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# 82 まずはレベル上げ

シェリーとセバスチャンが身体を持って、作業はトントン拍子で進んだ

いや〜、優秀な秘書と優秀な執事コンビは凄いっ!

納品予定分も在庫としてアイテムボックスに保存する分もハイスピードで積み上がって行った。アレクとアレスも手伝いに来てくれたりと賑やかしくも和気あいあいと良い雰囲気での作業だった。みんな積極的に動いてくれて、はかどった理由はそんな所にもあるのかもしれない


思ったより早く準備が終わったので私は町に繰り出して情報収集に精を出した

今回の旅の目的は基本観光……のつもりなので『お勧めスポット』を聞いて回ったのだ。そしてここではダイアナが大活躍してくれた。様々な情報を集めてるだけあって「この地方はこの人」「あの地方はあの人」と詳しく話を聞ける人達を紹介してくれたのだった

この国の出身者は本当にこの世界の色んな場所で活躍されていた……いや今現在も活躍されているらしい

「ここには誰それが居るから訪ねると良い」なんて情報まで貰えて紹介もして貰えた

沢山話が聞けて私は嬉しくて嬉しくて……感謝の気持ちで一杯だった

だけど……話を聞けた場所を全部巡ろうと思えばまさに『世界一周』って感じなので……厳選しないとね……


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


夕食後、見るともなしにシェリーがまとめてくれた色んな町の資料を眺めていた。お腹が一杯だと思考力も鈍るね……

「サクラ様、気になる場所はございましたか?」シェリーかグラスを私の前に置きながら聞いてきた

「うん? 何となく眺めてただけ……ありがとう! いただきま〜す」ストローを口にシェリーの入れてくれたドリンクを一口……「ん〜美味しい〜ちょっとボーッとしてたんだけど頭がスッキリするね」そう言ってチューチュー・ゴクゴクとグラスを空にした

「ご馳走様! 美味しかった〜」

「サクラ様……その様に一気に飲み干されるのは如何なものかと……」

「うっ……ごめん……でもちゃんと味わって飲んだよ? 美味しいからついゴクゴク行っちゃうんだよ?」上目遣いでそっとシェリーを見る……

「宜しいではありませんか。気持ちの良い飲みっぷりでしたよ」セバスチャンからのフォロー! ナイス!

「セバスチャンはサクラ様を甘やかし過ぎなのではありませんか?」

「貴女には負けますよ?」微笑みあっているふたりはなんだか良いムードなんだけど……時折ふたりの間に静かに火花が散っている様に見えるのは……やっぱり気のせいだよね?


「あのねっ、観光もなんだけど……レベル上げとかも早めにした方が良いかな? とか考えてるの。シェリーもセバスチャンもレベル1でしょう? ん〜レイもレベル1かな?」

「確かに……今後、戦いの中に身を置く事もあるでしょう……実践経験は必要ですね……スキルレベルだけは上昇していますが」セバスチャンが静かに頷く

「戦い……」シェリーの表情が強ばった

いつも冷静沈着だと思っていたシェリーだけど、身体を持って表情や仕草が分かる様になり、彼女の人柄……って言うのか? 初めの頃思っていたAI感はなく、実は可愛らしいキャラだという事が分かってきた。本人に言うと全力否定されそうなので自己完結しちゃってるんだけどね

「戦いって言ってもシェリーには危険が及ばないように頑張るから心配しないで。シェリーには後方から援護して貰う感じかな? だけどレベルは上げといた方が良いと思って」

「後方……いえっ、いけませんっ! ワタクシにはサクラ様をお守りすると言う使命がっ!」

「んっ? 後方から援護してくれるのも充分私を守ってくれると思うけど? シェリーの的確な分析・考察力で戦いがこっちのペースで進められるだろうし、援護系の魔法とか頼りになるでしょう? 傷付いたら治して欲しいしっ。ねっ?」

「そ、それは……」納得出来るけど納得出来ない……って顔?

「適材適所ですよ。前に出て戦う事が全てではありません。貴女には如何様に事を進めればお嬢様に危険が及ばないか、即座に指示を出せる様に尽力して頂きたいですね」

「それは……なかなかハードルが高くない? セバスチャン……」

「いいえ。彼女にはその能力が備わっておりますから。最大限の力を発揮する為にもレベル上げは必要です。もちろん私も同様です」

セバスチャンの言葉にキッと挑む様な眼差しで「畏まりました。精進致します」とシェリーが言った

「えっと……そんな気負わなくて大丈夫だよ。みんなで協力して頑張ろう? 仲間なんだから。ねっ?」なんか一瞬、凄く(すんごく)強くなったシェリーが見えた気がした


「レ、レベル上げって具体的にはどうすれば良いかな? 魔物が居そうな草原とか森とかに行く? 他の国のダンジョンとかはレベル1だと厳しいよね?」

「……」「……」

しばしの沈黙の後セバスチャンが口をひらいた

「心当たりはあります。……ノーム様にお伺いを立てなければ。ですが」

「ノーム様に?」

「はい。迷いの森は昔別名がありました。『鍛錬の森』と言いました。ノーム様の許可を得た者が修行を詰む為に森に入る事を許されるのです」

「鍛錬の森……」私の言葉にセバスチャンが頷く

「迷いの森はこの国から出ていく時には魔物には遭遇しません。ですが『鍛錬の為』森に入ると各自のレベルに見合った魔物が出現するのです。最初は弱い魔物……徐々に魔物のレベルも上がり、修行する者と同レベルそして強い魔物へと変化するのです。そうして短期間で己を鍛えて行く為の『鍛錬の森』なのです」

「凄いね……昔って事は今はその修行はしてないって事なの?」

「はい、精霊と人が親交を絶った時に喪失しました……復活させるにはノーム様の許可……お力が必要です」


――つづく――

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