表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末ゾンビ世界から100年後の未来へ避難することにしました —防災オタクと半ゾンビの無人島開拓記  作者: ねねこ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

22/70

20 ショッピングモールの地獄

 それからの二週間は、迦楼羅と私とで、ユウキの教育に費やした。

 食べていいもの、ダメなもの、触っていいものダメなもの。

 分かりやすいようにブルーシートで覆っているものはダメ、と言うふうに教えた。


 仕事は、畑の手伝いがメイン。

 迦楼羅の教えで、水やりまではできるようになった。

 できることが増えるのが楽しいらしくて、どんどん表情も豊かになってきた。

 最初は黙って石を拾っていたのに、今は「これ終わったら次なにするの?」と自分から聞いてくる。

 

「そろそろ、私たちは一回あっちに行かないとね」

「そうね。じゃあ明日、留守番させてみましょう」


 次の調達のメインは本屋だ。

 実用書もだけど、ユウキのための勉強の本も必要だとこの二週間で分かった。

 この子、学校に行ったことがなくて、話し相手は母親だけ。

 平仮名とカタカナは何とか読めるレベル。

 だから絵本と童話もリストに入れる。それと算数のドリル本とか図鑑とか。

 知識は邪魔になることはない。むしろ財産だ。


「それと子供服も欲しいわね。靴とこれから夏になることを考えると帽子。畑で作業するなら軍手と長靴も」

「だったら、ショッピングモールがいいかな。あそこならワンフロアに全部ある」


 確かあそこのショッピングモールの二階が子供服含む服屋と本屋があったはず。確か広めの100均もあったから、軍手はそこで調達できるだろう。

 靴屋は1階だったかな?


「決まり。行くのはショッピングモールね」

「迦楼羅、欲しいものは?」

「100均行くなら、園芸コーナーを攻めたいわね。割とバカにならないのよ、100均の園芸用品って」


 うーん、そこは見たことないなぁ……。私は100均なら消耗品がほしい……。

 100均の保冷バッグって使えるのよね……。


「ユウキの服のサイズだけ確認しましょう。少し大きめでもいいと思うわ。すぐ大きくなるしね」

「そうだね」


 それからユウキの身長を計ってみると110センチなかった。かなり小柄で、だから最初幼稚園児くらいだと思ったんだ……。

 着ていた服のサイズは120だった。

 ならこれから大きくなることも考えて何種類か揃えておこう。だってこの先、服を買いに行ける世界になるかどうかわからないんだもの。

 靴も20センチからもうちょっと大きめのものを見繕ってこよう。


 それから私たち二人はユウキに初めてのお留守番をお願いして、2週間ぶりに向こうへ戻ることにした。

 

 2週間で、たった二週間でさらなる地獄が広がっていることをこの時はまだ知らなかった。



 ユウキに留守番を念入りにお願いして「いってらっしゃい」と見送られて、私と迦楼羅は軽トラで向こうへ戻った。

 そこは、2週間前とはまるで違う世界に変わってしまっていた。


「なにこれ……」

 

 神社の前の道にはゾンビが闊歩していて、こちらの動きを窺っているようだった。

 今すぐ島に帰りたい。でも3時間後までゲートは開かない。


「これは今日はだいぶ大変な仕事になりそうね……」

「だね。よし、じゃあ迦楼羅、ゾンビは任せた。私はこのままショッピングモールへ向かうわ」

「了解」


 千里のことが心配になったけど、大丈夫、あの子は地頭はいい子だし私の部屋の備蓄はまだ残ってるはず。

 うん、千里なら大丈夫。

 スマホをちらっと見たけど、もう電波は死んでいた。

 電波が生きてたら千里に一言入れておこうと思ったのにな……。


 アクセルを踏んで、ここから車で5分くらいのところにあるショッピングモールへゾンビの波を抜けて向かう。

 何とか入り口の前までついたけど、迦楼羅と相談して、このまま中へ突っ込むことにして、入口に軽トラをねじ込む。そのまま中に車を走らせ、中にいたゾンビの頭を迦楼羅が潰していく。

 でもあとからあとから湧いてくるので、車を停まっているエスカレーターの前までつけてエスカレーターを軽トラでふさぎ、2人して車を飛び出して二階へ駆け上がる。思った通り、そこにはゾンビは少なかった。

