# 41 シェリーと天ちゃん(秘密にしたい魔法)
翌朝、私はいつもより早い時間に起きた
と言っても自分で起きた訳ではなくシェリーに起こして貰ったんだけどね
昨夜ベッドに入って思い付いた事を試したかったからだ
ベッドから出て大きく伸びをする
「シェリー、キャラメルマキアートが飲みたい」起きて早々に我儘を言う
「畏まりました。ホットのトールサイズ、キャラメルソース追加にキャラメルシロップに変更で宜しいですね?」
「うん、それでお願い」
私の好みも把握してくれている
「天ちゃんはオレンジジュースで良いかしら?」と一緒に早起きした天ちゃんにも飲み物を用意している
コーヒーショップ系は色々あるけれど、私は某S社を利用する事が多かった
季節の限定物は欠かさずチェックしている
フードやスイーツはD社が好みだったりする
コーヒーショップ系は、どこもおひとり様でも気入れるのでお気に入りだ
これらのショップは異世界に来た今でも常に最新の商品にアッフデートされているし、スーパー等の品揃えも新商品は表示される
更に言うと、検索して出て来た商品は金額が確認出来る物は全て購入する事が出来ていた
商品をタッチすると『購入する』ってボタンがポップアップされる仕様になっている
つまり、何ヶ月も待たないと予約の取れないレストランだろうとメニューとして掲載されていれば即購入が可能なのだ
どういう仕組みなのか謎だが、あれこれ検証してみた結果がこんな感じだった
本当に謎過ぎる……でも考えても分からないし、私にとっては有難い機能なのでそれはそれで大歓迎なのだ
☆☆☆☆☆☆
顔を洗って軽くスキンケアをする
そして今日着る洋服がシェリーによって用意されている
……あ〜もちろん自分の事は自分で! って思ってるよ?
でもね……シェリーが……
「ワタクシの立ち位置は『秘書』だと仰られましたよね? ワタクシに出来る事は全てお任せ下さい」
なんて言って聞かないのだ
「それは仕事を逸脱してるし……」ってな事を言っても
「サクラ様が快適に過ごせる様に立ち回るのがワタクシの仕事ですから」なんて返されてしまった
シェリーは『秘書』と言うよりは『執事』? 『侍女』? 『世話好きのママ』って感じだ
話を戻そう……今日早起きした理由……
王都に着いてからシェリーと天ちゃんは人の目に触れない様に気を付けている
シェリーの見た目はスマホカバーがブックタイプなので小さな本の様に見えるだろうけど、天ちゃんの見た目は『雲』だからね……
ふたりには私のカバンの中に入って貰っている
出来る事なら王都での生活をふたりにも堪能してもらいたい
そんな事を思いながらベッドに入って思いついた事を試したかった
すぐに検証したい気持ちを抑えてシェリーに1時間ほど早く起こしてくれる様に頼んで再びベッドに入った
私はこれまでもかなりデタラメな事が出来てた気はするけど、力が解放されて更に色んな事が出来る様になった気がする
昨日の様に『イメージ』でジオラマが作れたりするのもそのひとつ……
そして今日試してみたい魔法……
実験の道具はなんでも良かったのだけれど『イメージ』でシェリーの人形……フィギュアを作ってみたい
天ちゃんに雲を少し分けて貰う
髪はハニーウエーブで背中までのロングヘア、髪色は金髪にしたい所だけど若干明るめだけど落ち着きもあるブラウン系にする。
衣装はスーツっぽいジャケットにタイトスカート、丈は膝下だけどスリットを入れて……
靴はもちろんハイヒール
中のブラウスもスタイリッシュな感じで……
プロポーションはボンキュッボンなナイスバディ
ふふっ……エロかっこいいシェリーの出来上がり〜
外見と中身が違うギャップ萌えをイメージしております
「サクラ様? それは一体……何をなされているのですか?」シェリーが訝しげに尋ねて来る
まぁ、早起きして粘土遊びしてる様にしか見えないものね〜
「じゃ〜ん! 見て見て! シェリーだよ!」
サイズ17~18センチ程度のフィギュアをシェリーと天ちゃんに見せる
《凄〜い! シェリーカッコ良いね〜》
うんうん、天ちゃんにはカッコ良いシェリーに見えるのね
確かに銃とか持たせたらハマりそう
「これが……ワタクシですか?」
目が点になっていそうな感じでシェリーが呟く
「うん、私の中のシェリーはこんな容姿だよ。素敵でしょ?
