# 88 新しい武器 訓練 その2
杖での魔法を練習しているとシェリー・セバスチャンが戻っ来た
「ふたり共もう研究は良いの?」
「はい。一通り確認しましたので試し打ちをしてみようと思います」セバスチャンはやる気満々な感じでシェリーは不安の方が大きそうな表情だ
「私も試してみたけど、重要なのは『イメージ』かな。どんな魔法を打ち出したいのかはっきりさせれば思った通りの魔法が発動するから。やってみて」
「はい……」シェリーはやっぱり少し元気がない……かな?
「大丈夫だよ、シェリー。最初から上手く出来なくて当たり前なんだから。試行錯誤しながら上達していけば良いんだよ。その為の訓練場なんだから。ねっ?」
「……ありがとうございます……サクラ様……ワタクシ、頑張ります」シェリーが意を決した様なキッとした顔をする
「シェリー、リラックスリラックス」
「は、はい」余計緊張させちゃったかな?
「では、私から……」セバスチャンが銃を構える。なかなか様になっててカッコ良い
放たれた魔力の弾丸は勢いよく的に向かって飛んで行き、少し手前で消失した
「おや、届きませんでしたね……ではもう一度」
今度は綺麗に的のど真ん中を射抜いた。って言っても的に当たった瞬間吸い込まれる様に消えるんだけどね……
「なるほど……分かりました。距離と魔力量……ですか……。そして魔物の強さ……これらを計算して魔力量、どの属性を使うか……効率的な戦闘を組み立てる必要がありますね」
セバスチャンはひとり納得した様に頷く
「シェリーもやってみて?」シェリーは頷き銃を構える。うん、やっぱりカッコ良い
シェリーが放った弾丸もセバスチャンと同じで途中で消失する。項垂れるシェリー……
「そんな落ち込まないで? 込める魔力量は繰り返し練習して覚えて行くしかないからね」
「はい。もう一度やってみます」
次に放った魔力の弾丸は距離は十分だった様だが着弾は的から外れていた……うーん……銃には追尾効果を付けたから的には当たるはずなんだけど……
「シェリー、照準をしっかり合わせて。ロックオン!!よ。頑張って」
「はい。照準を……ロックオン」放たれた魔力の弾丸は見事的のど真ん中に吸い込まれた
「出来た……」
「やったね、シェリー。今の感じだよ。あとは慣れだろうから練習しよ」
「はい」やっとシェリーに笑顔が戻った。良かった……
「色々試したけどイメージとロックオン、これに尽きると思うよ」私はそんな風に説明してこれまで試した魔法を発動してみせる
「凄い……」シェリーは絶句
「ほぉ〜これはこれは……」セバスチャンの表情は今ひとつ読めないけど、とりあえずは認めてくれてるんだよ……ね?
「サクラ様は銃ではなく杖の方を使われるのですか?」放心状態から抜け出したシェリーが尋ねて来る
「うん。杖の方がしっくりくるの」
「そうなのですか……」シェリーは手に握られた銃を見つめる
「シェリーは練習すれば拳銃が馴染んで来ると思うよ。元々シェリーの為に作った物だから。私は便乗して試してみただけ」
「ワタクシの為……ですか?」
「うん。シェリーは杖とかより銃の方が扱いやすいと思うから」私の言葉に一びっくりした様な表情を浮かべたシェリーだったけど本当に一瞬でキリリとやる気満々の顔に変わった
「練習致します」シェリーは宣言して的と向かい合う。なんかスイッチ入った?
「ねぇ、セバスチャン。的って設置する場所とか大きさを変えたり出来る? ついでに動いたりとか……」
「……可能です!」目がキラキラしてる? なんか嬉しそう?
「少々お待ち下さい」そう言うとセバスチャンは新しい空間を創り出す
「おぉ〜」
草むらから的……若干人型? が出たり引っ込んだり横移動したりしている……演習場? みたいな空間が広がっている
「先程シェリーに見せて頂いた資料にこの様な場所がございましたので再現してみました」ちょっとドヤ顔のセバスチャンがなんか新鮮だ
「ありがとう! うんうん。良い感じだね。動く的でも試してみたかったの。ドンピシャよ、セバスチャン。ありがとう」
「御要望に応える事が出来て幸いです。ではお嬢様はこちらでお試し下さい。私はもう少しあちらで練習を……」そう言ってセバスチャンはシェリーが黙々と練習している射撃スペースへと向かった
ひとりになった私は的の動きに合わせて魔法を繰り出す練習と、『追尾効果』がどこまで機能するのかを試した
結果は上々だった。しっかりロックオンされた的にはどんな風に魔法を発動しても的を目掛けて軌道修正してくれる。逆にロックオンが甘いと上手く追尾出来ずに他の場所に着弾したり消滅したりした
「私の創造魔法! なかなか凄いじゃん!」自画自賛……
欲を言えばもっと複雑な動きをする物が欲しいな……もっと素早い動き……あっ! そうだ!
ふたりの邪魔をしない様にそっと近づき一段落するのを待つ。シェリーが私に気付き小走りにやって来る
「サクラ様、どうされましたか? 休憩でしょうか?」
「ううん。そうじゃなくて……あ〜でもそろそろ休憩も入れた方が良いかな?」まだ休みたい訳じゃないけど私が休まないとふたりも休めないよね……
「皆を呼んで参ります」
「天ちゃ〜ん、レイ〜」シェリーが遠くで遊ぶふたりを呼んでいる「オヤツですよ〜」シェリーの呼び掛けに天ちゃんが猛スピードで戻って来る。ふふっオヤツの威力は大きいなぁ〜。シェリーの声を聞いてセバスチャンも戻って来た
「休憩を入れられるのですか?」いつも通りのポーカーフェイスなセバスチャンだ。私だったらきっと(まだやりたいのに〜)なんて顔に出そうだけどね……
「うん。天ちゃんも飽きちゃったみたいだし少し休憩挟んでも良いかなって。慣れない事をするのも思ってる以上に負担が掛かるものでしょう?」
「そうですね……では何か作って持って参ります。東屋で召し上がりますか?」セバスチャンが視線をお庭の東屋に移す
「うん。お願い。楽しみに待ってるね」うふっ。セバスチャンのお料理はどれもサイコーに美味しいのよね〜。今日のオヤツは何かな〜
「天ちゃ〜ん、お部屋に戻って手を洗ってこようか。今日はお庭でオヤツだよ」
《はーい。レイも一緒に行こう》
「はぁ……ったく……はいはい……なんでアタシが……」レイはぶつくさ言いながらも天ちゃんの相手をしてくれている。本当に良い子だね
「サクラ様、ワタクシもセバスチャンを手伝って参ります」シェリーは私にそう告げて一礼した後足早にキッチンへ向かった
思いがけずオヤツタイムになってしまったけど……まぁ食べながら話せば良いか……
天ちゃんと一緒に洗面所で手を洗いお庭の東屋に移動した
――つづく――




