119話 デート
土曜の昼下がり、私はれいくんとデートすることになりました。デ……デー…………
「あの、ここに良い思い出ないんだけど……」
れいくんはいつかのカフェに連れてきた。ここでは私がれいくんに媚薬を盛られた記憶があるので……
「大丈夫、今度は何もしないからさ」
れいくんは冷や汗しながら茶化す。私は「ほんとに?」とジト目で見た。とはいえ折角の話し相手なので背に腹は変えられないので店に入った。
「いらっしゃい……なんだ澪弥か。それと、この前の白い娘か」
「やあマスター。今日は本当のデートなんだよ」
「そうかい、お似合いだな」
「ええ?!」
どうやられいくんはこのカフェの常連さんなようだった。カフェのマスターと気軽に話している。かと思いきや突然の爆弾発言に私は声をあげる。
デートって人前で堂々と言わないでよ……
てか白い娘ってなに……
店の中には私たちの他には一名が二組で別々の席に居るくらいで空席が多かった。レトロな音楽が流れていて、ゆっくり出来れば落ち着けそうだった。店の端にある窓が正面のカウンター席に隣合うように座る。
「さて、まずは対策を考えないとね」
「対策?」
注文したのち、れいくんは早速本題に入った。果たして対策のしようがあるのだろうか? 私では全く分からないので不安になる。
「今のうららちゃんは昔の僕と似てる感じかな……」
「似てる?」
「そう、僕も一度感情を失いかけた時があったんだよね。ほら僕って魔界に行けるゲートを天使でありながら使えるでしょ。それは一度堕天しそうになったからなんだ」
すごい事実を知った。まさかれいくんが一度堕天したなんて……
「堕天の原理は未だに解明されてないんだけど、天使が憎むほどに怒りを覚えて破壊衝動が芽生えると堕天使になる、って僕は思うんだよね」
そっか……じゃああのルシファーも同じように……
「話がズレたね、僕の過去話はここまで。堕天しそうになった時、光と闇、二つの力が僕の中で大きく暴れた。うららちゃんの場合は光の力が大きくなったんだろうけど」
注文したコーヒーが届き、れいくんは一口飲んで話を続ける。
「力を使う度に僕は何かを感じなくなっていった。今のうららちゃんと同じだね。そんな時、僕はある恩人に救われたんだ」
「恩人?」
「そう恩人。ここからまた僕の過去話になるから喋らないけど、僕の感情を取り戻せたのはその恩人のおかげだった。正確には恩人さんの光だね。つまりはうららちゃんが一番安心出来るような人と一緒に居るのが良いんじゃないかな?」
恩人の光、か……
そんなものでいいのかなぁ?
「まあ、うららちゃんの一番は決まってるようなものだからね。僕は邪魔しないよ」
「ぅっ!///」
私の考えてる人を当てるれいくんに私は顔が熱くなる。
「で、でも……」
私は現状を思う。
ルシファーとの戦いから一週間。私は普通の生活に戻ったのに、ゆうくんはそうではなかった。ゆうくんだけじゃない、美鈴ちゃんもだった。
ここ一週間二人とも学校に来ていない。それより会ってすらいない。連絡も取れないし、二人とも今どこでなにしてるんだろう?
「そうだね。じゃあ、行こうか?」
「え?」
私は一言しか喋ってないけど、れいくんは察したのかまたどこかへ連れ出そうとしてきた。もしかして居場所を知っている?
私は急いでコーヒーを飲み干した。
「熱っっ!」
「ゆっくりでいいのに……」
◆◆◆◆◆
その後、人目を避け、ゲートから天界へと向かった。
「簡単な話だよ。今の悠翔は天使か悪魔か、って議論で持ちきりで、美鈴ちゃんはクレメンティアと共に事情聴取中さ」
「っっ……」
そうだ……あの時、なぜかゆうくんから悪魔の力を感じた。もしかして堕天しちゃったのかな?
美鈴ちゃんとクレアは悪魔だからすぐには受け入れられないと思うんだけど。私が今までちゃんと説明してなかったから?
そもそもどうして皆のことを私に知らせてくれなかったんだろう?
学校で隣が空席だとすごく寂しかったのに……
ゲートを抜けるとそこは天界だった。着くやいなやれいくんはため息をした。そうか……
「れいくん、来ても大丈夫だったの?」
れいくんは天界を憎んでいるらしい。理由は知らないけど。
「まあ、うららちゃんのためなら、ね」
「どうして私のために?」
ここまでしてくれるれいくんに私は疑問しかなかった。始祖光を狙うのに私を助けてもくれる。彼の言動はほとんど分からない。
「僕が………いや、悠翔に頼まれたからだよ」
「え! ゆうくんに?」
最初に何か言おうとしたがれいくんは途中で変えた。
「僕は確かにうららちゃんを狙ってるよ。でも悠翔に言われて、悠翔の居る時だけっていう条件でね。それ以外は、守れと言われているんだよ」
意味が分からない。そんなの簡単に破れるただの口約束。ゆうくんが居ない時が一番の好機のはずなのに。むしろ守れだなんて。
「意味無いように見えて実は利にかなってるさ。僕だって始祖光を狙ってるんだからそれを他の奴らに奪われるのはゴメンだって話。それに悠翔は……」
れいくんは言葉を切り黙った。
「やっぱりなんでもない。それより早く行こう」
すると、首を横に振り先に進むと言ってきた。いったい何を言いかけたんだろう?
とても気になるけどれいくんの後を追った。
◆◇◆◇◆◇
犯罪者ってこんな気分なのか?
手足を硬い鎖で縛られ自由を許されず狭い空間に閉じ込められる。監視も絶やされず隙が無い。
まあ、今は暗くて狭い空間に居たいと思ってる自分がいるのも事実か。
魔界での出来事から一週間が経った。その際に俺は天使でありながら悪魔の奴隷となった。正確には奴隷の紋章を刻まれていた。ベルドラム、死してなお奴の手のひらの上で転がされている。
それが露見した戦いでキャンベールら天界の天使に見られた。いずれ発覚するなら早い方がいいか。という事で悪魔要素を持った俺はここに居る。自分でも分かっていない力が暴れたら天界の人からしたらたまったものではないから当然のこと。
(あいつ元気にしてるかな?)
あれから会っていない。たった一週間なのにとても長い時間に感じる。この空間がそうさせているのか。まあいい……
事情やら関係性やら、
これから……どうなっていくのだろうか……
俺はこのままずっとここに居座るのだろうか。あれだけ欲っした力が悪魔の力だったなんて天使失格である。
(な~んか、もうどうでもよくなってきたな……)
「ゆう…くん……?」
「………っ?!」
頭がボーッとしていく中、その会っていない人の声が聞こえ、また意識がはっきりしていった。




