魔術開発:範囲確認①
閉塞の地の探索依頼を終えて報告書を提出するべく、ナーナミの救急キットを片手に探索者協会へ立ち寄った。幻霧郷の異界門の中にある探索者協会東方支部は、いつでも霧にまみれ、賑わう一階の受付ホールにも靄が漂っている。ホールには看板が幾つも掛かっていて、目的の報告窓口に迷うことなく行けた。
王女の依頼完了の確認と一緒に分厚くなった封筒を提出すると、受付で協会経由の面会申し込みが三件、あると伝えられた。セロとナーナミ、もう一件はツグミという人物からだった。ツグミさんには面会時間と日時に指定がされていて、その中から明後日の午前を選んで会う事になった。
ナーナミは東方支部の地下二階にいると教えてもらい、早速会いに行くことにした。階段を下りて地下二階に着くと、工業用油と魔道核を砕いた時の香りが混ざって漂ってきた。通路に出れば看板に、探索用装備開発部署と書かれていた。その隣には大きな地下二階の地図が壁にかかっていた。
「えっと……二の六号、五番……五番……ん?ないぞ?」
現在地を確かめて、地図のなかにナーナミが居るはずの場所を探す。探索者協会はどこも高い塔の形をしているが、東方地区は地下に広い形状になっている。
霧の幻覚作用を低減する魔法具は高さ制限があり、地中に設置する型だ。東方地区の地下地盤が弱いのも重なり、異界門の中に建設、上層階にあった部署を地下に移設したのだ。地上階の五倍近く広いので、目的地を探すのにも一苦労である。
「おかしいな……」
六号区画には四番までが並んでいる。続くはずの五番が見当たらなくて、指で地図をなぞっていると、「おこまりですかー」と声をかけられた。そちらを見れば、ゴーグルをつけて余った袖を振っているナーナミが居た。
「よ、天才君!付いてきな!」
「ナーナミ!良かった。場所がわからなくて」
何時もの挨拶に安堵していると、ナーナミは背を向けて歩き始めた。隣に続けば、ナーナミはこちらを見上げて言った。
「受付さんが迎えに行ってあげて、って教えてくれたの。セロは階層に出ているはずだから、終わったら黄色の所に行くのよー」
「そのつもりだよ」
「それで?依頼開始日から四日で帰ってくるなんて、どんな攻略をしたのさ?」
小さな口が楽しそうに、弧を描いた。私は意地悪を言ってみた。
「報告書を出したから、読みなよ」
「やだ!活字でクラクラしちゃうもん!」
話してよとコートを摘まんで身体を揺らされながら通路を歩けば、六号区画のずっと手前の四番区画に入り込み、細い通路を進んでいく。数回曲がると地下二階を取り囲む通路の、これ以上は空間が無いはずの壁に扉があった。
扉の横に、〈第一階層の野外に繋がっています。魔素濃度対策必須!〉と但し書きがされていた。ナーナミが扉を開いて、彼女に続いてくぐると、雪が舞っていた。広い庭の様に見えるそこは、奥に瓦の屋根が見えた。ナーナミは小走りで降り積もった雪の上を進み、瓦屋根の下にある扉を開けて手招きした。急いで室内に入ると、全身を暖かい空気が包んで眼鏡が曇った。
たたらに靴を置いてナーナミは木目の美しい床に上がった。靴を揃えて上がると、障子の奥に畳を見つける。所長の執務室と似ているが、木と砂が混ざったような香りと、金属を叩く音が響いている。
「うー、さむ、さむ!お茶出すから、こっちきてー」
畳の部屋に通されて、ナーナミが照明を付けた。床の間には何も置かれておらず、畳の中央に一枚板らしい机があった。座布団が四枚置かれていて、一番の下座に座る。ナーナミは私の隣に座ると、袖で大きな円を机の上に描き、湯気を立てた茶碗がふたつ出てきた。
差し出された茶碗を受け取り、ナーナミの前に持ってきた救急キットを机に置いた。すぐに私に視線が向いて、ゴーグルの奥にある眼は期待に揺れていた。
「ありがとう、ナーナミ。おかげで元気に帰ってきたよ」
「帰ってくるなんて、トーゼンのことでしょ!」
心からの感謝を笑顔と共に伝えて、使用感などを伝えた。
まず、どんな怪我をしたのか、事情を説明しつつ、服を脱いで実物を見せた。防水加工による道具の取り出し難さ、包帯の長さについて、キットのサイズについてなど、処置をしてくれた衛生兵さんの意見も伝えた。
袖の上からペンを握り、ナーナミはメモに素早く報告を書き込んでいく。ひとまず伝え終えたところで、ナーナミは眉を寄せた。
