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お代官様になろう!  作者: 元ガス屋
国境紛争編
14/26

第12話 防衛出動!

いきなり国境を越えてきたエストライド軍。

王立騎士団は撃破され、残ったのは代官所の部隊だけ。


どうする相沢? どうする横峰?


 十五分後、俺はやっとのことで頭の芯から目が覚めて状況を把握した。

「夜半に、王立騎士団駐屯地に奇妙な乗り物に乗った一団が助けを求めてまいったそうです。それを追うように、エストライド公国の実戦部隊が駐屯地に押しかけ問答無用で戦闘が始まった模様です」


 横峰の指示で騎兵中隊から斥候が出動しているようだ。次々と報告を持ち帰ってくる。

「なあ、横峰。奇妙な乗り物に乗った一団って……」

 執務机で二日酔いのために痛む頭を押さえながら念のため聞いてみる。

「どう考えても先日の車列でしょうね」


 だよな。しかし三ヶ月もエストライドにいながらなぜ、今更トラブルを起こして逃げてきたのか……

 可能性はいろいろあるが、この世界の軍事を考えるに効率が悪いことこの上ない。そんな軍隊が二千人もの兵力をひょいっと動員できるか? 否だ。とすればこの行動はエストライド側の計画的行動ってことになる。



 夜が明けた。結局寝ることもできないまま朝を迎えた俺たちに、ダイニングルームでクーリエが飲み物を差し入れてくれた。


 メンバーは俺、横峰、サイラスに元冒険者であるクーメだ。

「旦那様、我々に探索のご命令をください」

 不意にクーメが言ってきた。

「エストライド軍の動きを探ると同時に、こうなった経緯もエストライド側の国境の街、カントーナで探ってまいります、どうかお命じを」


 俺は即座に返答できないでいた。ここで優秀な情報部隊を危険に晒していいものか。判断がつきかねていたのだ。

「一度は旦那様に救われた命、どうぞミートナ郡のために使えとお命じくださいませ!」

 クーメの再度の言葉。こいつが本心から言ってくれていることはわかる。が、俺は彼の顔を見れないまま答えた。

 正直言って、自分のこういうところは好きじゃない。


 「二つ指令を出す。ひとつは今回のエストライド軍の動向と軍事行動に至った経緯を探ること。もうひとつは、これに関わった者を誰一人として死なせるな、以上だ」

「はっ! お任せください! 伝令は逐一送りますので、では!」

 すまないクーメ。壮年のドワーフ族は子供の遠足みたいに楽しそうにダイニングルームを出て行った。それが非常に危険な任務と理解しながらもだ。

「相沢さん、凹んでる場合じゃないでしょ!」

 と、横峰が大きな声で言う。


 「逃げてくる冒険者や辺境住民の保護、代官所だけでは手が足りないわ! どうすんの?」

 彼女はあえて俺に難題を吹っかけてきていることがわかった。確かに、思い悩むより目の前のことに対処する方が気はまぎれるってもんだ。

「クーリエ、冒険者ギルドに緊急依頼だ。大森林方面からの難民救助を最優先事項で依頼してくれ」

「かしこまりました!」

 筆頭執事は颯爽と退出する。


 「サイラス、大隊に出動命令。三個パイク中隊を基幹に全部隊を大森林のはずれにある街道沿いに配置。難民収容を手伝いつつエストライド正規軍を警戒。全部隊に無線を配備。定時連絡は怠るなと通達しろ」

「承知いたしました!」

 装備をガシャガシャ言わせながらサイラスも颯爽と退出する。残ったのは俺と横峰だけだ。


 正直に言うと怖い。考えうる限り最善の方法と指示を出したつもりだ。だが、この指示に人の生き死にがかかっているのだ。俺たちも含めて。

「最悪の場合って、俺、ここに火をつけて切腹とかしなきゃいけないのかな……」

 歴史上のいろんな人物を思い浮かべて、弱音が口に出てしまう。それを聞いて横峰が笑った。

「バカじゃないんですか?」

 彼女の言葉に根拠はないけど、ちょっとだけ安心した。



 ミートナ市内は浮ついているが後方支援部隊のおかげで一応、平穏は保っている。

 俺と横峰も大森林の入り口に布陣する主力部隊と合流した。ここの方が伝令の報告も早く手に入る。

「申し上げます! 王立騎士団駐屯地は陥落! 生き残った騎士団が遅延行動を取りつつ、未知の車列がこちらに接近中!」


 しばらくすると、大森林から三台の車両が現れた。あらかじめエンジン音に動揺するなと命令してあるので部隊に目立った動きは見られない。前列の兵士が赤旗を振って車列に停止をうながすと、ある程度冷静なのか、車列はそれに従った。


