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故郷は近くて遠くてだから愛しいんだ

頭の中のシズナと巧馬の小旅行

仏壇に向かい手を合わせている巧馬にお茶とお菓子を運んできた女性に


「良かったら、こっちでお茶でもどうぞ」


と声をかけられた巧馬は隣の居間に移動した。


「お父さん仕事休みやったら良かったのになぁ、ごめんねわざわざ来てくれたのに」


申し訳なさそうに言う女性に巧馬は


「いえこちらこそ突然ですいません」


と言うと女性は微笑んで


「いいんよぉ、この子も喜んでると思うわ」


仏壇に飾ってあるショートカットでボーイッシュなシズナの写真を二人はみた。


「この子の兄が病気で入院しとってね、私は付きっきりで病院におったからいつも一人でほったらかしみたいになっとった。それでもシズナは大丈夫だから大丈夫だからって…」


巧馬は黙って話を聞いていた。


「あの時もう助からんって言われたけど、それでも助かってほしくて何度も祈ってたんやけどね」


と話を聞いていたとき巧馬の頭のなかから声がして


ずっと聞こえていた…母さんと父さんの呼ぶ声が


と言った。シズナの母は


「でも…あかんかった助からんかった」


と切なそうに微笑みシズナの母は唇を噛みしめ涙をこらえて


「そしたら先生に臓器提供意思表示カードに記入がありますって見せられて、ほんまにこの子はって」


たまらずシズナの母は涙をこぼした。


「時間もないから早う決めないかんし悩んだんやけど、お父さんと相談してシズナ自身は生きれんかったけどこの世にいた証しを残せたらって決めたんよ」


と言いシズナの母は巧馬の手を握りしめ


「後悔もしたけどこうやって逢えるなんてな…ほんまにありがとう」


と言って頭を下げた。巧馬は


「こちらこそシズナさんのお陰です。もう無理なんだ一生このままなんだって諦めていたときに、シズナさんが光をくれた助けてくれたんです」


と言うとシズナの母は嬉しそうに


「ありがとうね本当に…それで具合いはどう?よう見える」


心配そうに巧馬に声をかけると


「よく見えます。図々しく来たのに仏壇まで拝ませてもらって、ありがとうございます」


そういって頭を下げる巧馬に


「こちらこそワザワザ来てくれてありがとう。うちらはあの子の意思を尊重しただけ…子供を二人とも守れんかったダメな親やね」


そういって悲しそうに微笑むシズナの母に


「ダメじゃないです幸せでした」


と思わず言った。


「えっ?」


驚くシズナの母に


「あっ俺じゃなくてシズナさんが…そりゃぁ寂しいときもあったけどみんなの事が大好きだったと」


そう伝えるとなんとも言えない表情で


「シズナが」


と聞いてきた。巧馬は微笑み


「信じてもらえるかわからないんですけど感じるんです」


と言うとシズナの母は嬉しそうに微笑み


「ほうなん感じるん…本当にそんな事があるんやね。ありがとう」


と言った。


これも使命だったのか?