「包帯をしてから発熱って、飲食物との因果は全くないと言えるの?」
「直前に体温をあげるものを食べているし、温かい場所にいたからね。解らない、としておいてほしい」
「患部が熱を持つのは分かるけど、全身の発汗となると……吐き気とか、気分の悪さとか、無かったの?」
「ないかなぁ……」
熱を出すにしても、異常なまでに汗をかいていた。心当たりはあまりない。天井を仰ぎ見て思い出していると、「それじゃあ」とナーナミは質問してきた。
「いつ熱が下がったの?」
「え、あー……その」
言いよどむと、ナーナミは私の手を握ってきた。
「今は、熱はなさそうだね」
「うん。すぐに下がったから」
「どれくらいで?」
詳しく詰めてくるナーナミに、両手をあげて待ったをかけた。メモを手にしたままのナーナミは眉を寄せた。
「言いたくない事でもあるの?」
「そうじゃない。熱が下がったことについて、ナーナミに伝えないといけない事がある。それについて相談させてほしいと思っている」
「ふうん?言ってみればー?」
なにかを察したのか、ナーナミはメモ帳とペンを机において正座に居直った。私もナーナミに向き合い、そっと言った。
「私はなんかさ、灯光の証に水をかけたら消せるのは知っているよね?」
「うん」
小声で言ったからか、ナーナミが前かがみになった。知っているはずの情報に同意の頷きを得て、話を続けた。
「その時に、消えろと思っているから消えるのでは、って言われたの。で、念じながら水をぶっかければ、何か起こせるかもと思ったわけ」
「うん?」
「流石に寒冷地で水を被るわけにいかないでしょ?だから、平熱になれ、って念じながら水を飲んだ」
「ん?う、うん……」
「そしたら、普通の水が……激甘の液体になって、むせたけど、ひと舐めした。その後、発汗が止まって楽になった。念じずに飲んだら、普通の水だった」
説明を言い切ったところで姿勢を正し、ぎこちなく首を傾げた。
「これって、魔術って言って良いのかな?」
ナーナミは真横に引き結んだ口をそっと開いた。
「あだ名を神に替えるのは……空気読んでやめとくのよ……」
ぎこちない感想に、そんな反応になるのかと苦笑いを向けた。
救急キットの使用感を伝え終えて、地上二階にあるセロの所属先、イエローロッドの部署にお邪魔した。二階の窓口でセロとの面会を希望すると、狭い応接室に通された。椅子が四脚に、テーブルがひとつ。縦長の窓には植木が被っていて、外の天気がよく見えなかった。
扉に一番近い席に座って、救急キットの箱をテーブルに置いた。セロは仕事を終えて一時間以内には来てくれるらしい。待っている間に水が甘くなる現象について、スケッチブックに図でまとめることにした。鉛筆を手に、頬を軽く叩いた。
言いたくないからセロに訊けと、ナーナミは何も教えてくれなかった。ただ、あだ名を天才君から神に替えたいと言ったのは確かだ。
「池の水を、飲み水に変えた神話のことかな」
神様の御子が干ばつに苦しむ村に来て、緑に変色した溜池を浄化し、飲み水にしたという神話がある。酒に変えたとか、渇水でも育ちやすい作物の種を与えたとか、水がある場所を教えるなど、色々な話がある。基本構造は、干ばつに苦しむ人々を、水に関わるもので癒すというものだ。
太陽と川の記号を描いて腕を組む。謎現象と接点がありそうな逸話や伝承は他にもある。けれど、自称神様と会ってしまったせいか、どうしてか神話を想起してしまう。首を振って、他の選択肢を探してみた。火消しという単語から考えてみよう。
「火消し……火を消す、話……黒色の魔力関連だと……」
「何、悩んでやがる?」
「うわ……!」
左耳に声が掛かってのけぞると、セロがスケッチブックを覗き込んでいた。びっくりした、と息を吐けば、セロは隣の椅子を引いて座った。テーブルに頬杖を付いたかと思えば、セロの手に二本ある缶詰めされた炭酸飲料をひとつ渡してきた。
「お帰り」
「た、ただいま」
汗をかいた缶を受け取ってテーブルに置くと、セロは缶の封を開けて喉を鳴らしながら飲んだ。ごくごくと飲み進め、飲み切ったらしい缶をテーブルに置く時、軽い金属の音がした。
「それで?使ったのか?」
「うん。高いところから落ちそうになって物を掴んだら、肩を痛めた」
