至近距離恐怖症を知るお前は何者だ
事務所の席に座る巧馬にお茶を出して下がる李々子をひかる店長が呼び止め、わざと白々しく
「彼ってもしかしてリーコ知り合い?」
と聞いた。李々子は焦って
「ひっいやその知り合いのような知り合いじゃないような」
とどもるのを見た巧馬は
「知り合いの知り合いの知り合いです。あの面接してもらっても良いですか?」
とひかる店長に聞いた。
「そうだったまた後でねリーコ」
ニヤリと笑いひかる店長は事務所の扉を閉めた。
たっ助かった~確か永安くん?違うな長橋くんだったっけ…
バイトの事よろしくってって言ってたのはこの事だったんだ
それより余計なこと言わないわよね
「あーもぉ気になって店内に戻れない」
ウロウロとした後、李々子はまだ開けていない荷物の積まれているカートの後ろに隠れた。
ひかる店長は事務所の机に巧馬と向かい合わせに座るとまじまじと見てから
はは~ん多分こいつ合コンに関係あるな
リーコのあの慌てぶりからしても絶対に何かあったな、ほ~ふ~ん
なめるように見るひかる店長の視線に巧馬はたじろぎながら
「あの顔に何かついてますか?」
と聞くと
「いや~最近の子ってかわいいなと思って」
と満面の笑みで言われ巧馬は身震いした。
「君は学生?」
「はい星明星明学園大学の学生です。そうだ履歴書ですよね」
と言い鞄を探るが履歴書がない。
たしか今朝入れたはずなのに…あっ鍵を探してて一度出したから入れ忘れたのか
巧馬は申し訳なさそうに
「履歴書を家に忘れたみたいで明日でも大丈夫ですか?
代わりにこれ人質代わりの物質と言うことで」
と学生証を取り出した。
へー総合情報学部2年ね
「ねぇもの質っていいの?学生証だよ別に明日持ってきても良いんだけど」
と言われ巧馬は
「そっかハハハそうですよね俺ってば」
と恥ずかしそうに言う巧馬に
いや~かわいいじゃないか
と言い舞台プリンターから紙を取り出し横の机からペンを取ってきて巧馬の前にだし
「とりあえずここに名前と年齢と連絡先それからシフトには入れる日を書いて」
と言った。巧馬は展開の早さにビックリし
「えっ採用で良いんですか」
と聞くと
「もちろんよ男手が少なかったからちょうど良かったわ」
とひかる店長が喜んだ。
「じゃあよろしくお願いします」
「こちらこそ色々とよろしく」
ひかる店長の少し含みのある言い方に巧馬はあれっと思ったが、採用になったのと言うことでほっとしていた。
コーヒーでも飲む?と入れかけていた時
「店長~本店から受け取りが来た」
とイヤホンから伊織の声が聞こえた。
チッこれから色々聞こうと思ってたのに
「分かった今行く…ゴメンね呼ばれちゃってとりあえずそれにさっき言ったことを書いてこの書類読んでて、ちょっと行ってくる」
とひかる店長が店内マニュアルをわたし部屋から出ていくと李々子が入って来た。
「ちょっとバイトの話ってこれなの?本当に来たの?」
と言うと巧馬は
「大学の掲示板でバイトの募集を見て受けようと思ってたって言ったでしょ、まさかまだ思い出せない?」
とニッコリして言うと
「思い出した思い出したけど本当に来るってある?」
と言うと
「一緒に働けるの楽しみだなぁ」
「もう決まったの?」
と李々子がビックリすると巧馬が
「うん採用」
とケロッとして言った。
本当かよ…店長ったら絶対に顔で選んでるよね好みで選んでるよね
と李々子が落ち込むと
「そんなに俺と一緒はいや?」
「そんなこと…無いわよ」
とひきつりながら言った後はっと気付き
本当にそれだけ?本当にバイトの話だけ?
