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桜と手紙とハンバーグと…

「その本当に寝るつもりじゃなかったのよ、ここんとこあんまり眠れてなくて」


と近くのカフェで恥ずかしそうに謝る李々子に巧馬は優しく笑い


「俺の肩でよく眠れたんなら良かった」


と言った。すると李々子が


「永塚ってさ結構モテるでしょ絶対にモテるよね」


と言うので巧馬は目が点になって


「どこからどうしたらそうなるかな」


と聞くと李々子が


「だって…俺の肩で眠れて良かったなんて甘甘(あまあま)で恥ずかしいこと普通は言えるわけがないもの」


と言うので巧馬は困って


「甘甘って…そのままを言っただけなのに」

「この前だって…だから絶対にやり手なのよ」


と李々子が言ったとき


「あのタルトセットとコーヒーを…」


注文したものを持ってきた店員が困った顔をしてたっている。李々子は苦笑いをし巧馬は置いてもらうように指示をした。店員はタルトセットとコーヒーを置くとそそくさと去っていった。巧馬はため息をつき


「あーあリーコさんのせいで変な目で見られた」

「そっそれを言う」


と言うと巧馬はにっこり笑って


「俺が付き合ったことがあるのは2人。一人は高1の時で2人目は大学に入ってすぐって、普通は言わないからねこんなこと」


と言い巧馬はコーヒーをのみだした。李々子が


「なんで別れたの?」


と聞くと巧馬は


人の傷口をエグルのね…


と思いながらコーヒーをおき李々子を見て


「一人目は他の人を好きになったのと2人目は…俺が入院したから」

「えっ入院してたの?」


と李々子が聞くと巧馬は


「3年前事故にあって失明したんだ。あの頃は悔しくて辛くて自分の事しか考えられなかった。だから彼女がどんな思いでいたかなんて気にもしてなかったんだ」


李々子はいつも元気な巧馬の意外な一面に驚いていた。


「そんな彼女に気付いた時にはもう遅かったって言う、ダメなヤツだったんです」


と言う巧馬に李々子は


「でも、あとになって後悔したんでしょ彼女さんに幸せになってほしいって思ったんでしょ」


と李々子が言うと巧馬は辛そうな顔をして


「思ってたずっと…」


と言うと李々子は前のめりになり


「だったら今からでも」

「去年結婚した…らしい」


と言い巧馬は李々子を見た。李々子は


「結婚?」


とポカンとした。巧馬は笑って


「俺の事で悩んでいたときに親身になってくれたヤツとね」


と言った。李々子は何度も頷きながら


「それは良かったっていうか…」


と言いタルトセットの紅茶を飲んだ。そんな李々子に


「リーコさんて何だかんだ面白いね」


と巧馬が言うと李々子はむせて


「面白いって私は…まあいいや。それより私が結構年上だって分かってる?(うやま)ってくれてない気がする」


と言うと巧馬は


「そんなことない敬ってます。だってこのこと話したのはリーコさんにだけだし」

「えっ」


李々子が自分にだけ話したと言われて戸惑いながら巧馬を見ると。巧馬も李々子を見ていた。


カフェを出て駅に向かって歩いていると李々子が


「なんか今日の永塚ってさ…」


と言い先にいくと巧馬がとなりに走りよって腕をつかみ


「何?途中でやめられたら気になるし…そうだ永塚って名字じゃなくて名前で呼んでみてよ」


と言われドキッとした李々子は


「急に何を言うかな?ここでなんてやだよ」


と言うと巧馬が


「俺のお願い聞いてもらえないのか、悲しいな」


と言うので李々子は真っ赤になり


「言わない絶対言わない永塚は永塚なのとっとと行くよ」


と足早に歩き出した。李々子は顔の火照りを冷やそうと手であおいでいた。


いつもは後輩に似て優しいのに今日はなんて意地悪なんだろう

でも今日の永塚って好きかも…いやいや好きかもって乙女か!