両親の重荷を取りたかったのか…

あんたは俺に伝えさせることが多すぎる


巧馬は微笑んだ。シズナの母はそんな巧馬を申し訳なさそうに見て


「あのな、こんなこと頼んで良いんか分からんのやけど、あの子…シズナの分も色んな所に行って色んなものをみて長生きしてもらえる?」


思いもかけない言葉に巧馬が驚いていると


「あの子な旅行会社で働いてたんよ。世界中飛び回りたいってよう言っとった」


へえツアーコンダクターになりたかったのか


「病院から出れんかったお兄ちゃんの代わりに色んな所にいって見てくるわって言っとった。あの子はいつも誰かの為ばっかりやったわ」


お兄さんか…そうだな、あんたっていつも誰かの為ばっかり。でもそれが嫌じゃなくて…


フッと微笑む巧馬にシズナの母は遠慮ぎみに


「それでな、これから旅行とか行ったらその話をしに来てもらいたいんよ。迷惑じゃなかったらでいいんやけど」


と言うと巧馬は頷き


「迷惑だなんて…分かりました色んなものをたくさん見てたくさん話せるようにします」


と言った。シズナの母はすごく嬉しそうに


「ありがとうね」


と微笑んだ。そして机の上の湯呑みを見て


「あらあらお茶が冷めたわ…そうやコーヒーでもいれようかね、シズナなんか1日5杯も飲んでたんよ待っててな」


と言い台所に去っていった。居間に古びた柱時計の音が響き、巧馬はその音を懐かしいような不思議な気持ちで聞いていた。

一時間くらいが過ぎた頃、巧馬が


「じゃあそろそろ」


と立ち上がった。シズナの母は


「もう帰るん?」


と残念そうに声をかけた。


「暗くなる前にホテルにいかないと道に不馴れなので」


と言うと


「そうやね初めての土地で迷うと大変やしね。ほんまにこんな時こそお父さんたらはよ帰ってきてくれたらいいのに」


とシズナの母がため息をつきながら言った。巧馬は慌てて


「今度はゆっくり来ますからその時にお願いします」


と言うとパッと明るい顔になり


「ほな次に来たらこの家に泊まってな約束よ」


と言った。


「はい、そうさせてもらいます」


と巧馬が言うと


「良かった、あっちょっと待っててな」


と言い奥へ行きすぐにバタバタと戻って来ると紙袋を差し出した。


「はいっこれホテルで食べて」

「え?」


なかを見るとお弁当が入っていた。


「入れ物は今度返しに来てくれたら良いから約束やで」


シズナの母が笑顔で言うので巧馬も微笑んで


「はい、これありがとうございますまた来ます」


と言いお辞儀をして玄関を出た。暫くするとシズナの声が


「ありがとう…お前のおかげで母さんに会えた。」


と言われ巧馬はフッと笑い


「よく言うよ、あんたがここに来るように仕向けたくせに」


と言うと偉そうな口調で


「やっと分かったのかお前はやっぱり鈍いな。」


と言うので巧馬は


「あんたはリーコさんと同じで素直じゃないな」


と言うとシズナは唖然としたあと


「お前が言うか!」


と笑った。そんなシズナの明るい笑い声に巧馬は嬉しくなった。

ホテルにつき部屋に入り荷物を下ろし紙袋を机の上に置いた巧馬が


「良いお母さんだな」


と言うと巧馬の中のシズナは恥ずかしそうに


「ああ…良い母さんだった。」


と言った。巧馬は紙袋からタッパーを取り出しながら


「なあ何でリーコさんなんだ?前から女性が好きなのか」


と聞くと少し間があって


「いや彼女が初めてだ…」


と言った。


「初めて」


巧馬が聞き返すと


「オープンスクールで初めてみたときから気になって、それから人として好きになった。」


あたたかい思いが流れ込んできた。


「ちょっと待って初めて会ったのは入学式だよなリーコさんはそう言ってたぞ」


と言うと頭の中の声は


「本当にリーコさんは困った人だ。」


と笑った。巧馬はおいおいと思いながら


「じゃあリーコさんの勘違いって事か」


と言うと頭の中のシズナの声は


「リーコさんはそういう人なんだよ、だから面白くて楽しくて忘れていた物を思い出させてくれる…

まるで探していた魂の半分を見つけたみたいにね。」


と言うと色々な思い出が溢れてくる。それは巧馬にも伝わった。


「どんだけ好きなんだよ…なぁそれって俺にもわかる日がくるかな」


と聞くと


「そうだな、そのうちわかるといいな。」


シズナは続けて


「お前の中のリーコさんへの思いは私がいなくなったらどうなると思う」


と言うシズナの問い掛けに巧馬は驚いた。


俺の中の思い?


「今のお前は私の思いにシンクロし錯覚をおこしているのかもしれない。だから本当にリーコさんを好きなのか信じきれなくて不安なんじゃないか」


巧馬はシズナの言葉にドキッとして


「俺のリーコさんへの思いは本物だ」


と言った。シズナは確信めいて


「お前は何度も違うと打ち消しながらも、もしかしたらと思っていたんだろ。だからはっきりさせるために此処まで来た」


巧馬は強ばった


「違う俺はあんたが来たがってたから」


と言う巧馬に


「そうだな私には時間がないからな…でもお前にはたくさん有るんだ。気持ちを確かめ結論を出すのは後でもいいんじゃないか」


と言うと巧馬は息をのみ


そうだ俺は自分の気持ちをハッキリさせたかった。そして自分はシズナさんの身代わりじゃないと確認したくて…


巧馬の思いを感じたシズナは


「だから、ここからが本当のはじまりの始まりだ。」


と言った。巧馬は驚いて


「え?本当の始まりの始まり?」


と聞き返した。そんな巧馬に


「彼女が優しくてお人好しで、そのままのお前でいいって受け止めてくれるのは分かったよな」


と言った。巧馬はうなずき


「ああ」

「そんなリーコさんのこれから先をお前の目で知って行けば良いんだ。」


と言うシズナの言葉に巧馬は


「俺の目で」

「そして本当の自分の気持ちが分かった時に桜の下でリーコさんに言えばいい…必ず何処かで見てるから。」


と言いシズナの声は消えた巧馬はシズナの言葉を繰り返して


本当の気持ちが分かった時に…必ず何処かで見てるから…


と言うと驚き目を見開いて


シズナ…あんたまさか


と呟いた。




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