俺と彼女とプラネタリウム
3日後李々子は仕事に復帰したがあの日から巧馬を見ると心拍数が上がる自分に戸惑っていた。
次の休日、巧馬の携帯に李々子からのメールが
『お疲れ、今日お休みだよね。もし暇なら行きたいところがあるから付き合わない?他に用事があるなら無理にとは言わないけど』
メールを見て、ふっとよぎった。
無理にとは言わないけどってなんだこのツンデレは
ツキンと目の奥が痛くなる
「悪いけど俺が行かせてもらう、あんたは引っ込んでろ」
そう言い巧馬は急いで電話を掛けた。
「なっなんで?電話?」
驚く李々子に
「大丈夫、無理じゃないですよ、だからどこにでも付き合います俺が」
と言うと李々子が
「うん、よろしく」
と言うと
「じゃあ30分後にリーコさんちに行くから待ってて」
と言って電話が切れた。
「いいか今日は俺が行く」
リーコさんが今日、本当に一緒にいたいのはお前じゃない
と頭の中で声がする。
「今日一緒にいたい人が誰かなんて俺には関係ない、あんたは大人しく引っ込んでろ」
鏡を睨み付ける巧馬と少し悲しそうに鏡のなかで頬笑むその人は
「そうか」
と言い消えて行き後にはいつもの自分がうつっていた。着替えをして家を出る巧馬。
俺がリーコさんに感じてるこの思いはあの人のもので、俺の思いは幻想だとしたら…
いや俺は今のリーコさんを好きになったんだ
巧馬は自分に言い聞かせていた。
家に着くと玄関で李々子が待っていた。
「待った?」
と巧馬が言うと
「全然こっちこそ休みに呼び出してごめん、なんか誰もつかまらなくって」
と申し訳なさそうに言う李々子に巧馬は
「他にも誰か誘ってたの?」
と聞くと李々子の目が宙をさ迷った。そして
「ハイハイ嘘です誰も誘ってません。そうです見栄をはりましたすみませんね」
と言うので巧馬は笑ってしまった。
「バカにしてる?」
と李々子が聞くと巧馬が
「そういう所は面白いなって」
「そういう所って何よ」
巧馬は優しく微笑みかけ
「変な見栄をはって墓穴を掘る所」
李々子は真っ赤になって、どうせそうですよとすねた。そんな李々子に
「ハイハイ言い過ぎました」
と言うと李々子はムッとして
「人の真似して本当にムカつく今日はついてないな」
と言うと巧馬は嬉しそうに
「俺はついてて良い日なんだけど」
と言う巧馬の言葉に目を点にする李々子。そんな李々子を見て巧馬が、ん?と言うと李々子は
「なんか永塚君の雰囲気がいつもと違うような気がする」
と言うと巧馬はきょとんとして
「いやいつもの俺だけど」
と言うと李々子は
どうしたんだ永塚、と思いながら
「何だろう本当に今日は雰囲気が違うから戸惑うわ」
と言った李々子を巧馬が見つめると李々子と目があった。李々子は焦って目をそらして
「ほらこの間のお礼ってかお詫び。十矢くんからチケットを1枚もらってて一緒にどうかなって思ったのよ」
と言い鞄からチケットを取り出して巧馬にわたす李々子。
「プラネタリウムか…俺がもらっていいの?」
と巧馬が言うと、どうぞどうぞと言う李々子。
「まさか他の男にもこんな事してるんじゃないよね」
と巧馬に言われて
「こんな事って何て何よ?」
と李々子が言うと巧馬は李々子の顔を覗き込んで
「だからデートに誘うの…まさか本当に誰にでもやってるとか」
と言うと真っ赤になった李々子が
「でっデートな訳ないし、こんな風に男の人を呼び出して出掛けるのはね年甲斐もないけど結構勇気がいるってか何てか」
と言いふと顔を上げるとじっと李々子を見つめる巧馬がいた。
えっなっなに?何なの?
きょときょとする李々子に巧馬は楽しくなって
「なるほど、じゃあリーコさん今日は先に俺の行きたいところに行ってもいいかな」
と言われて李々子が
「うんいいけど」
と言うと巧馬は李々子の手を握って歩きだした。李々子が
「ちょっと、どこに行くの?」
と聞くと巧馬はついてからのお楽しみと言った。
その一時間後、李々子の雄叫びが館内に響いた。
「いやぁ高い怖い下見せんなぁ」
「リーコさんみんなの迷惑になるから静かに」
と巧馬が李々子に言うと李々子は恨めしそうに
「だからやだって言ったのに、なんでよりにもよって高所恐怖症の私がスカイツリーに来てんのよ、揺れるしいやだってば」
と言い巧馬の腕にしがみついている。巧馬はけろっとして
「そんなに苦手だったら言ってくれれば良かったのに」
「いや苦手だって言ったし」
「でも大丈夫って言ったし」
巧馬に突っ込まれてうったとなりながら
「それは、永塚が行きたいって言うから我慢したのよ、それなのに窓際に押すし下を見ろって言うし卑怯でしょ」
と言うと巧馬は悪びれず
「だってリーコさん近くで見ないから見せてあげようと思って」
と笑った。李々子はムッとして
「どっちかって言うと楽しんでるんでしょこの鬼」
とすねる李々子を見て巧馬は
「バレてたんだ」
「当たり前よ!」
と言う李々子に巧馬は
「ハイハイおっしゃる通り楽しんでましたごめんなさい、次に行くところは大丈夫だと思うよ」
「本当でしょうね信じられないわ」
と李々子が言うとクスッと笑ったあと巧馬はへっぴり腰の李々子の手をとり
「取り合えず信じてみてよ」
とニコニコして言う巧馬に連れられ李々子はエレベーターに乗った。
