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終末ゾンビ世界から100年後の未来へ避難することにしました —防災オタクと半ゾンビの無人島開拓記  作者: ねねこ


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43 道路交通法?なにそれ美味しいの?

 ツバサくんと市庁舎に戻ってくると、迦楼羅がお昼ご飯の準備をしてくれていた。

 ナオトさんのリクエストで、サキイカを使った炊き込みご飯らしい。

 サキイカに小松菜、乾燥野菜を入れて炊きあがったご飯はすごくおいしそうだった。


 うーん、これだけ人数が増えたら、ちょっと主食が足りなくなってくるなぁ……。田んぼはするつもりだけど、上手くいくかもわからないし、来年以降の話になるし……。主食の調達はしてこないとまずいかも。あと、自宅にあるはずのお手製の味噌の回収はしておきたい。一回みんなで話し合ってリスト作ろう。ガソリンは……どうにかしないと。ちょっと相談してみよう。

 

 小学校から戻ってきた3人を加えてお昼ご飯にして、また3人を小学校へ送り出してから、午後の会議が始まった。


「で?アンタたち、どこで寝たい?ちなみにこの建物はアタシたちが使ってるわよ。小学校は桃ちゃんと彩羽ちゃんだからね」

「どこでもいいのか?」

「そうね。空き家しかないから、崩れなさそうなとこ選びなさい」

「……だったら……俺が直していいか?」

 ナオトさんがボソリと言う。

「さっき、集落を一通り見て回った。古い家が多いが、基礎はまだまだしっかりしてそうだ。なら、バラして再利用して、ができる。まあ言ってしまえばDIYだ」


 なるほど。直して使う。うん、それはいいと思う。


「迦楼羅。ここにはどれくらいの工具がある?」

「あとで見せてあげる。一応、ある程度は買ってきてあるわ」

「あ、じゃあ迦楼羅さん。さっき、結花さんとも話したんですけど、防衛ライン用の罠を設置したいんで、俺にも工具見せてください」

 ツバサくんの言葉に、迦楼羅が頷く。

「住む場所は任せる。でも――その前に一つ」

 みんなの視線が私に集まる。

「食料の管理と、調達の計画も立てたいの」

 少しだけ言葉を選ぶ。

「人数が増えた分、主食の減りがかなり早くなる。今ある分でしばらくは持つけど……長くはもたない。来年には米作りもするつもりだけどまず足りなくなるのは確実」

「……だな」

 シゲトが低く同意する。

「ガソリンも含めて、一回リスト作ったほうがいいと思う。必要なものと、取りに行く優先順位」

「ガソリンか……。ガソリンスタンドにあるのはそろそろ劣化が始まってるだろうな……」

「そうよね。ここには軽トラと私の車と二台あるけど、調達に行くならできれば軽トラをまだしばらくは動かせるようにしておきたいの」

 私の声に手を挙げたのはハルくんだった。

「ガソリンスタンドならあと数か月は使えるガソリンが残ってると思いますよ。手動ポンプ使えばちょっと時間はかかりますが給油はできます。それに……ガソリンスタンドなら、ガソリン缶もあるはずです」


 あ!


 ハルくんに言われてその存在を思い出す。

 うちの会社でも取り扱っていた、非常用ガソリン缶詰。あれなら使用期限は3年くらいあったはずだ。

 ていうか、私も非常用に念のため、と思って1缶だけ備蓄してたはず。完全に忘れてた……。


「ありがとう、ハルくん!そうだ、ガソリン缶詰ならまだまだ使える……!最優先の調達物資だわ!」

「ハル、よくそんなの知ってたな」

「学生時代、ガソリンスタンドでバイトしてたんです。その時に知りました」

 

 やっぱり知識と経験はこういった場には多いほうがいい。一つ一つは大したことなくても、併せれば武器になる。


「よし」


 迦楼羅が手を叩いた。


「話はまとまったわね」


 全員の視線が自然と集まる。


「ナオトは住居の整備。使える家を選んで、直しなさい。直るまでは、ホテルで寝泊まりがいいと思うわ」

「ツバサは防衛。さっき言ってた罠、工具確認して、すぐに取りかかりなさい」

「シゲトはインフラ確認。電気と水、使えるライン全部洗い出して。アタシがまとめてる資料なら後で出すから」

「ハルは結花と一緒に物資リスト作り。ガソリン含めて、調達ルートも考えなさい」


 迦楼羅が全員を見回す。


「――今日から、ここは“みんなで生活する場所”よ」


 静かに、でもはっきりとした声だった。

 

 うん、そうだ。ここは避難場所、から生活をする場所、へ変わっていくんだ。



 それからナオトさんとシゲトさんとツバサくんがここにある工具を確認しに出て行った。

 帰ってきたら、リスト作りだ。

 リストに数行書いて、みんなが戻ってくるのを待つ。


「あの、結花さん」

 ハル君に呼ばれて顔を上げると、彼の笑顔が嬉しそうだった。

「ありがとうございます」

「え?」

「俺ら、もうダメだと思ってました。あの店の中で干からびて死んでいくんだって思ってました。でもかるさんが迎えにきてくれて……ここに来て、生きてるって思えました。生きるってすごいことなんだって分かった気がします。俺たち、運が良かったんだなって」

「運も、生き延びる力の一つだよ。私もそうやって生き残ったことがある」


 運は、人間の究極の命綱だと思う。

 私もあの日、運がなければ死んでいたんだから。


「……でも」

 ハルくんが少しだけ真面目な顔になる。

「運だけじゃ、次は乗り切れないと思うんです」

 私はペンを持つ手を止めた。

「……どういうこと?」

「今の俺たちって、正直“装備が足りてない”です」

 装備。

 その言葉に、少しだけ意識が引っかかる。

「武器とか、ってこと?」

「それもですけど……それだけじゃなくて」

 ハルくんは指を折りながら続ける。

「手袋とか、防刃のやつ。ゴーグル。ヘルメット。あとライトとか無線とか。戦う以外の装備です」

「……ああ」

 言われてみれば、全部“あったほうがいい”ものだ。

 まったくないわけじゃないけど、数が全然足りてない。

「そういうの、まとめて揃う場所、あります」

「どこ?」

「秋葉原です」

 一瞬、空気が止まった気がした。

 秋葉原……?

「ミリタリーショップ、結構あるんですよ。割と本格的なやつ揃ってます。もう略奪されてる可能性も高いけど、店舗数も結構あるし、全滅ってことはないんじゃないかと。俺、サバゲ―が好きで、そういうの見にいくの休みの日の楽しみだったんですよ」


 なるほど。


 趣味の知識。

 でも――今は、それが“生きるための知識”になる。


「……いいね」

 私は小さく頷く。

「リストに入れよう。優先度、高めで」

 ペンを走らせながら、思う。

(運だけじゃ、生きていけない)

 運と、準備。

 それが生きる道を照らすんだ。

(でも――準備があれば、運を引き寄せられる)


(軽トラで行くなら――)

 私はペンを止める。

(ハルくんは確定。店の場所も売ってるアイテムも良く知ってる)

(迦楼羅も外せない。戦える人間が必要)

(……あと一人)

 自然と浮かんだのは、さっきの真剣な横顔だった。

(ツバサくん)

 防衛を任せたばかりだけど――略奪が行われたような現場に行くなら、あの人の判断力は必要だ。

(……三人、か)

 軽トラの荷台が頭に浮かぶ。

(乗れるわね。完全に道路交通法違反だけど)

 ふっと、小さく笑った。

(道路交通法?なにそれ美味しいの?)

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