気付かないうちに恋に落ちているものだ
巧馬の中に目覚めたものそれは
授業が終わり店についた巧馬は松岡と売り場に出ていた。
遠巻きに見ていた女子高生たちは2人を見て色めき立っている。
「松岡さんなんか俺ら見られてます」
松岡は眼鏡をなおしつつ
「永塚君これは気にしたら終わりなんだ、気にせず仕事をこなすそれが俺たちのミッションだ」
と言う松岡の思わぬカッコ良さに巧馬が
「松岡さんカッコいいですね」
と言うと松岡はビックリして巧馬をみて真っ赤になっていった。
何なんだこの人まさかあっち?
と後ずさりをする巧馬にどうしたのかと松岡が聞いてきたので
「いや何でもないです」
と巧馬はひきつりながら言った。
そんな2人をレジから見ていた美緒が向かいで本を並べていた李々子に近より
「あ~もう目をつけられちゃいましたね。リーコさん気を抜かないように頑張ってください」
と言うと李々子が
「何が?」
と言うので唖然とした美緒は
「リーコさん鈍すぎますよそれじゃあ相手が可愛そうですよ」
と言った。李々子は訳がわからず
「美緒ちゃん何を言ってるの?」
と聞くとイラッとした美緒は
「もう良いです」
「ちょっと美緒ちゃん何怒ってんのよ」
やだ、リーコさんが悪いわけじゃないのになに私ったら怒ってるのよ。それもこれも松岡さんのせいなんだから
「だから怒ってませんてば」
「いやいや怒ってるってどうしたの話を聞くよ」
と言う李々子に美緒は
だから何でイライラしてるのか自分でも分かんないんだから聞かないで
と思いながら去っていった。
何なの?まさかストレス?どうしよう店長に言った方が良いかな
いやいやプライベートなことだったらいけないし
と悩んだり思い付いたりコロコロ表情が変わっている李々子を巧馬はちらりと見て、本当に忙しい人だなと思いつつこの間の事を思い出した。
合コンの帰り電車のなかでいつの間にか巧馬の肩に頭をおいて寝入ってしまった李々子。
巧馬は肩にもたれる李々子の髪を思いがけず撫でていた。
俺ったらつい撫でてしまった
と巧馬が手を眺めている時、李々子は夢の中で懐かしい人に会っていた。
リーコさんあの桜の木は何で好きなの?
だって毎年一番綺麗に咲いてたでしょ
と言うと満開の桜が現れた。
そうだ帰ったら花見しようよ去年はお互いに忙しくて帰れなかったから
うん、そうだねじゃあリーコさんがお弁当作ってよ
あんたね私がそんなに料理上手くないの知ってて言うか
だって食べたいから約束だからね、あっリーコさんもうすぐ駅だよ早く
と言い去っていく。李々子は慌てて手を伸ばして
待ってどこに行くの?
と言うと姿が消えていった。
電車が最寄駅に入っていくと巧馬は李々子に
「リーコさんそろそろ着くよ起きて帰るよ」
と声をかけた。すると突然李々子が飛び起きて
「だから分かってるって、いつもの流れでいくよ」
と言うので巧馬が驚いていると扉が開いた。
李々子は巧馬の腕をつかみ電車から降りた。
上機嫌で歩いていると、いつもよる帰り道のコンビニを見付けた。
李々子はにっこり微笑み巧馬を見て行くよと中に入っていった。
慌てて巧馬がついて入ると李々子がかごを持って待っている。
巧馬がそばにいくと李々子は
「はい持ってて」
と言いながらかごをわたした。そして楽しそうに
「梅酒に缶酎ハイに、そうだビールいるよね?あとおつまみに~ねえ他にもなんかいるものある?」
と聞かれて巧馬が言おうとしたら
「こんなもんでしょ」
と言い李々子はさっさとレジへ向かった。
自己完結してる
巧馬はフッと笑った。
レジで財布を出そうとする李々子の横から巧馬がお金を出した。
「ありがとう」
と言うと李々子は外に出てしまった。
もう絶対に外でお酒は飲ませちゃいけないな
巧馬がそう思いながら急いで支払いをすませ外に出ると
「まってま北」
と李々子が笑顔で待っていた。巧馬は仕方ないなと思いながら李々子の手を握り
「はい行きますよ家を教えてくださいね」
と言い李々子のマンションに向かって歩き出した。
マンションにつくと李々子は
「入って入って遠慮しないの、いつも来てるでしょ」