地上につきエレベーターを降りた二人は隣の水族館に入っていった。
「うわぁちょっとペンギンが飛んでるみたい、こう見るとペンギンも飛べるのよね」
とさっきとは違い元気に見て回る李々子に巧馬が
「なるほどそう言われれば飛んでるね」
と言うと李々子は自慢げに
「でしょう」
と言った。巧馬は子供のように楽しんでいる李々子に
「リーコさんて水族館初めてじゃないよね」
と聞くと李々子は微笑んで
「水族館は2…3年ぶりかな結構すきなんだけど、ここは初めてだからワクワクするってかあれ刺身何人前?」
可愛いとかいいながら刺身にしちゃうんだ、なかなか面白い
そう思っていると李々子が
「永塚クラゲってね見てると凄く可愛いんだけど奴等って刺すんだよ、マジで刺すんだよ」
と突然言った。巧馬が
「クラゲに刺されたことがあるの?」
と聞くとよくぞ聞いてくれましたとばかりに
「あるわよ、子供の頃に一回刺されたんだけどあの時は死ぬかと思ったよね。まあ結局は死ななかったからここにいるんだけど、それがあってから海に行くのが怖くなってプールも面倒くさいなって」
巧馬はハッと気づき、まさか
「リーコさんまさか泳げないって言うんじゃ」
「泳げるし!少しなら泳げるし!」
「いや少しって」
「じゃあ永塚はどうなのよ」
と聞くと巧馬も
「そういやぁここ三年以上泳いでないからな…」
と言って李々子を見ると嬉しそうにニヤっとして
「ふーんへー」
なんだこれ可愛いってかムカつくってか…
「なんか俺の事バカにしてない?」
「してる、さっきのお返し」
と言い子供のように目をキラキラさせている李々子を見て少しずつ知っていく李々子の色んな表情を楽しんでいた。
大水槽の前にたった李々子はポカンと見上げ
「凄い凄い凄い」
そう言って振り返り
「ちょっと永塚こっち来て凄いよ」
と言うと巧馬は李々子に近付き一緒に魚を眺めた。
「これからはプラネタリウムと水族館をセットにしよう」
と李々子が言うと巧馬が
「じゃあ俺もセットってことで」
「はい?」
驚き見る李々子に巧馬はにっこり微笑んで
「じゃあ行こうかプラネタリウム」
と言って差し出したその手を見た李々子は少し躊躇したあと繋いだ。
本当に今日の永塚はどうしたんだろう…まさかこれが本当の永塚?
と見上げる李々子に
「ん?何?」
「いや何でもない」
と言って席につき顔を見合わせると巧馬が
「リーコさん今日って何かあった」
と聞くと李々子は不思議そうに巧馬を見て
「えっ?」
と言った。巧馬は上を見ながら
「だって珍しいことなんだよね、こうやって休みの日に男と出掛けるのは」
と言った。李々子は困った口調で
「男って…永塚って本当に意地悪だね」
「意地悪?」
「うん年上に向かって生意気」
と言うと巧馬は
「たぶんリーコさんにだけだから」
と言って李々子を見つめた。居心地の悪くなった李々子は
「今日はね大切な友達の誕生日でね…」
と途中で口ごもった李々子に巧馬が
「他にもまだなんかあるでしょ」
と言うと李々子は
「プラネタリウムは2年前に亡くなったその友達と一緒によく見に来てたの、でねその友達の…」
また口ごもった李々子を巧馬がじっと見ている。李々子は星を見上げて
「何ていうか色々あって今日は一人になりたくなくて、気がついたら永塚が浮かんでたの」
そう言い照れて横を向く李々子を見ていた巧馬が
「何だろう何かうれしい」
「え?」
「だって俺が浮かんだんでしょ、おかげで俺は今日1日リーコさんと一緒にいられる」
と巧馬が言うと李々子は嬉しそうに
「まあ喜んでくれたならいいけど」
と言った。
今日は何かあっても譲らない俺のままでいる
そう巧馬は自分のなかに声をかけた。
そんな巧馬の思いに気付くわけのない李々子は笑顔で
「永塚がいて良かった」
と呟いた。2人はゆっくりと星を見上げた。
穏やかな音楽と柔らかな声がゆっくりと星座を説明していく。
「すごいね」
と李々子がいった。
「うん、こうやってると宇宙にいるみたいだ」
と巧馬が言うと李々子が
「ねえ知ってる?」
「何?」
「宇宙から見ると私たちって地表に張り付いてる蟻みたいなもんだよ。あ、もっと小さいかも。
そんな私たちが毎日泣いたり笑ったりアクセクして生きてる。宇宙からしたら瞬きするくらいの間にね。
不思議だよね人ってどんなときでもお腹がすくんだよ」
突然話が変わったので巧馬か驚き
「お腹すいたの?」
と聞くと李々子は
「さあね」
と言った。巧馬は
そうだな毎日泣いたり笑ったりそれでも生きてる。
と思いながら星を見上げていた。
どれくらい時間がたったのか巧馬が気付くと肩に重さが。それは李々子の頭だった。
気持ち良さそうだあまり寝てないかな。
それにしても忙しい人だなコロコロ表情が変わる…
そういやぁ店で本が見つからなかったときデータを見てから探せばいいのに大丈夫なせばなるって拳握りしめて何だかんだ見付けるような人だし…
巧馬はクスッと笑ったあと李々子の暖かさを感じながら星を見上げた。
やっぱりリーコさんが好きだ。今のこの思いは俺のもので俺はこの人のそばにずっといたい。
あんたはもうこの世にいないんだろ、この人を受け止められやしないじゃないか。俺なら受け止められる
巧馬はそっと李々子の手を握った。




