顔でもう一つ指摘した。


「あと、シコウの施術中、何か考え事していたな……俺の足を治した時も思ったが、何かあったのか?」

「あー、あれか。あれね……」


 痛いところを突かれた指摘に、今度は羽澄が口ごもる。

 施術中に見た二人…いや、テリクスも併せて三人の過去。


(不可抗力とはいえ、怪我をした瞬間を知られていい気はしないだろうし……)


 そう思い悩んでいると。


「もしかして、俺の足は臭くなかったのでは?」

「あ、気になってたのそこ?」

「コルヴァンもお年頃なのね」


 そんな事を言い合って、空気が和やかになったものの、羽澄にとっても謎が残る。


(みんな対等だもん、同じ目線になるためにも、伝えた方がいいか……)


 伝える決心を固め、真っ先にコルヴァンに謝る。


「ごめん、コルヴァンの足は臭くない」

「やっぱり、よかった……」

「ただ、足の怪我をした瞬間が私の頭に流れ込んで……コルヴァンの場合は女の人が、足を踏みつけた瞬間が、見えたの」


 臭い事を気にしていたコルヴァンとしてはほっとしたが、さらに思わぬ事を言われ息を飲む。


「シコウさんの時も、怪我した瞬間が見えた……毎回ではないみたいだけど」

「今まで見えたのは2回ってことか?」


 コルヴァンの質問にこくりと頷く、今度はミロルが口を挟む。


「過去に触れる魔法…そういえば、私のひいおばあちゃんが、その魔法使えた、かも」


 まだはっきりとした事は言えないし、羽澄自身が魔法を使えるなんて信じられなかった。


「私が、魔法? いやいや、そんなわけ……」

「あるかもしれないわね、私の血を半分引いているなら……魔法を使える可能性は、全然あるわ」


 血が半分異世界、羽澄には回復魔法だけ効く、となれば一つ魔法が使えてもおかしくない。


「少し、怖いな」


 羽澄自身は身震いしながら呟く、過去を見る魔法と言われれば一番しっくりも来る。


「この件に関しては他言無用にしましょう。

 もし同じ事が起きたら、一人で抱えず教えて」

「ああ、羽澄は一人で悩むな、できることは少ないかもしれないが、必ず力になるから。

 魔法に関しては、いったんは様子見でいこう」

「じゃあ、今日はこのまま開店しようか」


 謎は残ったままだが、全員同じ方向を向けたような気がして、安心感を持つことが出来た羽澄だった。


(それに、怪我だけじゃない……この力、もっと深いところまで見えてしまうのかもしれない)


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