……って言ってもこれはただのお人形なんだけどね」
「ありがとうございます……」シェリーが返答に困ったのか何故かお礼を言う
「シェリーを作る事が目的じゃないんだけど……
ちょっと見ててね?」
そうふたりに言って魔力を練りあげる
《ステルス》このネーミングがしっくりくる気がした
「えっ?……」
《あれっ? ちっちゃいシェリーは? どこに行ったの?》
「シェリーのフィギア、見えなくなった?」
私はふたりに聞いてみる
私には見えてはいるけど半透明になった感じだった
「はい、消えました……」シェリーが抑揚のない声で答える
「天ちゃん、シェリーのお人形置いてあった場所覚えてる?」
《うん、覚えてるよ》天ちゃんは楽しそうに言う
「お人形のあった所を探してみてくれるかな? シェリーは……いるかな?」
天ちゃんから雲の手が伸びる様にシェリーのフィギアに近づく
《あっ! 居たよ! ちっちゃいシェリーつかまえた!》
「やったね〜見つけられたね〜。じゃあシェリーを離してまたそこに置いてくれるかな?」
天ちゃん は《は〜い》と元気に返事をしてシェリーのフィギアをテーブルに戻す
「じゃあ次は……」と天ちゃんを見て《ステルス可視》と心の中で唱える
《わぁ〜ちっちゃいシェリー出て来た〜。でもなんか変だよ? 向こう側が見えてるよ?》
天ちゃんは不思議な現象を楽しんでいる感じだった
一方シェリーは始終無言のままだ
「シェリーには見えない……よね?」
「あっ……はい。見えなくなったままでございます」
「うん、よしよし! 成功だね」
そしてシェリーにも「ステルス可視」と唱えてフィギアを見える様にした
「あっ……ワタクシにも見える様になりました。
しかし、先程とは見え方が違います。半透明に見えますが……」
「うん、フィギアを魔法で見えなくしたの。で、シェリーと天ちゃんには魔法が掛かったフィギアを目視出来る様に魔法を掛けた。半透明に見えるのはステルスの魔法が掛かってるからだよ」
「ステルス・解」そう唱えるとフィギアは元の状態に戻った
「検証は成功だよ。シェリーと天ちゃんに今の魔法を掛ければ、私以外の人からはふたりの姿が見えなくなる。これで王都の町に出ても自由に出来るでしょう?」
「サクラ様……この魔法は危険過ぎます」
「んっ? 危険? それは……シェリーや天ちゃんにこの魔法を掛けると害があるって事?」
「いえ違います。この魔法の効果が危険だという事です。もし他者にこの魔法を知られたらこの魔法を悪用しようと考える者が出てくる可能性も……サクラ様の身に危険が及ぶかもしれません。」
「あ〜うん、それは考えた。そんな事を考える人はこの世界には居ないって思いたいけど……
だからこの魔法は人には話さない。シェリーと天ちゃんだけだよ。だから」
「いけません!」シェリーが私の言葉を遮る様に大きな声を出す
「シェリー?」
「……申し訳ございません……取り乱してしまいました……
サクラ様がワタクシ達の為に考えて下さった事だとは理解しております。ですがその魔法を隠し切る事が出来ず外部に漏れてしまった場合……
最悪、暗殺や戦争に利用される可能性もあると言う事です。
サクラ様に……万が一の事があっては……
その様な危険な魔法はどうか封印なさって下さい」
シェリーの私を心配する気持ちが痛い程伝わって来る……
「シェリー……ありがとう。
シェリーが心配してくれるのは分かるし凄く嬉しいよ。
私もこの魔法は危険だと認識してる。
悪事を働くには打って付けの魔法だからね……
確かにこの魔法なら兵士を何人も姿を消して敵地に送り込めるだろうし……
知られてはいけない魔法だね。
だから絶対に他の人には知られないように気を付けるから」
「サクラ様……分かってらっしゃらない様ですね……」
シェリーがちょっと呆れた様なニュアンスで言う
微かにため息が聞こえた様な気も……
「サクラ様は隠し事が得意ではないとお見受け致しますが?」
「えっ?」
「言及された時に知っている事や出来る事を誤魔化せるとは思えないのですが?」
「うっ……確かにわかり易いってよく言われる……」
「それもサクラ様の魅力のひとつだとワタクシは思っております」
「それは違うと思うけど……ありがとう慰めてくれて……」
いつかきっとポーカーフェイスの得意なクールな大人になってみせる! 密かに決意した
「でも……やっぱり私はシェリー達と一緒に王都の町を楽しみたいんだもん……」ステルスの魔法を使う事をシェリーは認めてくれそうにない……どうしたら……
「そうだ! 決めたっ! もうコソコソしない! 堂々とする!」そう宣言をする
「サクラ様?」シェリーがまた不安そうな声を出す
「ごめんねシェリー、私はシェリーと天ちゃんを守りたくて……人目に触れさせない様にする事ばかり考えてた。
でもそれは間違ってるよね。
堂々と町を歩こう! 天ちゃんは魔物と間違われる場合のあるかもだけど、誤解を解いていけば良い。
危害を加える人が居たら私が全力で止めるから。
絶対に私がふたりを守るから。
分かって貰えるように頑張るから。
隠れる事なんてないよね。堂々としよう?」
「サクラ様……ありがとうございます。
そのお気持ちだけで十分でございます。」
「ダメだよっ、決めたんだから!
一緒に町に行こう? ねっ?」
「…………承知致しました……
ではサクラ様は『テイマー』で天ちゃんは従魔契約を結んだ精霊……と言う事にでも致しますか?
従魔契約を結んだ魔物はその者によって制御可能だとみなされますので。
ワタクシは天ちゃんの中に入れて貰えば問題ないと思います」
シェリーが『やれやれ……仕方ないな〜』って思ってそうな感じで提案してくれる
《「もぉ〜しょうがないな〜こうなった美咲は引かないからな〜分かった分かった。」不意に幼なじみの『しぃちゃん』の顔が浮かんだ……》私の我儘に付き合ってくれた親友だ……なんだかんだ言いながらもいつも私に付き合ってくれていた……
「ありがとうシェリー……」
《「ありがと〜しいちゃ〜ん」とハイテンションになる自分を思い出した》胸が詰まりそうになる気持ちを奥底に追いやった……
「テイマー! 良いね! カッコ良い!
天ちゃんは魔物って言うより妖精とか精霊って感じだよね」そう言って天ちゃんに視線を移す
……天ちゃんはシェリーのフィギアと遊んでいる……んだと思う
高く持ち上げてみたり背中に乗せて移動したり、頬ずりしたり……何やらおしゃべりもしている感じも……
……めっちゃ可愛いんですけどぉ〜
シェリーに視線を戻し「か、可愛いね〜」と悶絶した
――つづく――