とぶつぶつ言いながら歩いていく李々子を巧馬が見つめていると李々子が


「永塚遅い早く来ないとご飯作らないからね」


と振り返った。巧馬はフッと笑って


「わかった行く行くから」


と言いながら走りよっていった。


「李々子ちゃん…と巧馬」


向かいの道にいた颯也が二人を見つけた。


「なんだやっぱり二人ってそうなんだ」

「颯也まった?」


女性が颯也に駆け寄って


「どうしたの?」


と聞くと颯也は


「なんでもないよ行こう」


と言い女性と2人で去っていった。李々子と巧馬は電車に乗り最寄り駅で降りて李々子の家に向かい歩いていた。


「あのさ変なこと聞くんだけど、人の思いってその人がいなくなっても伝わると思う?」


李々子に突然聞かれて巧馬はドキッとした。


「変なこと聞いてごめんね」


と言う李々子に巧馬は


「もしかして2年前に亡くなった友達の事?」


と聞いてみた李々子は頷き


「永塚が話してくてたから今度は私が話す番だもんね」


と言って巧馬を見ると


「じゃあリーコさんの得意な煮込みハンバーグが食べたい」


と言った。李々子はビックリして


「なんで得意料理知ってるの?」

「秘密」


と言う巧馬に李々子は秘密って何よと思いながら


「じゃあ買い物手伝ってよね」


と言い歩きだした。2人は並んで買い物をしたあと李々子の部屋に向かった。


「よし後は煮込むだけ」


と李々子か蓋をすると隣で見ていた巧馬が


「うまそうリーコさんお手製の煮込みハンバーグ楽しみ」


と言うので李々子は自慢げに


「めちゃめちゃ美味しいよ…多分」

「多分って」


と聞くと最近作ってなかったと李々子かいった。


「後は俺が見てるからリーコさん座ってて」


と巧馬が言うと李々子が


「そう?ありがと永塚はいい旦那になるね」


と言い腰かけた。そんな李々子に


「それって誉めてんの?」

「もちろん誉めてるよ」


と言って李々子は机に突っ伏した。そんな李々子に巧馬は


「リーコさんそろそろ話し聞いても良い?」


と言うと李々子は話し出した。


「なんで亡くなったかって事から話さないとね」


そう言って李々子は息を調えて話すのを、巧馬は手を動かしながら聞いていた。


「あれは地元に一緒に帰る予定の前の日だった。急に用事ができたから先に帰るって言い出してその友達は夜行バスで先に帰ったの。

そのバスがあんな事故にあうなんて思わずに」


巧馬は手際よくお皿に盛り運んできて机におき李々子の向かいに座った。


「ずっと気になってたの、なんで先に帰ったのかなって」


李々子は切なそうに微笑み巧馬を見て


「そうしたらね、おとつい亡くなった友達のお母さんから手紙が届いたの。友達が私宛に書いた手紙…」


巧馬は黙って話を聞いていた。


「私の為だったの私があの校庭の桜の花が見たいって言ったから。だから先に帰って写メを送るつもりだったって」


李々子はその手紙を取りだし巧馬に渡した。


「読んでいいよ」

「え」

「いいから」


巧馬は手紙を開いて読み出した。


『私はあの桜の下で貴方と逢えましたか。

去年あまり咲かなかったようなので先に帰ってメールを送ります。

どう?綺麗かな?

私はずっとあなたに言いたかったこと言えましたか?

あなたに伝わりましたか?

どんな風に思いましたか?

答えはゆっくりでいいので必ず教えて下さい。

あの日と同じ桜の下で逢えるのを楽しみにしています。』


李々子はため息をついた。


「あの日って多分入学式の事だと思うの。

うちの学校ね入学式の最後に吹奏楽部の演奏が恒例で、用意まで少し時間があったから一番お気に入りの場所で音出しをしてたの」



校庭の隅に他の木と離れて一本だけ植わっている桜の木の下で李々子はフルートを吹き音出しをしていた。

気が付くとその子は少し離れたところから李々子を見ていた。胸元には新入生のリボンがついている。李々子はその子に近付き、入学式に遅れるよと言い手をとり一緒に体育館に向かった。