 ゾンビの行動パターンに音に引き寄せられるというのがあるのは迦楼羅に教えてもらってた。

 それで一階の入り口でわざと大きな音を立てて入り込んだのだ。生存者がいれば反応があるかとも思ってたけど、どうやらここには生存者はいないようだった。


 私たちが起こした大きな音にこの館内にいたゾンビが集まってきたので、迦楼羅のスマホから大音量を流してそれを遠くに投げることでゾンビを誘導した。2階からも落ちてくるゾンビがかなり見えたので、2階のゾンビは少なくなってるとは予想していた。

 迦楼羅のスマホが犠牲になっちゃったのは申し訳ないけど、本人曰く、もう連絡してくるような相手もいないし、とあっけらかんと言ったのだ。


 私たちは二階に上がったすぐのところにあった子供服のコーナーで手あたり次第服や小物を袋に突っ込んでいく。

 ごめんなさい、後で必ず払いに来ます。……生きてたら。

 それから私の服も適当に袋に突っ込む。そのまま上から軽トラの荷台目掛けて投げ落とし、続けて隣の100均へ。

 ゾンビがいないことを確認して、迦楼羅は園芸コーナーへ、私はそれ以外を。

 保冷バッグ、ポリ袋、アルミホイル、雑巾、軍手、ゴミ袋、洗濯ばさみ、チャッカマン。

 ユウキの為にノートや文房具。

 目についた「使える」と思ったものを袋に詰め込み、壊れ物がないからとそれも上から放り投げる。

 迦楼羅のほうは壊れ物があったからか、エスカレーターを降りて荷台に乗せていた。


「よし、本屋」

「了解」


 100均の反対側にある本屋に駆けこむ。ゾンビはいない、よし。

 本屋のカウンターにあった袋に、目についた実用書、絵本、童話、小説などを次々と詰めていく。

 実用書が多すぎる!

 全部あってもいいくらいだけど、それは無理だからとりあえず目についたものだけ。ここに長居はできない。


「結花、そろそろ行くわよ!」

「うん!」


 最後に目についた「サバイバル実用術」と言う本を手に取って、エスカレーターの横に合った靴屋で何大家ゾンビを倒しながら靴を何足か確保して、私と迦楼羅はショッピングモールを脱出した。ちなみに各店に一応お金は置いてきてる。そろそろ手持ちのお金限界かも。

 ……生存者はいなかったな……。あそこなら、避難所になってるかと思ってたのに。でももし生存者がいたとして、助けを求められても私たちじゃ何もできなかった。だから、少しホッとしてる私はやはり冷たいのかもしれない。


「まだ12時まで一時間以上あるわよ!」

「分かってる!12時までは逃げ切るしかない!」

「でも車の音は……!」

「うん、だから高速道路のほうへ行くわ!SAで時間稼ぎをする!」


 ショッピングモールに来やすくするためにすぐそばに高速道路のインターがあるのだ。

 私はショッピングモールから脱出すると高速道路へ軽トラを走らせた。

 高速に入ると、そこは思ったより静かだった。

 車はあちこちに停まっているけどゾンビはいない。

 私は停まっている車の間をすり抜け、1キロほど先にあるSAへと入った。


 そこは放棄された世界そのものだった。

 生存者はいない。

 ゾンビはいた。

 こっちに来ようとするゾンビは、迦楼羅がバールでやっつけてくれる。

 一時間。

 一時間だけここで時間稼ぎをする……!

 私は車をSAの駐車場の真ん中に停めた。ここなら見通しもいいし、やりたかったことができる。

 もってきていたポンプと携行缶を手に、私は隣の車からガソリンを抜いて、軽トラへと移した。

 もうかなり少なくなっていたのでどうにかしたかったのだ。

 

 ポンプを押し込んだ瞬間、ガソリンの匂いが強くなる。

 ――火気厳禁。

 こんな状況で火が出たら、終わりだ。

 

 空の携行缶を6回満タンにして移すと、エンプティ状態だった軽トラが満タンにまで戻った。


「迦楼羅!そろそろ行こう!」

「分かったわ!」

 最後のゾンビを迦楼羅が潰し、私たちは高速を逆走して入ってきたインターへ戻った。

 12時まであと10分。よし、行こう。

 間に合うはず、ううん、間に合わせないと。あの子が一人で待ってる。


 そして神社へ戻り――。


 12時。


 私たちは、ゲートを潜った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