# 85 装備を整えよう
鍛錬の森の復活の通達は頃合を見てからという事になった。今はまだ国作りの真っ只中で優先すべき事が他に沢山あるからだ。
私たちの旅……最初の目的地は『鍛錬の森』になった。『鍛錬の森』イコール『迷いの森』なのだからまだフォレストグランから出てないんだけどね……
修行もだけど、旅をするとなるとそれなりの装備も必要になる。それぞれに武器や防具を用意した方が良いよね……
「ねぇ、みんなはどんな装備が必要? 町のお店に行ってみる?」
「装備……でございますか?」シェリーが不思議そうな顔をする
「うん。鍛錬の森に入るでしょう? 武器や防具がないと戦えないかなって思って」
私の言葉にシェリーがハッと息を呑む。あれ?
「そうでございますね……戦うのですから武器は必要でございます……」目が泳いでるなぁ〜。そりゃそうだよね……戦闘経験はないんだし怖いよね……
「シェリーには後方支援……って言うか指示役と補助系の魔法メインでお願いしたいと思ってるんだけど身を守る術もとりあえずあった方が良いでしょう? 」
「防具に関しては必要ないと思われます」セバスチャンが言う
「えっ? 防具要らないの? どうして?」
「この身体……お嬢様が作られたフィギアの防御力もさることながら、このコスチュームも優秀です。どの様な素材で出来ているのか不思議に思っているのですが、物理攻撃も魔法攻撃も高価な防具より防いでくれるでしょう」
「へぇ〜そうなんだ……」確かにフィギアを作る時にモデルにしようとしたキャラたち……バトルもののキャラの服はどんだけ頑丈なんだろう……なんて事を思い、この子の服も一見普通のお洋服だけど性能は……ふふんっ。なんて考えながら作ったけどさ……まさかまんま再現されてるとは……
「そっか。じゃあ防具はなくても大丈夫なのね……戦闘時はシェリーに補助系の魔法を掛けてもらえば更に強化されて良いかもね」
「……頑張ります……」
「大丈夫だよ、シェリー。私も最初は怖くてたまらなかったけど……いや、今でも戦うのは怖いけどさ。経験を重ねて少しずつ強くなって行こう。一緒にね」
「はい……あの……サクラ様も怖いのですか?」
「もちろんだよっ! 戦う必要が無いのが良いと思ってるよ?」
「そうなのですか……サクラ様は鍛錬の森での修行にも積極的なご様子ですし、ダンジョンにも興味を示しておられましたので戦う事に躊躇いはないのかと……」
うっ……もしかして私はバトルマニアだと思われてるの?
「ち、違うよ。私は今まで戦いとは無縁な世界に居たから戦闘経験なんて皆無だし……怖いよ。死ぬほど怖かったよ。だから……だから強くなりたいって思ったのかも。『怖い』って気持ちはなくならないと思うしなくしちゃいけないんじゃないかなって思ってる。この世界は魔物かいる事が当たり前の世界で……私には魔物と戦える能力がある……だから私は私に出来る事をしたいと思ったの。でも今の私には経験が足りないから……とりあえず少しでも戦闘の感覚? そういうのを身に付けたいって思ってるの」まぁ……ダンジョンには確かに惹かれてるけどさ……だってダンジョンだよ〜。ゲームした事のある人なら心躍るでしょ? いや……リアルに存在するダンジョンは別……なの? 私はやっぱりバトルマニア……なのかな……う〜っ……とりあえずこの件は置いておこう……
「えっと……じゃあ武器は? 武器はどう?」
「サクラ様は杖をお作りでしたよね?」
「あっうん。気付いてた? やっと完成したの」あれこれ悩んで作った魔法の杖……マジカルスティック
「見てくれる?」
「もちろんでございます。完成を楽しみにしておりました」シェリーが優しい言葉を掛けてくれる。くぅ〜嬉しい
「これが私の魔法の杖、マジカルスティックよ」魔法の杖を取り出す
「一応伸縮自在なの。指揮棒サイズから錫杖サイズまで」そう説明しながら長さを変化させる
「とても綺麗な魔法の杖ですね」
「その色は属性でしょうか?」セバスチャンが側に来る
「そうなの。全属性の魔力を込めてるの。で、それぞれの属性カラーを入れ込んだの。魔法を発動するとその魔法属性一色になるんだけどね。そして杖の先端には桜の花をモチーフにした飾りを付けてみました」
「可愛らしいですね。サクラ様にピッタリの魔法の杖だと思います」
「ありがとうシェリー。この杖はね、変形もするのよ」杖を両手で握りしめて杖を剣に変化させる
「このまま普通に剣として攻撃も出来るけど、魔力を纏わせて斬撃を飛ばす事も出来るのよ」
「それは素晴らしいです。遠近両方の攻撃が可能という事ですね」セバスチャンが感心した様に頷いている
「ありがとう。実践で上手く使える様にならなきゃなんだけどね」ふふっ、概ね好評で嬉しいなぁ〜
「でねっ、シェリー用の武器も考えて作ってみたんだけど……」
「じゃーん!!どう? どう? 凄くない?」
「サ、サクラ様……それは……」シェリーが絶句する
「そちらはどの様な武器なのでしょうか?」セバスチャンは興味津々な様子だ
「シェリーのフィギア作る時にモデルにした綺麗なお姉さんの武器がこれなの。って言っても私も本物は見た事無いからイメージなんだけどね」シェリーのモデルのお姉さんはエロカッコ良い……って言うのは伏せておこう……
「それでね、相談なんだけど……」
「なんでしょう? なんなりと」セバスチャンがうやうやしくお辞儀する。……絵になるポーズだ……
「あのね、杖の方は実際に使えるか試してみたんだけど、こっちは部屋で使ってみるのが怖くてね……まだ試してないんだよね。広い場所で使ってみたいんだけど、どこか良い場所ないかな? あっ、被害とかが出ない様に結界とかは張るつもりだけど出来るだけ広い所が良いんだけど……」
「サクラ様、今部屋で杖を試したと仰いましたか?」
「えっ? うん。言った。試したよ?」
「なんて危険な事を……」微かな怒りの表情が一瞬浮かんだけどすぐに悲しげな顔になった
「えっと……ごめん……でもちゃんと周りに結界も張ったし、発動出来るかどうか試しただけだから……危険はなかったよ?」伏し目がちに窺うようにシェリーを見る
「ご無事でしたから良かったものの……出来れば……新しい事を試される時にはお声掛け頂きたいです……微力ではございますがお手伝い出来る事もあるかと存じますので」
「……うん……分かった……努力する……あ〜でも、もし何かあったらシェリー達を呼んでね。ってレイに頼んどいたよ」
「ふぅ……サクラ様? 何かあってからでは遅いのですよ?」
あっ……まずい……セバスチャンをそっと盗み見ると彼は穏やかに微笑んでいた……私は観念してシェリーのお説教を受け入れた
――つづく――




