# 51 大衆浴場とお庭作り
個人的な公園はとりあえず置いといて……
温泉活用、大衆浴場のアイデアを伝えに出向く
『温泉』の経営は『国』としての取り組みになるそうだ
まずは様子見……って事らしい
将来的には数を増やしたり温泉宿を作ったりする為の下地作りを手掛ける感じだ
大衆浴場に関しては建設場所も既に決まっているらしい
アレスの書いてくれた絵を元に設計図もあらかた出来ていて、後は最終確認をしてから着工となる
私は設計図を見せて貰い、必要なパーツが揃っているかシェリーと共に確認した
設計図と一緒にイラストを並べて確認する
そしてそれぞれの用途法も都度説明を加える
受付は広めにスペースを取り『お風呂の利用法』をしっかり説明してもらう
男性用の『男湯』と女性用の『女湯』への入口も分かりやすく……
脱衣所のスペースも広い。大きな棚に番号を付けて貰いその中にカゴを収納する。カゴの中には棚の番号が書いた札が入っておりそれを腕に付けて浴室に向かう形だ。
浴室は、まず入ってすぐの両脇に洗い場を設けた
そこで身体を洗ってからお風呂に浸かって貰う
水道の蛇口代わりに細長い浴槽に1人分のスペース毎に穴を開けてそこからお湯が流れる様に作って貰う
穴にピッタリの板状の栓も作って貰い、抜いたり差したりしてお湯の出したり止めたり出来る様になっている
栓も紛失しない様に板に穴を開けて紐を付けて貰う
そしてお湯の出る穴の側にはコの字型のフックをふたつ付けてもらう事にしている
ひとつはお湯の出る穴を塞ぐ栓を括り付けておき紛失しない様にするフック
そしてもうひとつは……そこに石鹸を設置する予定……
洗い場の細長い浴槽の空いた穴からお湯が流れているイラストも書いて貰っていたので工事関係者にも分かりやすい物になっていて好評だったそうだ
口で説明するより見てもらった方が分かりやすいですものね
そして唯一用途不明だったコの字型フック……これは何に使うのかと質問が出た
私は用意しておいた石鹸を取り出す
『みかんネット』に入れた『レモン型石鹸』だ
「これをこうやってこのフックに括り付けて……」とコの字型フックに取り付けるジェスチャーを見せる
「これは何ですか?」と神官殿から質問が来る
「はい。これは石鹸です。これを手や手ぬぐいで泡立てて身体を洗って貰います」と説明する
「石鹸? ……いや、その様な高級な品物は……予算的に不可能です!」神官殿が慌てた様に言う
「大丈夫です。この石鹸は町で売っている高価な石鹸ではありませんので」私は自信満々な笑顔で言う
「ここで使う石鹸は私が供給させて頂きます。ただ洗い場からの排水は浄水が必要ですのでその設備はお願いしたいです」
「なるほど……それでこの傾斜なのですね?」
洗い場からのお湯はメインの浴室には流れない様に傾斜を工夫して貰う様にお願いしている
「はい。浴室の綺麗なお湯は流れ出ても精霊様のお力ですぐに地面に吸収されます。でも石鹸を利用したお湯をそのまま流すのは良くないので、排水経路を別に作って処理して頂きたいのです」
「よくわかりました。お任せ下さい」工事関係者から返事が来た
『大衆浴場』は私が思っていたよりずっと広くて大きな建物になる様だった
それぞれの設備も十分なスペースを確保していて、ゆったり過ごす事が出来そうだ
すぐにでも着工に取り掛れるんじゃないかな? と思い私は嬉しくなった
「ペターソンさん、石鹸やその他に関しても相談させて頂きたいのでお時間作って頂いても宜しいですか?」
私は難しい顔をしている神官殿に声を掛けた
今すぐは難しいけれど出来るだけ早く時間を作ってくれるとの返事を貰った
「さてと! 庭にプチ公園を作りますかっ!」私は自宅へ戻った
「ただいま〜」玄関ドアを開けるとシェリーと天ちゃんが出迎えてくれる
「お帰りなさいませ」《おかえり〜》なんか良いねこういうのって。思わず顔がほころぶ
「さぁ、お庭の改造をするわよ! 2人とも手伝ってね」
「はい。もちろんです!」
《は〜い。ボクも頑張るよ!》
「天ちゃん、作りたい物があるの。雲を貰っても良いかな?」
《うん。良いよ。何を作るの?》
「天ちゃんが遊べる遊具だよ。ちょっと待っててね」
私は天ちゃんから雲を受け取りイメージを広げる……
形だけ同じじゃ意味が無いからちゃんと動く様に……
「出来たっ!」なんか……本当にイメージ通りでカラフルな色までしっかり付いている
偶然なんだけど……これまでに作ったフィギュアさん達にピッタリのサイズの『ブランコ』が完成した
説明するのにちょうど良いかな?
