# 52 調剤スキル
町づくりは順調に進んでいるようだ
『大衆浴場』の建設も始まった。何だかドキドキする
神官殿はお忙しい様で、私との打ち合わせはもうしばらく後になる様だ
神官殿曰く、「確認したい事がいくつかあるので隙間時間ではなくゆっくり時間の取れる時にお願いしたい」と言う事らしい。私も、他にも提案出来たら良いな。と思っている事があるのでそれはそれで丁度良かった
でっ! その提案したい案件に必要な実験をしたい……
私1人では無理なので、物知りのアレスに協力をお願いした
そして、アレクとダイアナも手伝ってくれる事になった……
う〜ん……3人共有能な人材なのに私の手伝いなんてしてて良いのかな? とちょっと心配にもなったが、アレスが神官殿にしっかり許可を貰ってくれたそうだ
アレス……やっぱり彼は優秀で頼りになる存在だ
将来が楽しみだなぁ。なんて事をこっそり思った
ノーム様に頂いた『世界樹の葉』これを材料に作れる『エリクサー』この調剤方法を他の薬草類で応用出来ないかと考えたのだ
アレスに『薬草各種』『洗浄用の植物』を採取したいからと案内をお願いした
迷いの森にほど近い草原へ案内される
「サクラ様はここで待っていて下さい」と
アレス・アレク・ダイアナがそれぞれ採取に向かう
私は薬草と雑草の区別が付かないので、どの植物にどんな効果があるのか実物を揃えてから説明してくれる事になったのだ
「サクラ様……鑑定スキルを使えば簡単に揃えられるのではございませんか?」シェリーに指摘される……
「あっ……確かに……そう言われればそう……だね……」
鑑定スキルを使って草原を見ると植物の名前がみえた
それらを採取して詳しく鑑定すれば効果も一目瞭然?
「でもまぁ……楽する事を覚えても……ねっ? 自分で採取する喜びや達成感も大事だよ! うん……」
「……承知致しました。その方がサクラ様らしいかもしれませんね。」シェリーが優しく答えてくれた
なんか……今さら気付かなかっ……たなんて言い辛かった……
程なくしてアレス達が沢山の植物を抱えて戻って来た
「凄いね、みんな! そんなに集まったの?」
「はい。沢山の薬草が生えていました。こんな大漁なのは珍しいかもしれません」
シェリーにテーブルを出して貰い薬草を並べる
3人は植物毎に仕分けして行き、私に植物の名前や効果を説明してくれる
「凄いね、みんな……私にはどう違うのかパッと見じゃ分からないよ……」
「慣れですよ、サクラ様。私達も最初は同じに見えて仕分けするのは難しかったですから」ダイアナがニコニコしながら言ってくれた
「『薬草』は『ポーション系』に」
「『麻痺直し』や『毒消し』は『万能薬』になると良いな」
「『洗浄用の植物』で『食器用洗剤』や『衣類用洗剤』に……」それぞれを確認しながら並べてみる
「ん? これは何? 数が少ないね」
「はい。これは『魔力草』と言って魔力を回復させる効力があります。ただ……とても珍しい物で手に入れるのが難しい薬草のひとつです。今回見つかったのは幸運でした」
「おぉ! 魔力を回復してくれるのは有難いね。でも数が少ないんじゃ高価な物になるのかな?」
「そうですね……このままだとほとんど効果がないので調剤スキルを持つ者にしか扱えないですし、作るのも相当な魔力を消費するらしいので……あまり出回らないお品になるかと思います」ダイアナが説明してくれる
「そうなんだ……魔法を得意とする人には役立つだろうに勿体ないね」栽培とか出来ないのかな……そんな事をぼんやりと考えた
「ん? そっちにまとめてある薬草は?」
「あっ、これは『ハーブ』です。ハーブも沢山見つけたので……」ダイアナが少しはにかんで答える
「ハーブかぁ〜。ハーブも草原に自生してるんだね。凄いな〜。ダイアナが淹れてくれるお茶も自分で採取したハーブなの?」
「はい。ハーブもお店で買えますが、自分であれこれ組み合わせるのも楽しいですから」ちょっと照れた感じがまた可愛いなぁ〜
「ダイアナ特製のハーブティーだね。これまでご馳走になったお茶もどれも美味しかったけどダイアナが調合したお茶だったのね」そんな風に言うとダイアナは嬉しそうにニッコリ笑ってくれた
しばらくみんなで薬草採取に精を出した
『鑑定スキル』は使わずに薬草採取を続ける
『山菜採り』や『四つ葉のクローバー探し』の様で楽しかった
ある程度集まった所で休憩を兼ねて昼食を取る事にした
シェリーが食器や軽食を出してくれて、ダイアナが小皿に分けたりお茶をカップに注いだりと用意をしてくれる