 一連の動きと車種を確認して横峰が言う。

「やっぱ自衛隊みたいですね」

 俺もテレビで見たことがある。六輪のでっかい車両=八九式警戒偵察車だ。それにトラック、もう一台は軽装甲機動車ってヤツだ。軽装甲機動車の扉が開いて迷彩服姿の自衛官が降りてきた。

 俺たちは戦列の先に出て彼を出迎える。俺たちの姿を見て、自衛官は驚きの表情を浮かべている。よく見ると横峰よりも若そうな男性自衛官だ。


 「第四戦車大隊第三中隊、飯倉陸士長であります」

「朝霞駐屯地第一施設大隊、横峰三等陸曹です。生存者は?」

「第三中隊が六名。民間人が二名であります」

 飯倉の言葉で三台の車両からおずおずと生存者が降車してきた。そして若い自衛官は顔を歪ませながらもっと衝撃的なことを報告した。

「自分より上の階級の者は、全員殉職いたしました」


 部隊の後方に設置したテントに生存者を集めてヒアリングを行う。

 自衛官は全員第四戦車大隊所属のようだ。民間人は中年の主婦と俺みたいな三十代のサラリーマンということだ。全員、ここが日本ではない異世界だということは認識している。

「で、なぜエストライド軍二千名に追われることになったんだ?」

 俺の問いかけに飯倉陸士長が代表して答える。要約するとこうだ。



 異世界に転移した直後、九六式装輪装甲車が滑落事故を起こし、隊員一名が死亡した。地方自治体の要人を乗せていたので車列はそのまま進行。エストライド公国にある国境の街カントーナに到着。ここで初めてこの世界が異世界であることを認識したというのだ。


 エストライド側も彼らの装備に着目して当初は手厚い保護をしてくれたらしい。だが、公国側からノルドライド神聖王国への軍事行動に対して出動して欲しいとの要請があったようだ。当然自衛隊は断る。

 すると隊長は殺され、部隊は襲われる。事の真意を確かめるため階級の高い順から出向いて殺される。シビリアンコントロールをかたくなに守った結果だ。


 「県知事と中隊長は体調不良で休んでいると言われ、確認に行った小隊長も帰ってこず、最後に残った陸曹から、自分が戻らなかったら民間人を連れて元来た道を逃げろと言われ今に至ります」

 つまり、エストライド側は準備していたわけだ。だったらこっちも手加減する必要はない。



 飯倉陸士長は組織に対して忠実な男だった。横峰三曹の命令で備蓄している装備一式のリストを素直に差し出し、彼女の指揮下に入ることを了承した。自動的に残りの自衛官も彼女の指揮下に加わることになる。

「小銃二十三丁、弾薬がNATO弾およそ三万発。その他諸々、宝の山ね」

 横峰がうれしそうに言う。飯倉以下六名の自衛官はきょとんとしているので、俺がこの地方の代官をやってることなどなどを話してやる。


 「で、では相沢さんが自分らの最高指揮官なのでありますか?」

 若いが好感の持てるこの男にいろいろ話してやりたいが、状況がそれを許さなかった。

「申し上げます! エストライド軍、まもなく大森林を抜ける模様です!」

 来たか……。みんなに先制攻撃はしないように再度通達を出し、警戒態勢に入らせる。



 王立騎士団との模擬戦と同じく、エストライド軍は騎馬を押し立てて森から出てきた。

 こちらに先制攻撃の意図がないことを悟ると、戦列を左右に広げていく。俺は自衛隊員に不測の事態に陥るまでは発砲を禁じた。

「相沢さん、大丈夫ですか?」

 飯倉が食い下がるが俺は承知しない。

「ミートナ郡大隊の多くは銃声に対しての訓練を受けていない。それに連中相手なら既存の部隊で間違いなく勝てる」


 俺は彼に説明してやった。その上で、彼らが体験したエストライド軍の攻撃手法を聞いた。予想通り、王立騎士団と同じ程度のレベルだ。これなら負ける要素がない。


 

 エストライド公国軍二千と、ノルドライド神聖王国軍、っていうか俺のミートナ郡大隊七百がついに指呼の間に居並ぶことになった。


いきなりシリアスモード突入です

なんか閑話休題的なエピソード入れるべきだったかもしれませんね・・・orz

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