「使用時や使用後の体調や精神面での変化はあったか?」
「処置してもらった後に発熱したけど、包帯とか湿布との因果関係は不明。詳しい事は、ナーナミに共有してあるよ」
「そうか。一応、文書にしてくれ」
文書にしないための対面ではないのか。眉間にしわを寄せれば、セロは頭をかきながら息を深く吐いた。
「死ななくて、良かった」
頬杖を付いたまま、微笑んだ。目は真っ直ぐとこちらを見ていて、思わず肩をすくめた。
「会いたかっただけなの?」
「悪いかよ」
さらりと言ってのけたので、苦笑してしまう。セロが不満げに目を細めたが、笑いは堪えきれなかった。
「まあ、私もお礼をしたいし、聞いて欲しいこともあるから良いけどね」
セロの薬は美味しくないことも多い。でも、薬を飲んだから大丈夫だと思う。肩掛け鞄から厚みのある茶色の封筒を出して、「なんだよ」と怪訝そうなセロに差し出した。封筒は良い紙を使っていて、天井の照明を淡く反射している。
「お酒の商品券だよ。お薬代は貰っていると思うけど、今までの感謝の気持ちね」
「は?要らないぞ?」
「何かしないと気が済まないからさ」
なんども介護をしてくれているというのに、お礼できていない。かといって、感謝を求めての行動ではない事は知っているので、受け取ろうとしないセロに眉をあげてから言った。
「この商品券でセロが買ったお酒を飲みながら、一緒にご飯食べよう。料理は全部、私が用意するからさ」
「よし、言ったな?」
手のひらを返して、私の手から茶色の封筒を奪い取った。食い意地が張っている。呆れていると、封を開けたセロの動きが止まった。
「……二十万分、あるぞ」
「報酬が既に入っていたから、報告受付で引き換えてきちゃった」
奮発したなとは思う。でも、ここ数か月のセロの献身を考えれば、まだ足りない。それより、封筒から商品券を出さずに厚みだけで計算するって、目が良すぎる。セロの手元を覗き見たあと、目が合った。真っ直ぐ見つめてくる目は、どこか非難がましい色があった。
「この金で自分の体調不良を治せよ」
「楽しい時間の提供を頼みますよ。遊びに行けなかった埋め合わせもさせてほしい」
セロの言い分も最もだが、夏に友達と山に行けなかったことを思い出した。楽しみな予定を作っておきたい。商品券云々のことは頭の片隅においた。何を話していたのかと思い返していると、セロが切り出した。
「それで、話したいことってなんだよ」
「あ、あぁ!そう!自己強化系の魔術について意見が欲しくて、質問をしても良いかな?」
「時間あるし、いいぞ」
小さなスケッチブックも鞄から出して、聞きたかった事をまとめた頁を探して開く。テーブルに置いたスケッチブックをセロの前にずらし、椅子をよせてセロに近付いた。
「その、もしかしたら、意図せず魔術っぽい事をしていた可能性が出てきていて……」
「美味しくなれの呪いか?」
メモもスケッチブックも見ることなく、セロは言ってのけた。驚いて「なんで?」と出た声に、セロは不愉快そうに顔をゆがめた。
「自覚ないから異能の範疇だと思っていたが、やっぱりそうなのか、この野郎……!」
「も、もしかして、セロの魔術に影響あるの?!」
魔術を料理にかけて、他者の心身に意図しない影響を与えるのは、効果開示がなければ法令違反である。言葉を変えれば、毒を盛るのと同じだ。大丈夫かと心配すると、セロは拳を握って囁くように言った。
「美味しいだけだよ……!」
悔しそうな声に、間の抜けた声が出た。しかし、セロは敵を見つけたかのように睨んでくる。
「劇的に美味いわけじゃない。なのに、自分で作るより、なんか美味い……!あと、ちょっと元気が出る!」
体力回復と依存が上がる効果があるのだろうか。小麦と砂糖を使った料理なら、あり得るか?推測を立てていると、セロは低く声を落とした。
「お前の料理を同期連中はなんて言っているか、知っているか」
知らないと首を振れば、セロは唇を噛んでから言った。
「合法麻薬料理だよ……!お前のせいで俺たちは、義塾の調理実習で評価が下がったぞ!この野郎!!」
その心の叫びは、あまりに必死だった。予想が的中した上に、想像していなかった被害に、「ごめん」というしかなかった。
「言葉の御呪いは東方の古い魔法にもならないし、師匠やソウジさんは気付くだろうな」