と言った。巧馬はビックリして
いや俺は初めてなんだけど
といいながら部屋に入ると李々子はソファーに座りコンビニで買ったものをテーブルの上に並べ出して巧馬に
「なにボーッとたってるの、いつもここに座ってるじゃん」
と向かいを指差した。
明らかに誰かと間違われていると思った巧馬は李々子に
「リーコさん俺が誰か分かってますか?」
と聞くと李々子は懐かしそうに巧馬をみて
「わかってるよ、やっぱね嘘だと思ったんだ死んだなんて…ちゃんと生きてんじゃん」
と言いながら缶酎ハイを開けた
死んでるって誰の事だ
驚いている巧馬に缶酎ハイを一口のんで李々子が
「そうだ、ちょっと待ってね」
と言いテレビ台の横の棚の引き出しからアルバムを取り出した。
そしてページを開いて指差し
「ほらこれ懐かしいでしょ吹奏楽部の写真。この頃は部活が終わってもなかなか帰らなくて、先生に早く帰りなさいってしょっちゅう怒られてたよね」
と楽しそうに話す李々子
「うっうん」
あまりに楽しそうに話すので、巧馬はなんとなく話を合わせてみることにした。
「懐かしいな、これは毎年出てたコンクールの集合写真だよ、みんな若いよね」
巧馬が写真を見ていると李々子が
「そうそう校庭の隅の一本桜覚えてる?一本だけはなれて植えられてて一番綺麗に咲くから毎年楽しみにしてたやつどこだっけ」
李々子がその写真を探しはじめた。しばらくして皆で桜の木の下でとった写真を見つけた李々子は
「これもだけどもう一枚あるからね」
と言った。巧馬はその写真に何かひっかかるものを感じてじっくり眺めたたあと、ページをめくろうとしてふと視線を感じた。
気付くと李々子が巧馬をじっと見ていた。
巧馬がキョトンとしていると
「ねえ、なんであの日一緒に帰ろうって約束してたのに先輩の私を置いて先に帰っちゃったの?何で何でなの」
と李々子が問いかけてくる。巧馬はなんの事か分からず戸惑い
「リーコさん」
と言うと2人は見つめあった。
どらくらいの沈黙だったのか長いようで短いような、その時不意に李々子は糸がきれ眠ってしまった。
あーあ寝ちゃった
李々子をベッドにつれていこうとして立ち上がった巧馬は、アルバムの写真に目を奪われ不意に涙がほほを伝った。
その写真は一本桜の木の下で微笑む李々子ともう一人が写っている写真だった。
ああ懐かしいな
と巧馬の頭のなかに声が響いた。
「誰だ」
と巧馬は問いかけたが返事はない。
気のせいか…
と巧馬はアルバムを閉じ、もとあった棚に戻すとベッドに連れていくため李々子を抱えあげた。
李々子は眠りながらも反射的に巧馬の首にしがみついた。
リーコさん行こうね
と言い巧馬は李々子をベッドに運び布団をかけて去ろうとしたその時、何かにシャツが引っ掛かった。
何に引っ掛けたのかと見ると李々子がガッツリとシャツをつかんでいる。
巧馬は仕方なく…いや離れたくなくてベッドの隣に入ると李々子が抱きついてきた。
李々子さん
その目にはうっすら涙が
それにしてもこの状況は地獄だな…
ねぇリーコさん俺を誰と間違えてるの?会いたかったって誰の事?
それにあの声…気のせいなのかでも聞き覚えがあるような…
巧馬は李々子の体温を感じながらそっと髪をなでた。
それ以上は許さないよ
え?
巧馬の頭のなかで声がする。すると突然睡魔が襲ってきて巧馬は眠りに落ちた。
リーコさん会いたかった
どこからか声が聞こえた。
「永塚君?永塚君?」
と松岡に呼ばれ巧馬は我にかえった。
「大丈夫?永塚君魂が何処かにいってたみたいだよ」
と松岡に言われ巧馬は焦って
「大丈夫です本当です」
と言うと松岡は不思議そうに首をかしげた。そんな松岡は思いきって
「あのさ永塚君この間リーコさんと…」
と言いかけて慌てて
「いやいいんだやっぱり気にしないで」
と誤魔化すと巧馬が
「この間って合コンの事ですか?」
と言うと松岡が
「やっぱり合コンかあ。いや、いいんだ気にしないで。えっとじゃあ次はバックグランドにいこうか」
と言い歩き出した松岡の後ろで
あの日は何もなかった、それにそんなこと未だ許さないよ
と巧馬の中で声がした。




