# 79 旅立ちの前に
「今ね、レイのフィギュア作ってるの。もう少しで完成よ」
ふたりに作りかけのレイを見せる
「わぁ〜可愛い〜。これがレイですか?」ダイアナから望んでた感想が聞けて嬉しい
「これが……レイ?」ふふ〜ん。シェリーの反応も想像通り。眉間にシワが寄ってそう
私が作ったレイは年齢は10歳位で、ゆるふわなツインテールにゴスロリの衣装を纏った美少女
最後の仕上げに色を付ける
髪色は夜明け間近の空の色……瑠璃色って言うのかな? 深い深い碧
瞳は琥珀色、光の加減で黄金色に見える神秘的な瞳
「よっし。完成!」
「わぁ〜」ダイアナが感嘆の息を漏らす
「色が付いて雰囲気が変わりましたね。なんか神々しいと言うか……」
「ありがと。神秘的な気高さをイメージしたの」
《レイ……かっこいいね……》
消え入りそうな天ちゃんの声がする
「天ちゃん?」なんだか心配になって覗き込むように天ちゃんを撫でる
《……サクラさま……あのね……ボク……ボクもね……》
黙ってしまった天ちゃんをそっと撫でながら「なぁに? 天ちゃん、どうしたの?」と声をかける
《ボクね、ボクのお人形も欲しいの》天ちゃんが意を決した様に宣言した。いや、宣言じゃないけどそんな感じの口調
「あっ……」しまった! うっかりしていた……天ちゃんのフィギュア……
「天ちゃん……ごめんね……天ちゃんの人間バージョンの姿は私の中にずっと前から居たのに……形にする事が抜け落ちちゃってた」
《ボクのお人形さんも……ある?》
「もちろんよ! 超特急で作るわね」
そして宣言通りにあっという間に天ちゃんのフィギュアを仕上げた
「わぁ〜」ダイアナが2度目の感嘆の息を漏らす
「どう? 素敵でしょう?」ドヤ顔で胸を張る
「この天ちゃんはね、天ちゃんがブランコで遊んでる時に見えたの。ブランコを漕ぐ少年の姿がね」
スラリと長い手足。華奢だけど逞しさを感じさせる体幹
……こんな難しいイメージをフィギュア化出来る私って凄くない? 自画自賛したくなる出来だった
髪は艶々サラサラの金髪。瞳はグリーン
「イメージとしては天界の王子様なの。気品も威厳も備えた将来が楽しみな少年よ」……この『将来』にはイケメンに育ちそう……って部分も含まれる……ってのは内緒にしておこう……
「王子……金髪碧眼ではないのですね……」シェリーがボソリと言う
「シェリー! わかってるわね。そうっ! 王子様と言えば『金髪碧眼』は定番よ。でもね、それは人間界での話。天ちゃんは天界の王子様なんだから特別よ」私の得意気な言葉に注目が集まる
「天ちゃんのこのグリーンの瞳はね。アレキサンドライトの様に光の加減で色を変えるの。ミステリアスな瞳なのよ!」
「アレキ……サンドライト?」ダイアナがつぶやく
「そう。アレキサンドライトは光でカラーチェンジする宝石のなの。天ちゃんの瞳はそんな宝石をイメージして光や感情で瞳の色が変わるって感じなの! 素敵だと思わない?」意気揚々と説明したが反応は薄かった……うっ……
「瞳の色の変化をみんなに見せられないのが残念だけど……」
「いえ。想像する事は出来ます。瞳の色が変化するなんて不思議で素敵ですね。あっ、レイもなんですよね?」ダイアナが優しい言葉を掛けてくれる
「うん。レイの瞳は猫さんのイメージも含めて黄金色への変化を考えたの。レイ自身のイメージのフェニックスにも当てはまるかな〜って」
「この天ちゃんにもサクラ様の愛が込められているのがよく分かります。天ちゃん、良かったですね」シェリーが優しく天ちゃんに語り掛ける
《あ……うん。サクラさま、ありがとう。ボク……とっても嬉しい……》そう言って天ちゃんはフィギュアをそっと抱き締めた
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
『エルドラド』のお手伝いやドリンク類を作ったり、慌ただしい毎日を過ごしながらも、それぞれの時間も充実させた。そして……いよいよ旅立ちの日を具体的に決める日が来た! ……なんて仰々しく言ってみたが……
「ここから離れても転移魔法で商品は送れるし、薬草も庭で育ててる分で十分やっていけそうなんだけど……」
「何か問題がございますか?」言葉を区切った私にシェリーが先を促してくれる
「うん、問題って言うほどのものじゃないんだけどね……」ちょっと憂鬱な気分になって来た……
「あのね、出発する前に在庫……ポーションとかドリンクとか……多目に用意して出掛けたいな〜なんて思ってるの。旅先で今と同じペースで作業できるかどうか分からないでしょう?」
「では、出発までしばらくは作業に当てられるという事でしょうか?」
「うん……それが良いかなって思ってる……」
「サクラ様?」ダイアナが不安げに声を掛けてくれる
「あ〜ごめん! どれ位用意したら良いかな〜とかどれ位時間が掛かるかな〜とか考えたらちょっと気持ちが……ね……ははっ……」
「私たちもお手伝いしますので! 大丈夫です!」ダイアナが胸を叩く。頼もしいよ〜
「ありがとう〜ダイアナ〜」ダイアナにしがみついてお礼を言う
「在庫量は留守にする日数にもよると思いますが……サクラ様はどの位を想定されておいでですか?」シェリーがもっともな質問を投げ掛ける
「そうなのよ! そこなのよ!」叫んでしょんぼりする
「サクラ様……もしかして……」
「ごめん。全く考えてなかった……余分に作っといた方が良いな。って思ったんだけど余分ってどれ位? って想像付かなくて……」
「あまり細かく決めなくても宜しいのではないでしょうか?」
「えっ?」シェリーの言葉に思わず声が出た
「えっと……細かく決めなくても大丈夫……って事?」私の幻聴かもしれないと思い聞き返してしまった
「はい。出発までに用意出来る分だけで構わないのではないですか? 出掛ける事は予めお知らせしておくべきだと思いますので、出発の日を決めてその日まで作業をすると言う形で宜しいかと」
「そっか……そうだね。私……なんか「これだけ」ってノルマみたいなのを決めて頑張らないと。なんて考えてた」
「頑張る事は素晴らしいと思います。無理のない様に、ですがきっちりと作業を進める事が肝心なのではないでしょうか?」
「うっ……しっかり頑張ります……」
「はい。みなで力を合わせて頑張りましょう」
――つづく――
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