「まさか泊まった話とか色々ばらしに来たんじゃないわよね」
と聞くと巧馬は
「えバラして良いの?」
「いや良くないから絶対に秘密なんだからね」
と動揺して言う李々子を見てクスッと笑い李々子のそばに来て耳元で
「あれは二人だけの秘密ですね」
ひゃぁぁぁあ
と飛び退く李々子。驚く巧馬
「そんなに驚かなくても」
と言うと李々子が怒って
「耳元でいうな~」
と言うと
「そうだった至近距離恐怖症だ」
ビクッとなる李々子
なっなんで?
「なんでそれを知ってるの…いやそれより私とあなたは知り合いの知り合いだから特に朝まで一緒に居たことは内緒にするのよ」
と言う李々子を巧馬は覗きこみ
「朝まで一緒にいたことは秘密かぁ」
「そうよ、あの人たちに知られたらそれこそ何を突っ込まれるか分かんないんだから」
「なるほど」
「だから頼んだわよ長政君」
と言った瞬間、巧馬の目が真ん丸になった。
長政って誰?
「ちょっと聞いてるの長政君」
まさかとは思うけど俺の事なのかな
「ちょっと何とか言いなさいよ!!長政君」
とプリプリして言う李々子を見て巧馬は笑い出した
本当にあなたって人は面白い
「なっなんで笑うのよ」
「ハイハイ分かりました約束します。でも俺の名前は長政じゃなくて永塚なんだけど」
えっ?
「なんか、かすってるようでないような最高だね」
と言われ恥ずかしくなった李々子は真っ赤になり
「うっ早く言いなさいよ」
と誤魔化した。
ああ、何処までも夢の中の人と一緒だ
巧馬は嬉しさのあまり大笑いしだした。そこにカチャッと音がして
「お待たせ~」
とひかる店長が入って来て2人をみて
「やだお邪魔かしら?これだから年寄りはね~うふふ」
と出ていこうとするので李々子は
「ちょっと待った」
とひかる店長を引き留めた。そんな李々子にひかる店長はニヤリと笑い
「多分だけどこの子ってこの間の合コンのなんでしょ」
と言われ固まる李々子。
「年下とはねーそれにしたってリーコあんたねえバレバレよ。
何で隠すのかしら変な子ね別にとって食ったりしないのにね~」
と巧馬を見ると李々子が
「いや聞くでしょ色々聞くでしょ!!聞かないわけがないでしょ」
「ちっあんたも少しは成長したみたいね。でもね永塚君の名字を長政君ってのはありえないから」
李々子は目を点にした
「いつから、いつから聞いていたの?」
すると、ひかる店長は獲物を見る目をして李々子に近寄り
「そっか~朝まで一緒にいたんだ~ふぅ~ん」
どんどん青ざめる李々子を横目に
「じゃあ永塚君、明日から仕事頼むわ。時間はメールするからアドレス書いといてじゃね」
と言い事務所を去っていった。
やばい知られた。とうとう欲求不満で会ったその日に若い子を連込むなんて何て手の早いやつなんだ!!
これは色々聞き出す楽しみが増えたぞって言うのよね
「李々子さん心の声がダダ漏れ」
「うわあどうする、こうやってこれから毎日いじり倒されるんだわ」
「李々子さん?」
ひきつり笑いしながら李々子が
いまは店長しか知らないはず、こうなったら仕方がない
「永富くんはうちに泊まったんじゃなくて、隣の知り合いのところに泊まったって事にするのよ」
またそんな面倒くさい事をこの人は
「もしうちに泊まったってバレたら」
バレたら?
「いじめてやる!!」
と言い李々子は一目散に部屋から出ていった。
普通いじめてやるって言うかお子様かよ!?それに永富って誰だよ
と呆気にとられていると突然、眼の奥が痛くなり
うっ
痛みが落ち着き前を向くと目付きの違う巧馬が
「リーコさん会いたかった」
と呟いた。