「天ちゃん、お人形さん達を連れて来てくれる?」そう聞くと《うん。ここに居るよ》と天ちゃんの中からポンと出てきた……
えっ? もしかして持ち歩いてたの? はは……
「……えっと、これはね、こうやって腰掛けて揺らして遊ぶ物なの」
とりあえずサクラ人形をブランコに座らせて手を鎖に添える。流石に掴んではくれないよね……って思ったらお人形の手が変形して鎖を掴んだ……
「わっ!」思わず声が出る……イメージのスキルって凄っ……まぁいいか……
「こうやって座ってしっかり鎖を掴んで……」私は人形の背中をそっと押した
《わぁ動いた〜凄いね〜面白〜い》天ちゃんがはしゃぐ
「これはね、ブランコって言うの。この大きさじゃお人形さんしか乗れないけど、もっと大きくしたら天ちゃんも乗れるからね。お庭に持って行こう!」
庭にミニチュアブランコを置いて大きくする
倒れたりぐらついたりしない様に土魔法で柱を埋めて固定する
天ちゃん用のブランコなんだけど、どうせなら……と2つのブランコが並んでるタイプにした
片方のブランコに座って「天ちゃん、そっちのブランコにこんな風に座って鎖を掴んでみてくれるかな?」と天ちゃんに声を掛ける
《分かったぁ……こう……かな?》天ちゃんから触手の様に伸びた雲が鎖に巻き付く
「うん、そうそう。上手だね」私は天ちゃんの側に移動する「揺らすからしっかり掴まっててね」と天ちゃんの背中? をそっと押してブランコを揺らした
《わぁ〜》天ちゃんが声を上げる
「怖くない?」天ちゃんを押しながら聞いてみる
《怖くないないよ! わぁ〜楽しい〜!》天ちゃんがはしゃぐ
「良かった。気に入ってくれて」私は天ちゃんの背中を少し強く押してブランコの揺れを大きくしてみる
《わぁ〜凄い凄いっ!気持ち良いね〜》天ちゃんはご機嫌だ
天ちゃんの背中を推し続けて段々疲れて来る……
ブランコの揺れが徐々に緩やかになり、停止……
《サクラさま〜もっと遊びたい〜》
「よし!」と私は再び天の背中を押す……
「サクラ様……代わりましょう」シェリーが途中で交代してくれる
シェリーの見えない手が天ちゃんの背中を優しく押し続ける……
子供のブランコはエンドレスだって事を忘れてたわ……
天ちゃんの相手をシェリーに任せて私は別の遊具『滑り台』の作製に取り掛かった
「あとは……」追加で、ポニーとパンダの形の『スイング遊具』も作った
砂場も欲しいかな〜
土魔法を駆使して枠を作り『砂』を入れる
やるじゃん! 私! 自画自賛のプチ公園の出来上がりだ
ブランコに夢中だった天ちゃんもシェリーに声を掛けられて私の側にやってくる
《サクラさま〜これはなにっ?》
あれこれ出来ている遊具に興味津々だ
私は遊び方を説明しながら滑り台やスイングポニーで天ちゃんと遊んだ
ブランコや滑り台もコツを教えると1人でも遊べる様になり、とても楽しそうに遊ぶ天ちゃんを新たに作ったベンチに腰掛けてシェリーと見守った
何だかちょっとママになった気分だった
――つづく――




