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居眠り伯と万能の天才公爵  作者: 中里勇史
敵は天才公爵

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49/53

逃走

副伯(フォロブロン)、騎兵が追って来ます」


「やはり見逃してはくれぬか」


「歩兵を連れたままでは逃げ切れません。副伯だけでも先に」


「家臣を見捨てていく訳にはいかん」


「主君を逃がすために盾になるのが家臣の務めですぞ」


 フォロブロンとヨーレントの押し問答を黙って聞いていたウレスペイルは、やれやれと言いたげな顔でため息をつくと、叫んだ。


「まったく、観念論に縛られた面倒な主君を持つと苦労する。ごちゃごちゃおっしゃっている時間があったらさっさと逃げませい!」


 目を丸くしているフォロブロンを無視して、ウレスペイルは自分の鞭でフォロブロンの馬の尻を力いっぱいたたいた。


「ヨーレント卿、副伯は貴公に預ける。兵たちは私がもらっていく」


 ウレスペイルは、軍勢を停止させて後ろを振り返った。

 追って来ている敵騎兵の数はそれほど多くない。この騎兵でこちらの足を止めている間に本隊で圧倒するつもりだろう。逆に、ここで敵の本隊をわずかでも足止めできればフォロブロンが逃げる時間を作ることができる。


「皆々様! ナインバッフ公(ケルヴァーロ)を騙し打ちにした不逞な反逆者のツラを見物していきましょうぞ!」


 エグバーレントは、片側を岩場、片側を森に守られた街道に布陣した皇帝軍を見て騎兵たちを停止させた。

 長槍を構えた歩兵を最前列に並べている。騎兵にとっては非常に不利な体勢である。


 エグバーレントは、方針を速断した。


「よし、このまま本隊が到着するのを待つ」


「何もしないのですか」


「しない」


「しかし……」


「我々の任務は、本隊が到着するまでの足止めだ。ほら、足止めできているではないか」


「この間に、アレス副伯が逃げてしまうのでは?」


「だろうな。だが、敵より少ない騎兵であの槍ぶすまを突破できると思うのか? 貴重な騎兵を無意味に損なう訳にはいかん」


 しばらくして、ニークリット公国軍本隊が到着した。ソルドマイエ二世は、皇帝軍が隘路に布陣している様子を見て状況を把握した。


 ソルドマイエ二世は傭兵部隊を前面に出した。

 傭兵たちは矢戦を仕掛けて敵を牽制しつつ、革と紐で作った投石機を使って油壺を投擲した。


 油壺は盾で簡単に防がれたが、油をまき散らしながら燃え上がり、これを初めて経験する皇帝軍を混乱に陥れた。


「ようし、我らの出番だ」


 エグバーレントは騎兵たちに突撃を命じた。

 各所で発生した炎に混乱して槍ぶすまが乱れたところに騎兵突撃を受け、皇帝軍の歩兵の戦列は大いに乱された。そこへ傭兵部隊が攻め込んだことで、皇帝軍は潰走状態に陥った。


 エグバーレントはすかさず追撃し、皇帝軍は次々に討ち取られていった。


 ウレスペイルは、エグバーレント隊の突撃に抗しきれず深手を負った。落馬しながら、あまり時間を稼げなかったことを悔いた。フォロブロンを案じ、逃げ切れるようにと祈った。


 激しく地面にたたきつけられた。

 そこに傭兵隊が殺到して、討ち取られた――。


 エグバーレントはそのままフォロブロンの追跡に入った。五騎ずつ並走する隊列を組むことで、後列は風の抵抗をあまり受けずに走ることができる。先頭の速度が落ちてきたら、先頭は後ろに下がって二列目が先頭になる。


「騎兵の追いかけっこってのはね、数が多い方が有利なんですよ副伯」


 そして、西に向かって走る数騎の騎兵の背後を捉えた。


「目標、発見」


 エグバーレントは、哀れむような顔をした。

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