至れり尽くせりってこういう事を言うんだろうな〜とアレス達とテーブルに着きながら考えた
「シェリー、ダイアナありがとう」2人にお礼を言って和やかにランチタイムを取った
「さてと! これから薬草を調合していくんだけど……みんなも見る?」
「もちろんです!」
「はい!」
「お願いします!」
ダイアナ・アレク・アレスが一斉に返事をする
「見てても面白くない……かもよ?」あまりの勢いにちょっと気後れする……
「いいえ、是非勉強させて下さい!」とアレスが言い残りの2人も頷く
「よっし! じゃあ始めよう!」
「え〜っと、まずは薬草を軽く洗って……」
シェリーにタライを出して貰い天ちゃんに水を注いで貰う
「ホコリとかの汚れが取れる程度で大丈夫だよね?」と言いながら簡単に水の中でゆすり洗い的に汚れを落とす
「乾燥させてから煎じた方が良いのかな? とも思うんだけど、とりあえず今日はこのまま作ってみるね。普通はどうしてるのかな? すり潰すの? 煎じるの?」
3人に尋ねると3人は顔を見合わせた
「人それぞれだと思います……」ダイアナが答える
「調合に限らずスキルを必要とするものは手順とか発動の仕方とか人によって違うのです。それに……調合方法とかは外部には漏らさないのが普通ですし、教えて貰っても出来るかどうかは資質の問題でもあるので……」アレスが続けて説明してくれる
「そっか……なるほどね……魔法も属性のない魔法は使えないって言うのと同じなんだね」
「はい。薬草もすり潰したり煎じたりと薬は誰にでも作れますが、ポーション等の効果の高い物はスキルが必要になるのです」
「分かった。ありがとう。とりあえず作ってみるね」
薬草をすり鉢とすりこぎで丁寧にすり潰していく
ジューサーとか使えば早いかもしれないけど、まずは手作業で作ってみたかった。ジューサーを使って作るのと比較したいって言うのもあったし
すり潰した薬草をガーゼで包み絞る
思ったより絞り汁が出来てびっくりする
「結構取れるもんだね! これを水に混ぜて……魔力を込める……」水の量と絞り汁の割合は「なんとなくこれ位」って感じがして分かるのが不思議だ……これがスキルが発動してるって事なのかな?
「よし、『ポーション』完成!」
「シェリー、ナイフとスプーンお願い」
「どうぞ」とすぐにナイフとスプーンが出てくる
ちょっと怖いけど……ナイフの先端で指先を軽く刺す……
「「「サクラ様!」」」3人が叫ぶ
「あっ……ごめん……説明も無しにこんな事されたらびっくりするよね……ごめんね……」3人に頭を下げる
「サクラ様……血が……」ダイアナが青くなっている
「大丈夫だよ、ポーションの効果を確認するのに手っ取り早いでしょ?」そう言って作ったポーションをスプーンですくって傷に少し垂らす
……あっという間に出血は止まり傷口も無くなった
「即効性があるし効果も高そうだね。作る時に魔力を消費するけど作ってしまえば魔力は不要だし持ってると便利かもね」
「凄いです……」また3人がびっくりしている……
あれっ? ポーションってこんなんじゃないの? 不安になる……
「あの……なんか変だった? ポーションって回復魔法みたいに怪我が治るんじゃなかったっけ?」
「えっ? あっ、はい。そうです」我に返った様にアレスが答えてくれる
「そんな少量で治るなんて凄すぎです!」アレクが興奮気味に言う
「まぁ……傷もほんのちょっとだしね……」
不安になってこっそり鑑定してみる……『ハイポーション』ポーションの上位互換。だった……シェリーをチラリと見る……《シェリー……》
「……サクラ様は魔力等、全てにおいて高い能力をお持ちですので……魔力を込めて作られたこちらは『ハイポーション』つまり『ポーション』の上位互換だと思われます」
「「「っ!」」」
「なるほど! そうですよね。サクラ様が作られたポーションなのですから上位の『ハイポーション』なのですね。納得です!」ウンウンと頷き合い納得する3人であった……
「みんなも作ってみる?」そう尋ねたが3人は顔を見合せ同時に首を横に振った
「我々は『調剤スキル』を持っていませんので……」アレスが言いアレクも頷く
「私たちが作れる物は『ポーション』の下位『キズぐすり』です」ダイアナが言う
「そっか……分かった。それぞれが得意な分野を持っていてそれを高めて行って……みんなその道のエキスパートになれるって事なんだね」
私はこの世界の理がなんとなく分かった様な気がした
――つづく――




