恋の駆け引きはドキドキ
数日後、大学の食堂で巧馬と十矢と航一郎はAランチとBランチを取り合いながら食べていた。
「あ~やっぱAにすりゃ~よかったかなデミハンバーグうまいっすよ巧馬さんもう一口ください」
と箸をのばしてくる航一郎の手をパシッと巧馬ばしばいて
「お前さっきからそうやって半分以上食ってるだろ本当に油断もすきもないやつだな」
と言うと十矢が
「巧馬さん、これエビフライあげますから落ち着いて」
と巧馬の皿にエビフライを置いた。それを見た航一郎が
「十矢、お前って巧馬さんの嫁?」
巧馬はむせて咳き込んだ
「なんて変なこと言うんだよ」
「そうだぞコウ、巧馬さんには夢の中の彼女がいるんだからあんまりいじめちゃダメだぞ」
と言ったので航一郎はハッと気付き
「そうだった妄想から脱してリアルに会えたんすよね、どうなんすか?」
と言った。十矢は驚き
「えっ会えた?」
と聞くと巧馬は嬉しそうに
「ああ偶然出会ったのが夢の中の彼女だったって言う嘘みたいな話なんだけどな」
十矢はフッと笑ったあと遠い目をして
「そんなことってあるもんなんですね」
だったら俺もあなたと…もう一度会えるといいのに
十矢は切なそうに呟いた。巧馬は感慨深げに
「キセキって言った方がぴったり来る気がする」
と言った。たまらず航一郎が
「だからその人ってどんな人なんですか?歳はいくつなんすか?」
と聞いてくる航一郎に巧馬が
「お前はどんな答えがほしいんだ?」
とあきれて言うと
「だってずっと夢に見てきた人でしょ、男としてあんなことやこんなことしてって妄想も膨らんでたと思うんすよね」
巧馬は目を点にして
「何を妄想するって言うんだよ俺はお前とは違うんだ」
と言うと航一郎はニヤリとして
「まあ俺は妄想しまくりますけどね、だからどんな感じなんすか?凄く気になる~その絶世の美女の事」
とノリノリで言う航一郎に巧馬の表情が曇り
「確かお前の絶世の美女の基準はミロのヴィーナスだよな」
と巧馬が言うとキョトンとして
「よく覚えてるっすね、そんなの当たり前っすよ絶世の美女って言ったらビーナス一択ですねバリバリ募集中です」
と言う。そんな航一郎にひきつりながら巧馬が
「いやいないから…だいたいヴィーナスは彫刻だし現実にはいないから」
と言うと残念そうに航一郎は
「えーマジでだって最強なのにあのボディーライン」
と言うので巧馬は
「そこかそこなのか、そんな都合よく絶世の美女がいると思うなよ」
と言った。黙って話を聞いていた十矢が
「巧馬さんその人が夢の中の彼女だっていう確証はあるんですか?もし違ってたら」
と聞いてきたが巧馬はフワッと微笑み
「ああ彼女で間違いない。合コンの帰りによった彼女の家で卒業アルバムを見た時に確信したんだこの人で合ってるって。ほんっとリーコさんは変わらないなって思った」
十矢は驚いた表情で巧馬を見て
「リーコさんって名前なんですか?」
と言って考えこんだ十矢を不思議に思いながら巧馬が
「ああ店内でも呼びやすくリーコさんって呼んでるんだけど、本当は李々子さんて言うんだ」
と答えた。十矢は確認のために
「巧馬さんのバイトって書店でしたよね」
「うんそうだけど」
それを聞いて十矢は確信したように
「巧馬さんの探してたのって李々子さん…赤池書店に勤めてる瀬名李々子さんだったんですね」
いつもと違う真剣な十矢を見て巧馬は
「そうだけど十矢どうしてリーコさんの名前を知ってるんだ?もしかしてリーコさんと知りあいなのか?」
と言うと航一郎が思い出したように
「赤池書店って十矢の前のバイト先じゃなかったっけ?」
と言った。巧馬は驚きながら