「そうしたらねその子が後で吹奏楽に入部してきたんだ」

「大切な後輩だったんだね」


と巧馬が言うと李々子は切なそうに微笑んで


「うん」


と言った。巧馬はそんな李々子に


「会いたい?」


と聞くと李々子は


「そりゃあ会いたいよ、だって聞きそびれた答えを知りたいから。それにねいつか逢える気がするの」


巧馬はドキッとして


「なんでそう思うの?」

「その子には五歳年上のお兄さんがいてね、大好きだったらしいんだけど病気で12歳で亡くなったの」


巧馬は少し驚いて李々子を見た。そんな巧馬に李々子は


「そのお兄さんは白血病だった」


と言った。言葉を失っている巧馬に李々子は続けて


「3才で発症したらしい。その子の知ってるお兄さんは今にも消えそうではかなくて、お母さんはお兄さんに付きっきりで家に1人でいるのはすごく寂しかったらしい」


ズキッと目の奥が痛くなる巧馬。


ああそうだ寂しかったずっと。

でもあなたと出逢ってから一緒にいるときは楽しくて、寂しさを感じる暇はなかった。あなたは知らない私がどれほどあなたを思っていたか。


李々子はアルバムを取り出して眺めながら


「ずっとドナーを探してたんだけどなかなか見つからなくて家族とも型が合わなくて…その影響なんだろうね臓器提供カードをいつも持ち歩いてた。わたしに何かあったら真っ先に駆けつけますって」


「本心だった真っ先に駆け付けるつもりだった」

「え?」


李々子が驚いて見ると巧馬がボーッと李々子をみている。


「永塚?」


と李々子が声をかけると巧馬はハッとして


「ごめん俺…」


と言う巧馬に李々子は


「やだなぁ暗くなんないでよ、私はいつか逢えると信じてるんだから」


と言う。そんな李々子に巧馬は


「なんでそんなに信じられるの?」


と聞いてきた。李々子は微笑んで


「あの事故の時もう助からないって分かって、おじさん達は悩んだ末に臓器提供をすることにしたの。それが供養になるからって」


そういい李々子はアルバムを閉じた。


「だから、きっと誰かの一部になって生きてるって思うの」


巧馬はただただ驚き李々子を見た。


「いつか必ず何処かで逢える」


そう言い切なそうに小さく笑う李々子を、巧馬はなんとも言えない思いで見ていた。


リーコさんあなたの友達は俺のなかで生きてる。


巧馬のなかに小さなとげのように暗い思いが溢れる。


リーコさんはその人と俺のどちらを選ぶんだろう。もしその人を選んだら…何を考えてるんだ俺は


巧馬は息苦しさを感じていた。そんな巧馬を見て李々子が


「永塚、大丈夫?」


と声をかけると巧馬は李々子を見つめ


俺が逢わせてあげる


と誓った。そして


「大丈夫、だからリーコさん逢えるって信じていて」


と言った。その答えに李々子は嬉しそうに微笑みながら


「ありがとう永塚に話せて良かった。この話をしたのは永塚にだけだからね」


という李々子に巧馬が優しく笑い


「わかった2人だけの秘密だね」

「ふた…うん2人だけの秘密って料理冷めちゃったし早く食べよう。いただきます」


と言いあわてて食べ出した。


「いただきます」


そう言って一口食べた巧馬に


「味どう?」


と心配そうに李々子がきいた。


「うまい‼️すごくうまい」

「本当?良かったぁ」


と喜ぶ李々子を見た巧馬は


「そうだリーコさん」

「なに?」

「写真とっても良い?」


と言った。


「二人のだけの写真が1枚もないから」

「ふた…良いけど」

「じゃあ隣に行くね」


と言って李々子のとなりに来てスマホをかざした。


「はい、とるよ…さん、に、いち」


頬にキスする巧馬


「え?」


李々子は驚いて巧馬を見た。そんな李々子に優しく微笑みかけ


「リーコさんだめだよ、ちゃんと前向いて」


と前を向くように指示すると巧馬は混乱する李々子を横目にシャッターを押した。


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