◆第三十章:宇多田 小町 その二
先生はどこなの。
私の先生は。
先生はどこなの?
あの男はカードが十枚とそれを持っている人が十人と言った。
あの中に先生はいなかった。
先生は帰ってこなかった。
早く帰ってくるって言ってた先生が!
先生がぁ!!
先生は静海望が怪しいって言ってた。
だから確かめてくるって言って出ていった。
私と捕まえるための練習をしてまで!
捕まえにいった!
練習を一緒にしたら誉めてくれた!
頭を撫でてくれた!
あの先生が!
あの優しい先生が!
帰ってこなかった!
どうして?どうして?どうして?どうして?
何かあったんだ!
静海望と会って何かあったんだ!!
私は静海望を知らない、でもクラスの委員長だと先生は言ってた!!
そしてあの男、私の邪魔をしたあの男が委員長だと言った!!
あいつだ!!!!
あいつと会って峰子先生は帰ってこなかった!
どうして?
どうして峰子先生は帰ってこなかったの?
あいつだ!
あいつが消したんだ!!
私の峰子先生を!
あいつが!!
あいつが!!
消したんだ!!
……許せない、許せない!!
あいつを消さなきゃ!!消さなきゃ!!
静海を消さなきゃ!!
私が魚を殺したようにこの海に流さなきゃ!!
流してこの海も消して!!
町も消して!!
全部消さなきゃ!!
消さなきゃ!!
私が廊下を抜けてデッキに出ると静海がいる。
もう逃がさない。
静海からカードを、先生のカードを取り戻さなきゃ!!
逃げ場がないことを悟ったのか静海は私の方を向く。
そして胸ポケットからカードを取り出す。
先生のカードだ。
ロープが入っている。
あれは私と先生のカードだ!!
取り返さなきゃ!!
静海は私にカードを向ける。
でも知ってる。
何をしようとしてるか。
私を捕まえる気だ!
先生がやろうとしたように!!
許せない!許せない!!
静海はカードからロープをだす。
けど私は捕まらない。
捕まえられない。
私は知ってるから。
何を出そうとしているか知っているから目の動きでだす場所は予測できる。
だから避けれる。
先生に近付くためバレー部で鍛えてきたから、あなたに私は捕まえられない!
私は距離を詰める。
ここなら届く。
ヘルメットの人にもらったこのスタンガン。
護身用とは聞いていたけど服の上からでも充分効く。
充分強い。
「……あっ。」
静海が倒れる。
痙攣して胸に手を当てて丸くなるようにうずくまる。
さっきのロープが入っていた白いカードを落として。
やった!
倒せた!
後は消さなきゃ!
この人を消して、海も消して、世界も消して!!
全部消さなきゃ!!
私は静海に馬乗りになり首を絞める。
あなたも窒息するの!
あの魚達のように!
そして沈めるの!
この海に!
苦しむ静海はそれでも胸に手を当てている!
早く!
早く!
早く窒息して!
「にゃーん。」
静海の顔の前に突然猫が現れた。
いや猫なのだろうか?
体はだらんと垂れ下がり静海を覆い被さるように、まるで彼女を守るようにそれは現れた。
もぞもぞと動くそれは私に噛みついてくる。
でもおかしい。
痛くない。
それには牙がなかった。
それどころか触れる体全てが柔らかくまるで骨がないようだ。
なんなのこれは!?一体なんなのこの生き物は!!
私は怖くなって静海から離れる。
もぞもぞと動くその生き物は牙も爪も無いのに私に牙を向けるかのようだった。
どうゆうことなの、なんなの!?
これは一体なんなの?
「静海!!」
私が放心して立ちすくんでいると別の男がやって来る。
そして私と静海の間に割ってはいる。
なんなのこれは?
私は先生を消されたのに、なんであの娘は守られているの?
私を守ってくれる人はどこ?
どこなの?
ひとりぼっちだよ、先生……。
「……先生はどこ?」
私は膝をつき泣いていた。
顔を埋めて泣いていた。
わからないよ、もうなにも、わからないよ。
先生は?
私を抱き締めてくれる先生はどこ?
「……小町ちゃん?」
顔をあげると先生がいた。
「……先生?」
先生は私を抱き締めてくれる。
「もう大丈夫よ。」
「……せんしぇい、わたしこわかった。」
「もう大丈夫よ。」
先生に抱かれて私は泣いた。