「前のバイト先って何でそれを言わないんだよ」
と十矢にいったが十矢は
「まさか巧馬さんの夢の中の人がリーコさんだったなんて思ってもみなかった」
と言った。巧馬も
「確かに俺も夢の中では彼女の呼び名しか知らなかったから、フルネームを知ったのは合コンで合った時だし」
と黙りこむ巧馬に航一郎が
「ちょっとまった、合コンの帰りに卒アルってことはその日に彼女の部屋に行ったんすか…うわぁ巧馬さんって意外と手が早かったのね」
と言われて慌てた巧馬は
「あのなぁ手が早いって会った初日にそんなことするわけないだろお前じゃないんだし」
「えー巧馬さんは何をするんですかぁやだなぁ知りたいなぁ」
と言う航一郎を巧馬がしばこうとすると十矢が少しホッとして
「そうですか、そうですよね巧馬さんとリーコさんですもんねありえないな」
と言うので航一郎は
「十矢そんなことってなんだよお前まさか…俺がいってるのは徹夜でカラオケの事なんだけど、二人とも可愛いっすね」
と嬉しそうに航一郎が言うと巧馬が本気であきれて
「コウお前って最悪だな本気で怒るぞ」
「これくらいいいじゃないっすか面白いのに」
と言いヘラと笑った。
この展開ってどっかで見たことあるな確かあれは…伊織さんだ
巧馬と十矢は心底ため息をついた。
「まあ巧馬さんをとられるのはかなり妬けますけどリーコさんなら…うまく行くこと祈ってます」
と十矢が言うと巧馬は
「おぉありがと」
と答えた。すると航一郎が
「巧馬さんちゃんと聞いてたんすか?十矢はかなり妬けるったんですよ」
と言い航一郎は十矢のとなりに座り肩をだいて
「十矢、俺が巧馬さんより良い男連れてきてやるからな」
と言った。そして十矢は航一郎をハグし
「コウ頼んだ。あの人は薄情だから俺は捨てられるんだ」
「おっおまえら誤解されるからやめろ」
と巧馬が焦って言うとゲラゲラ笑いだし2人は片付けもせず出ていった。
あとには唖然とした巧馬がポツリ。
「あいつら覚えてろよ」
巧馬は食器をテキパキと片付け冷ややかな視線のなか食堂を後にした。
巧馬さんがリーコさんとこれは偶然なのか…
「おい十矢?お前、顔が怖いぞ」
と航一郎に言われて十矢は慌てていつもの穏やかな顔になり
「ちょっと考え事をしてた」
と言い歩きだした。
「李々子ちゃん、こんにちは」
店内で本のチェックをしていた李々子が不意に呼ばれて振り返ると爽やかオーラ出しまくりの颯也がいた。
「えっと確か八神さん」
颯也はポカンとした。
「八尾颯也だよ忘れたの?この間店に来たときも八幡さんとか間違えたしもう颯也でいいよ」
と言うと李々子は真っ赤になって
「あっそうでした。私って名前と顔を一致させるのが苦手で気にさわったらごめんなさい。永塚君の時もはじめのうちは間違ってたし」
と言った。またもや意外な対応に颯也は
まだ永塚君呼びなんだな
と安心していた。
「あのさ李々子ちゃん今度の日曜日って暇?2人でディズニーに行かない」
と颯也がキラキラした笑顔で言うと李々子はキョトンとして
「今度の日曜日?今度の日曜日は仕事になってて」
と言うと残念そうに
「そっか仕事かぁじゃあ仕方ないな。じゃあその次の週は?なんなら平日でも休みとるし」
と言ってきた。李々子は
「じゃあ火曜日どうですか?店が休みになるんで皆で行けるから」
皆でってちょっと待った
「どうして皆なの?俺は二人で行きたいんだけど」
ぐいぐい押してくる颯也に李々子は引き気味になり
「だってみんなで行った方が楽しいじゃないですかせっかくの休みなんだし」
この子は分かってないのか?それとも誤魔化してるのか?
