# 90 訓練施設の強化 その1
レイが天ちゃんと一緒に訓練場に入ってくれるとは思っていなかったので実はちょっと驚いた。今日は天ちゃんに使い方を説明しつつ一緒に遊ぶ感じかな〜なんて思ってたのだ。レイの目が「感謝しなさいよ」って言ってる気がした……
私は自分の訓練施設へと入る。それぞれの性能を確かめつつ設定を少し変更して試し打ちを続ける
うん。イージーモードのシューティングゲームな感じだね。スコアが出ないからうち漏らしたクレーがあるか分からなのがちょっと残念。うーん……もう少し難易度が上がるように……
私は追加設定でクレーの動きが不規則になるモードを追加した。試し打ちをしてみてただ真っ直ぐ進むだけより少し難易度が上がった。よしよし! みんなの所にもこれを追加しよう
そして本題……私はこの施設で試したい事を実行する事にする
マジカルスティックを握りしめ集中する……杖を剣に変化させる
「よっし!! 『勇者の剣』」
私の内にある強い武器はこれまでにやり込んだゲームのイメージから作られている。こんな事になるのならお兄ちゃん達がやっていた色んなゲームの武器も覚えておくべきだった……多分私の知っている武器より強いと思う……銃だって色んなタイプの物があったよね……む〜……イメージ出来ない物は作れない! 魔法の世界は便利だけど融通が効かない面もある事を痛感する。ないものは無い……か……仕方ないよね
さてさて私専用……基、前衛用の訓練施設の設定をポチポチと入力する。よし、スタート! 私は剣を握りしめてフィールドの真ん中に立った
1番から発射されたクレーが私に向かって飛んで来る。私は構えた剣で攻撃を繰り出す。見事にクレーは真っ二つに斬られて消失した。……ふぅ……ちょっと怖いし不安も一杯だったけど上手く攻撃出来たと思う。とりあえず……成功だね
今の所、私たちは魔法攻撃を得意とする者が多い。魔物との戦闘にはやっぱり前衛で直接攻撃出来る人も必要だよね。なんて考えてこのシステムを思いついた
基本的にはセバスチャンに前衛担当をして欲しいと思ってるけど、ステータス的には私も十分前に立って戦えると思う。ただ経験が圧倒的に足りてないだけで……
だからまずは身体で覚えたいと思う。魔法もイメージだけど戦い全般……全てがイメージ……想いに直結してるんじゃないかなって思うのだ
私は思いつくままに設定を入力してあれこれ試してから部屋を出た
部屋から出ると天ちゃんとレイが目の前に居た
「わっ、びっくりした〜。どうしたの2人とも? 休憩中?」
「天の暴走が止まらないのよっ! 何とかしなさいよっ!」レイがプンプンしている。あ〜天ちゃん楽しそうにしてたからな〜
「天ちゃん? レイのいう事聞けなかったの? レイが困ってるよ?」天ちゃんを撫でながら問いかける
《ごめんなさい……ボク……楽しくって……もっと遊びたかったの……ごめんね……レイ……》
「……ったく……天もだけどサクラもよ。中に入ったら連絡も出来ないじゃない。緊急の時はどうするのよっ!」あうっ……そこまで考えてなかった……
「ご、ごめん……確かに……そうだね……えっと……インターフォンみたいなのを付けた方が良いかな?」そう言いながら入口のプレートにチャイムボタンを付ける
「直線的な動きとは別に不規則にクレーが動くモードを付け加えようと思うの。それとみんなに……ん? あ〜シェリーとセバスチャンはまだ中?」
シェリーとセバスチャンの部屋のプレートにもチャイムボタンを付けてまずはシェリーの部屋のチャイムをポチっと押す。ピーンポーン……「はいっ!」シェリーの慌てた様な声が返って来る
「シェリー? 出て来てくれるかな?」
「か、畏まりました」出て来たシェリーはなんだか疲労困憊気味な顔をしている
「シェリー……凄く疲れた顔してる……大丈夫?」
「はい。大丈夫です。問題ございません」全然大丈夫そうじゃないんだけど……
「休憩っ。今日はこの辺にしておこう?」
「わ、ワタクシでしたら大丈夫です。まだやれます」シェリーが気丈に訴える
「うん。でも最初からいきなり詰め込み過ぎるのも良くないと思うんだ……自分のペースを見つけながら進めよう? ねっ?」
「……はい。承知致しました」承知してないっぽいけど……
「効率良く訓練するにはどうすれば良いか! 計画立てなきゃ、ねっ?」シェリーが一瞬ハッとした表情を浮かべつついつもの穏やかな笑みが戻り「承知致しました」と頷いた
「よっし! 今日はこの位で切り上げよう? 部屋に戻ろう?!」
みんなを促して、セバスチャンにも声を掛けておかないとね。と、インターフォンを鳴らし「セバスチャン、今日はこれくらいにするから。セバスチャンも程よい所で切り上げてね」と声を掛ける
「承知致しました」返事が返って来たが、少し息が上がってるんじゃない? なんて思ってしまったんだけど大丈夫かな?
「動いたからお腹すいたな〜何かあるかな〜」そう言いながら冷蔵庫を開ける
「あっ、なんだか美味しそうなスイーツが冷やしてある〜」冷蔵庫に手を突っ込むかけた所で「サクラ様、まずは手を洗って来てくださいませ」とシェリーにピシャリと言われた
「……はいっ! ごめんなさい。行ってきます」コソコソと洗面所に向かう。天ちゃんとレイも付いてきた
セバスチャンはまだ戻って来ないので私たちだけでおやつを頂くことにした。シェリーが紅茶
入れてくれる。温かい飲み物ってなんだかホッとする。一口で身体も心も温まる気がした。疲れた感覚は無いけど、やっぱり心身共に緊張してたのかな……そんな事を思いながらティーカップを置いた
「シェリーの入れてくれる飲み物はホント癒されるね。自分でも気付かない疲れを取ってくれるよ。私もまだまだ訓練出来そうな気がしてたけどやっぱり疲れてたみたい。シェリー、ありがとう」
シェリーが驚いた様に目を見開いた後、破顔した。「ありがとうございます。ワタクシにはそのお言葉が何よりの癒しでございます」
私たちはほっこりしながらおやつタイムを過ごした
セバスチャンはまだ戻って来ない……
――つづく――




