# 40 ダイアナとの時間
ジオラマを作って遊んでいたら結構時間が経っていた
そろそろ休む時間が近づいている
私は手早く入浴を済ませて自室へ戻る
王宮のお風呂は『ゴージャス』だった
浴槽は脚付きのバスタブ
猫脚? って言うのかな?
洋画に出てくる様なバスタブ
バスタブのサイズは普通に手足を伸ばせるサイズで馴染み深かったので居心地は良かったのだが……
それが置かれている部屋……と言うか浴室が無駄に広かった
私の勝手なイメージなんだけど……
王宮のお風呂って、浴槽は銭湯レベルの広さで
両脇に美女をはべらせて入浴する王様・王子様……
複数のメイドさんに磨いて貰ったりするお姫様……
そんな感じなので、浴室の広さはイメージ通りなんだけど浴槽の大きさが普通過ぎて何だか違和感があった
いや、勝手なイメージなんだからしょうがないんだけどさ〜、なんかモヤモヤした
でもそれ以外はタイルや壁も豪華で……
庶民の私は何だか落ち着かなくてカラスの行水の如くそさくさと入浴を済ませる
外で待ってくれているダイアナの事も気になる……って言うのもあったんだけどね……
それから……石鹸も難あり……だったな〜
町で買った石鹸より香りは良かったけど泡立ちは今ひとつ
そして石鹸しかないからシャンプーとかコンディショナーとかは無いんだろうな
全身を石鹸で洗うのかぁ〜
なんか髪の毛キシキシなんですけど……
次は自分の入浴セットを持って来ようと心に誓った……
待たせたダイアナにお礼と謝罪を口にする
ダイアナは「とんでもないです」とにこやかに言ってくれた
うん、ダイアナは本当に素敵な子だ
明るくて気さくで、その上仕事も出来る
あっ……だから王宮勤めのメイドさんなのかな〜
優秀な人材だもんね
おまけに可愛いし!
それにしても……王宮は広いっ!
長い廊下に同じデザインの扉が沢山!
まるで迷路だっ! 迷宮だぁ〜
部屋を出たらもう二度と同じ部屋に戻れない気がした
だから恥を忍んでダイアナに案内してもらい待機して貰っている
森の露天風呂だったら一緒に入れたんだけど……
イメージ通りの銭湯サイズだったら一緒に入れたんだけど〜〜
なんか……色々と納得のいかない王宮のお風呂だった
部屋に戻って髪を乾かす
風魔法プラス火魔法のドライヤーは超便利だ
そして洗い流さないタイプのトリートメントでヘアケアも忘れずに
髪を乾かしているとダイアナに詰め寄られた
「サクラ様っ! それはなんですかっ?」
あまりの勢いに「それ? って……どれ?」変な返答をする
「髪が……なぜ突然その様に動くのでしょう?」
あ〜ドライヤーか……
「えっとね……風魔法に……」と言ってダイアナにそよ風、微風を当てる
「この風に火魔法を含ませると……」そう言って温風をダイアナに当てる
「温かい風が髪の毛を乾かしてくれるの」
魔法を生活魔法として使わないって言うより、髪の毛はやっぱり自然乾燥なんだろうな〜なんて事を考える
だって『魔道具』なんて魔法の結晶みたいな物でしょう?