颯也は平静を装い
「休みの日まで職場の皆と一緒はどうなんだろうね」
と言うと
「店長のお子さんディズニー大好きなんですよ、確か団体割引って25人以上だから知り合いも誘ってもらって…」
いやいや団体は勘弁してほしい
「分かったディズニーは今度ってことで。そうそう、この前ほしい本のメールするって言ってたのにアドレスを聞けてなくて送れなかったから教えてもらえる」
と言われ李々子は
「ああそうでしたね」
と言いアドレス交換をした。颯也は優しく笑い
「後で必ずメールするからまたね」
と言い去っていった。それを見ていた松岡は
リーコさんがアドレスをアドレスを教えてた。俺なんか半年かかって仕事の連絡網で教えてもらったのに
と放心状態で奥へ入っていった。
そんな松岡とは正反対にニコニコしながら颯也が巧馬のところにやって来て
「よう」
と巧馬に声をかけた。
「八尾さんまた来てたんですか、なんか良いことでもありました?」
「さっき李々子ちゃんのメールアドレスGETしたんだ」
チカッと目の奥がいたくなる巧馬。
「何でそれを俺に言うんですか?」
「お前が聞いたからだろなんか良いことがあったのかって」
「そうですけど」
「ふーん」
と言ったあと颯也はニコリと笑って
「そうそう巧馬ってまだ永塚君呼びなんだな安心したよ」
「どういう意味ですか?」
と不思議そうに巧馬が聞くと
「俺、李々子ちゃんにグイグイ行くから覚悟しろ」
といい店を出て行った。巧馬が何なんだあれって牽制?と思っていた時
「永塚~休憩いっちゃって」
ひかる店長の声が無線から聞こえてきた。巧馬が休憩室に向かうと李々子がうなだれていた。
またチカッと巧馬の目の奥がいたくなる。
またこの痛みかと巧馬が呟いた。そんな巧馬に李々子が
「あー永塚君お疲れさん。そうそう八尾さん?て人から今度皆で遊びにいこうって誘われたけど断ったよ」
と言った。一瞬の間のあと巧馬は冷蔵庫からジュースを二本取り出し一本の蓋を開けて李々子に渡した。
「はい」
「ありがとう」
巧馬は自分のジュースの蓋を開けながら
「それって本当は2人でいきたいって言われたんでしょ」
と言ったその言葉に李々子が
「なんで分かったの、そうなんだけど2人ではちょっと無理だな」
と言うとほっとした笑顔になった巧馬が
「リーコさん至近距離接近恐怖症だし特に男性になれるまで時間かかるから皆で行くのがいいと思う」
その言葉に李々子は目を見開いた。
「ちょっと、やっぱりなんでその病名知ってるの私たしか言ってないよね」
驚いた表情の李々子に言われ巧馬は口ごもったあと
「そう松岡さんに聞いたから。それに学会では発表されてるんですよ知りませんでしたか?」
とごまかした
「そうなんだ永塚君ってまさか医者の卵?」
と李々子が聞くと一瞬きょとんとした巧馬は
いっ医者の卵って
「今から医学部に転部する気はないですよ」
「そっか実はねその病名を始めに付けてくれたのが仲の良かった後輩なの」
そうだったね…
「それってこの間お泊まりした時に教えてくれた後輩?」
「お泊まりって言うな、えっあの時言ってたの?」
巧馬が少し意地悪そうに
「うん他にもいっぱいお泊まり楽しかったなぁ」
「だからお泊まりって言わないの」
「でも、そのお陰で今のリーコさんの事が色々分かったんだよ」
と言うと二人は見つめ合った。めをそらした李々子は
「その事は恥ずかしいから忘れなさい」
と机に突っ伏した。
「分かりました今は忘れておいてあげます」
そう言い李々子の頭をポンポンと撫で去っていった。
いっ今のなに
不意打ちに戸惑う李々子だった。




