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終末ゾンビ世界から100年後の未来へ避難することにしました —防災オタクと半ゾンビの無人島開拓記  作者: ねねこ


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31 襲撃

 またあいつらが増援を連れてくるかもしれない、とのことで早々にそこから去ることにした。しかし、まだゲートが開くまでは1時間以上ある。ならば、もう少し物資の調達に行っておこう。

 もうこちらへ来ることもしばらくはなくなるだろう。なら、必要なものは調達しておきたい。


「ねえ桃ちゃん、最後に中古屋行きましょ」

「中古屋?」

「そう。子どもたちのために娯楽を回収したいの。この先に古本中心の色んなジャンク品置いてある店舗があるのよ。普通のおもちゃ屋どこにあるのかよく分からないし、前に行ったときにあの店、おもちゃも色々あったなって思って」

「ああ、あたしも行ったことあるわ。そうね、彩羽の好きなアニメのDVD欲しいし行きましょう。でも代金は?」

「さっき部屋にあったへそくり持ってきた。3万円までなら問題ないわ」

「中古品だしそれだけあれば充分でしょ。あとあそこ、リバーシとかボードゲームとかもあったはず。そういうゲームのほうが人数的にも遊べるし、電気使わないしいいかも」

「桃ちゃん天才」

「知ってる」


 郊外にある古本やジャンク品を売っている店舗はまだ略奪は行われてないらしく、閑散としていた。ゾンビの姿も少ないのは、ここにふらふらやってきた野良ゾンビだけだからだろうか。車もないのは、逃げ出した人たちが使ったからかもしれない。

 それでも油断はせず店に近づく。明かりはついていない。まだ明るめの夕方だから、見えないわけではないのが助かった。

 半ゾンビになっても、視覚と嗅覚と聴覚は生きていた。味覚は完全に死んでいて、触覚は少し鈍い。だから相手を叩きのめしても、さほど体のほうにショックは伝わってこないのだ。ただ、力加減が少し難しい時があるのが悩みか。

 だからさっきのようなときは容赦なくいける。


「……とりあえず桃ちゃんに映像系は任せていい?」

「分かった。確か二階よね」

「ええ」

「じゃあそれ以外の使えそうなものは迦楼羅よろしく」

「OK、任せて」


 それぞれに散って店の中を物色する。

 桃はDVDを。迦楼羅は本とジャンク品のあれこれを。


 軽トラに積み込み終えた、その時だった。


 ――エンジン音。


 駐車場の入口。


 一台の車が、ゆっくりと入ってきていた。


「桃ちゃん、お客さんよ」

「そうみたいね。まあこっちに来なければ無視でいいでしょ」

「そうね」


 という希望は空しく、車は閑散とした駐車場を突っ切ってこちらにまっすぐ向かってきた。

 念のため桃がバールを持ち、迦楼羅はジャンク品から回収してきた金属バットを手にする。


 そして、車は軽トラと少し距離を空けて停まった。

 スモークガラスの車は少し威圧的ですらある。

 ドアが開く。

 降りてきたのは、手に鉄の棒を持った男たちだ。

 でも、さっきの連中とは違う。

 目が――冷静だった。


「よお」

「……」

「あんたらも物資回収か?」

「……」

「返事くらいしろよ、ゾンビじゃねえんだろ?」

「……なんで、そう思うの?」

「ゾンビならもっとこう、目がイッちまってる感じだからな。お前ら二人ともそういう目じゃねえし。遠目から見たらゾンビに見える擬態してんだろ?頭いいじゃん」

「……」


 なるほど、そう誤解してるならそれでいい。


「いいやり方だな。まねさせてほしいくらいだ」

「お好きにどうぞ」

「ああ、そうさせてもらうわ。んで?その肌、何塗ってんだ?」

「こういう色の肌に使える色粉があるわよ。100均の化粧品コーナーで、ドーランっての捜してみなさいな。大きめのドラストとかでも扱ってるわよ」

「へえ、いい情報ありがとよ、っと!」


 先頭にいた男が鉄パイプを振りかぶる。想定内だ。

 迦楼羅が桃の前に立ち、振り下ろされる鉄パイプを指でつかんで抑える。


 なんてわかりやすい。


 呆れと怒りを混ぜた目で、目の前の略奪者を迦楼羅は睨みつけた。


「……やっぱりな」

 鉄パイプから男が手を放し、カラカラと音を立ててアスファルトに凶器が転がった。

「おまえら、ゾンビじゃねえのは見て分かったけど、人間とも違うな。もっと違う何かだ」

「……」

「そんな力があるんなら、どこでも大丈夫だろ?なあ俺たちと組まないか?」

「……」

「拠点に物資がかなり少なくなってきてんだよ。もっと効率的に回収したいんだよな。協力しろよ」

「……」

「おい、聞いてんのかよ!」

「挨拶も自己紹介もできない上にいきなり殴りかかるような無礼者に何の協力をしろって?」

 絶対零度の声音で迦楼羅が睨みつける。

「アタシたちはもう帰るから」

「……な、舐めやがって……!」

「あんたたちなんて舐めたら病気になりそうだから遠慮するわ。さ、行きましょ」

 ぽん、と迦楼羅が桃の肩を叩く。

 それに押されて、桃も頷く。

「……チッ」

 男が舌打ちをした。

「まあいい。今日はやめとく。……でもよ」

 じっと、迦楼羅を見る。

「次に会ったら、その力――貸してもらうからな」

 男たちはそのまま車に戻り去っていった。


「ああいうのがいるなら、こっちにいるほうが危ないってわかるわね」

「そうね。結花を連れてこなくて良かったわ。もちろん子どもたちも」

「同感。でもこれが最後の調達になるとは限らないしね……」

「そうなのよね。とりあえずあと1万円あるから、あそこのドラストに寄ってから帰りましょうか」

「賛成」


 中古屋のすぐそばにあるドラストは郊外であったおかげかさほど荒らされてはいなかったようで、子どもたちの為のお菓子や飲み物の回収ができた。結花の好きなコーヒーも。

次はもう少し予算を大蔵省(結花)にお願いして多めの回収をしようと迦楼羅は決めた。

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