魔法を道具としては作る事が出来るのに、生活魔法として個人的にはそう言う使い方をしないって事だよね
どうしてかな〜
ここのお風呂なんて普通にお湯が出てきたし……
『お湯が出る』って事を魔法道具として作るって凄いと思うのよね
私はドライヤー的に温風を起こせるけど、この力でドライヤーみたいな器具を作るなんて出来ないもの
『魔道具』……凄いわ〜
シェリーが作ってくれた我が家の電化製品も魔力で
動くんだから魔道具になるのかなぁ〜
…………うっ……また思考が別の方向に飛んだ……
やっぱり私の頭の中はカオス……
そしてハタと思いいつく……
「えっ? まさか町の中で魔法を使っちゃダメって決まりはないよね? 私、捕まったりしないよね?」
急に不安になってダイアナの両腕を掴んで詰め寄ってしまった
「もちろんです。人に怪我を負わせたとか事故を起こしたとかでもなければ魔法を使う事に制限はございません」
ダイアナが穏やかに答えてくれる
「良かった〜。本気でダメなのかと思っちゃったわ」
ホッとしてダイアナを掴んだままだった事に気付く
「あっ、ごめんね、痛くなかった?」
ダイアナを掴んでいた手をそっと離す
「大丈夫です。お気になさらないで下さい」
「サクラ様は簡単そうに風魔法と火魔法をお使いですが、これは高度な魔法だと思います」
ダイアナが真剣な眼差しで言う
「えっ……そう……なの?」
「私も風魔法を使う事が出来ますが、サクラ様の様に風量を調節するのはとても難しいです。長時間同じ力を維持し続ける事も……更に火魔法も同時に発動させるとなると……
鍛練が必要な気がします。」
「そう……なんだ……ごめん……なんか誰にでも出来る簡単な事かと思っちゃって……」
これってやっぱり私のステータスがチートだから可能な事だったのか……
「いえっ、申し訳ございません。」
ダイアナが思いっきり頭を下げる
えっ? いや、なんでそんな反応?
「えっ、ダイアナ? どうしてあなたが謝るの?」
ダイアナの様子にオロオロ挙動不審になる
「サクラ様のお力を否定する様な事を申しました……
申し訳ございません」ダイアナが頭を下げたまま言う
……う〜んよく分からないけど……
やっぱり私の事、精霊様みたいに人とは違う生き物だって思われてるって事なのかな?
それともこの国の国王から来賓として失礼の無い様に言われてるとか?
「ダイアナ? 私はちょっと色んな魔法が使えたりするだけでダイアナと変わらない普通の女の子だよ? そんなにかしこまらないで欲しいな……」
顔を上げて欲しくてダイアナの肩にそっと触れる
ダイアナの肩がぴくんと反応して私を見てくれる
「私はダイアナとお友達になれたら嬉しいな〜って思ってるの。ダメかな? イヤ?」
ダイアナが何故か顔を真っ赤にして首をブンブンと横に振る
「おと……おとも……」アワアワしているダイアナに
「ダイアナ、私とお友達になって下さい」と手を差し出した
ダイアナは「……はい……」と小さな声で返事を返して私の手を取ってくれた
「ふふっ、これからもよろしくね、ダイアナ」そう言ってダイアナにハグした
「そうだっ! ダイアナありがとう」
私の声に弾かれたように「な、何がでございましょう? わ、私はお礼を言われる様な事は何も……」
「ううん、ドライヤー……あっ、この風魔法と火魔法を合わせた温風の事をそう呼んでるんだけど、この魔法って簡単じゃないって教えてくれたでしょう?」
「はい」ダイアナはまだ不思議そうな顔をしている
「そう言われて私も気づいたの。もし火魔法の火力の調整が上手くいかないまま発動させてしまったら……って」
私は自分の腕を抱きしめた……
「もしかしたら大火傷を負う大惨事になるかもしれない……そんな危険性のある魔法だって事を私は認識出来ていなかった……ありがとうダイアナ、大事になる前に気付かせてくれて」私はそう言って静かに微笑んだ
「いえ、そんな……私こそ……ありがとうございます
サクラ様とお友達だなんて恐れ多いのですが、凄く嬉しかったです……ありがとうございます」
そう言って微笑むダイアナはやっぱりとても可愛かった
「遅い時間まで付き合わせちゃってごめんね。
明日もまたよろしくね」
「はい。こちらこそよろしくお願い致します。
おやすみなさいませ……」
一礼してダイアナは部屋を出ていった
本当に遅くまで拘束しちゃったな……と反省する
私はもう寝るだけで良いけど、ダイアナはこれから自分の事が出来る時間なのよね……
明日からは早い時間に上がれるようにしなきゃ……
そんな事を思いながらベッドに入った
――つづく――




