# 81 旅立ちの前に その3
身体を持ったセバスチャン……つい見蕩れてしまっていたけど……
「えっと……もしかしてステータスとかスキルとかも私がイメージして作った感じになってるの?」
「はい、ステータスはかなり高いですね。ただしレベルは『1』です」
「あ〜私と同じだね。私もステータスは高いけどレベルは1からスタートだった。レベル上げしないと高度な魔法や技は使えないね」……レベル1かぁ〜私もついこの間の事なんだけど随分前の様な気がしちゃうな〜。戦闘以外の事をしててスキルレベルはアッという間に上がって行っちゃったけどね
「ねぇセバスチャン、スキルレベルもやっぱり『1』なの?」
「はい、スキルレベルも『1』ですね。こちらは日常関連のものもありますので日々上がって行くかと思います」
あれ? そう言えば言葉遣いがちょっとフランクになった気がする。身体を持って人間味がましたのかな? なんかちょっと嬉しい
「日常関連?」
「料理関連のスキルがいくつかありますのでお食事の用意でレベルアップすると思います。本日よりお食事の用意は私にお任せ下さい」そう言って恭しく頭を下げるセバスチャン。あ〜なんかとっても絵になってカッコ良い〜
「うんうん。強くて優しいコックさんだからね。更に執事のクオリティも加わったのかな? 最強だね! セバスチャンのお料理楽しみにしてるね。でもって食後はシェリーの美味しい飲み物、あ〜なんか倖せなお食事タイムが過ごせそう」なんかお腹空いて来ちゃうな〜
「シェリーの美味しい飲み物……」少し考える様なリアクションのセバスチャン。
「シェリーのフィギアもありますよね? この際ですからシェリーにも身体を持って貰うというのはいかがでしょうか?」
「えっ? シェリーに身体? …… そっか、セバスチャンに出来たんだからシェリーにも出来る? ……私ね、シェリーがフィギアに入れてもサイズがお人形さんでしょう? かえって動きづらくなるんじゃないかと思ってたのよね。セバスチャンみたいに等身大で、しかもフィギア感ゼロの人間と遜色ない身体になれるんだったら凄いよね。シェリー、どうかな?」私はワクワク期待に満ちた瞳をシェリーに向けた
「あの……ワタクシは……」言い淀むシェリー
「あっ……ごめん……この身体は私の趣味てんこ盛りだから……イヤだよね……シェリーの好みに作り直したら……それなら大丈夫? それとも……今のままの方が良い?」フィギアで実体化出来るなんて思ってなかったから本人の希望は聞いてなかった……今更だけど後悔&反省……
「違うのです、サクラ様……このフィギアはサクラ様がワタクシをイメージして作って下さった姿ですから……不満など微塵もございません。ただ……」
「ただ?」なんだろう? 何がシェリーを不安にさせてるのかな?
「シェリー、大丈夫ですよ」セバスチャンが優しくシェリーに声を掛ける
「お嬢様がシェリーにこの身体を。そう許可を出されたのですから」
「……許可? ……許可が出たって……」シェリーがハッとした様にセバスチャンを見た
「ね? 今なら……身体を持つ事が出来ますよ?」セバスチャンが軽くウインクした〜!!え〜っ!!なに? なにっ? ウインクってっ! この流れはなんなの〜?!ひとり静かに悶えた……
「サクラ様……ありがとうございます。ワタクシも人の身体を持つ事で……今まで叶わなかった沢山の事が……あ……ありがとうございます……」言葉に詰まる様に話すシェリー。感極まってるって感じ? よく分からないけど……身体を持つ事はOKなのね?
「えっと……このフィギアで大丈夫? 作り直しても」
「いえっ! この身体をワタクシにお与え下さい」私の言葉を遮る意を決した様なシェリーの勢いにちょっと怯む。なんかいつものシェリーと違う……
「……う、うん……シェリーが良いなら……」
「天ちゃん、ワタクシのフィギアを出して貰えますか?」
《うん。ちょっと待ってね》天ちゃんからシェリーのフィギアが出てくる
「では早速……」シェリーが気持ちを集中させてる? セバスチャンの時の様にシェリーがほのかに輝いた
そしてシェリーのフィギアが輝き始め、徐々に大きくなり等身大のシェリーになった
「シェリー? どう?」今までより高い位置にあるシェリーの瞳を見つめる。どうでも良い事だけど私は身長156センチでシェリーは167センチに設定してある。ヒールの高さの差があるから身長差は更に広がるんだけど……。ついでにセバスチャンは180センチだ
「はい……動く事が出来ます……手も足も……人になれました……それに力が……これがサクラ様の……」不意に両手で顔を覆い泣き出すシェリー
「えっ? シェリー、どうしたの? 何処か具合悪い? 大丈夫? よ、横になる?」オロオロする私
「大丈夫です。申し訳ございません……取り乱してしまいました……あまりにも嬉しくて……気持ちを抑えきれませんでした……」泣き笑いのシェリーが何だかとても愛おしかった
「シェリー……」私はギュッとシェリーを抱き締めた
……って言っても身長差の関係で多分傍目には私がシェリーに抱きついてる様にしか見えないんだろうな〜
シェリーも一瞬身体を強ばらせたが、そっと私の背中に手を回してくれた
ハグを解いて微笑み合っていると、涙を拭いながら頷いているダイアナが目に入った。もらい泣き?
「良かったね。シェリー」そう言ってダイアナはシェリーの背中を優しくさすった
「ええ……これでワタクシも微力ながらサクラ様のお力になれます」そう言ってダイアナと握手を交わしている
「いやいや、今でもシェリーはめっちゃ私の力になってくれてるから! ホント前から思ってたけどシェリーって自分を過小評価し過ぎだよ! もうっ! ……ふふっ、……これからもよろしくね」みんなを見回して私はシェリーの手を取った
「ところでセバスチャン、先程から気になっているのですが」おっ、なんかいつものシェリーに戻った
「なんでしょう?」
「『お嬢様』とはサクラ様の事で間違いないでしょうか? 何故その様な呼び方を?」
そう言われれば『お嬢様』って呼ばれてたね。セバスチャンは執事だから『お嬢様』呼びなんだろうな。って勝手に納得してたけど
「ええ。自然と……口をついて出ました。おそらくこの身体になった影響だと思います。『サクラ様』、とお呼びした方が宜しいですか?」最後の言葉は私に向けてか、私に向き直っていた
「どっちでも……ううん、『お嬢様』って呼んでくれる方がセバスチャンぽいかな? ちょっとこそばゆいけど、なんか嬉しいよ」そう言うと、セバスチャンは満足そうに頷いた
「お嬢様……。サクラ様、ワタクシもそうお呼びした方が宜しいでしょうか?」相変わらず硬いなシェリーは。
「シェリーの呼びやすい呼び方で良いよ」苦笑しながら答える
「お嬢様……サクラ様……」ダイアナもなんか考え込んでいる
《サクラさまは……おじょうさま?》
「天ちゃんも。天ちゃんが呼び易い呼び方で良いよ」
《……うん。サクラさまはサクラさまだね。セバスチャンはおじょうさま……》なんかセバスチャンがお嬢様みたいで笑いそうになった
――つづく――