落ち着いたセロは、美味しくなれのおまじないについて詳しく教えてくれた。炭酸飲料の缶を開けて、ちまちま飲んでいると、セロの指が缶の底を突いてきた。むせそうになって、睨み返した。
「新年の日の出に今年の抱負を宣言するとか、目標の達成の為に、自身のあり方を制約する目的で使用される。願う時には、他者に奉仕する精神を制約として、誓う事が前提になる」
「新年のお祈りって、ちゃんと魔法だったのか……」
こつこつと良い音が鳴る。酸味と甘みと一緒に、泡の刺激が舌に痛い。舌を揉んで飲み進めれば、セロは「なのに」と言葉を区切った。
「お前の呪いは、その効果の方向が自分ではなく他者に向いている時点で、御呪いとは別物だ」
「やっぱり」
効果の方向が違うなら、御呪いとは違う影響が及んだ結果、美味しくなっている。現象の鎮静化とはどうつながるのかが解らないな。缶の中身を半分残してテーブルに置くと、セロはテーブルを指で叩いた。
「なにせ、師匠とソウジさんが気付かなかった。言われてみれば、って思う程度。俺はおかしいと思ったから実験した」
「じい様も気付いていないの?」
「俺が教えたら、珍しく笑ってさ。その一件で弟子にしてもらえたくらいだ」
セロは頷いて、子供の頃に隠れて行った実験を明かしてくれた。
疑問に思ったのは、学校の夏休みの時。じい様の家に泊まり込みで修行していて、味噌汁がよく出たらしい。ある時、いつもより美味しいなと思ったが、普段通りに作ったと義父に言われた。けれど、毎週末の昼食に出てくる味噌汁が、なんだか美味しい。変だなと感じて台所を覗いた。そこで私の存在を知り、何度も美味しくなれと呟くので、呪われているかもと思ったようだ。
「師匠に頼んで、自分で料理を作らせてほしいって頼んだ。で、調理場に立った日……仕返しをした」
「なにかあった?」
セロと一緒に台所に立った日のことは覚えている。初めて厚焼き卵を一から作った日だ。特に問題はなく、美味しく焼けた記憶しかない。すると、セロは爆弾を落とした。
「家から持ってきた唐透辛をお前のボウルに入れた」
「はあ?!」
唐透辛は、無色透明の激辛な調味料で、ネギ油のような香ばしい匂いが特徴だ。香りに惹かれて何滴も入れてしまい、辛さに撃沈する人も多い代物。子供の料理に入れたらまずいだろ、と言いかけて気付く。
「何滴入れたの?」
「小さじ一杯分だ。普通はむせるし、子供は呑み込めない」
セロと目が合って、お互いに指を突き合わせた。
「美味しい味の許容外だから」
「無効、無毒化された……が、正しいのだろうな」
納得しかけて、セロの肩に拳をぶつけた。
「子供になんてものを食べさせるの!私だからまだしも……!」
「悪かったよ。でも、その後も幾つか仕掛けた」
辛い物が駄目ならば、甘すぎるもの、酸っぱいもの、苦いもの、塩辛いもの、と次々に料理の邪魔をしてみたが、どれも美味しい範疇を越えた味にはならなかったらしい。一年もかけて私の手料理をくすねては、時間が経っても美味しいままだと知った。「腐るとかは対応しない」とセロが言ったので、もう一度肩を殴っておいた。埃を掃うように肩を撫でるセロは、悪びれもなく続けた。
「接触機会が増えるほどに、こいつは呪術使いじゃなくて、解毒しているだけじゃないかって思った」
「異能の範疇ってことね」
「だが、食品の中にある有害なものっていう基準は、個人の身体と心に依存したものだ。誰もが美味しく感じるのは、認識阻害としか思えん」
美味しいものは、心身が求めているものだ。有害なものを排除するのは理解できても、そんな個人の感覚を、一言で共有させてしまうというのは魔法魔術以外に想像が出来ないということだろう。
呪術かも知れないと疑うのは、普通なのかも。しかし、ふと私は思いだした。
「あのさ、閉塞の地で、私の能力は現象の鎮静化を含んでいる、って言った人が居た。もしかして、不必要な成分を分解しているのと同時に、舌の感覚を整えているという事はないかな?」
「……どういうことだ?」
セロが腕と足を組んで首をひねった。スケッチブックに、幾つかの成分を文字で書く。
「味が濃い料理に調味料とか、あまいお菓子とかを食べていると、だんだんと薄味の料理が物足りなくなるって……聞いたことない?」
「ない」
はっきりと言い切られて、むしろ確信が持てた。私は「そっか」と頷きつつ続けた。
「濃い味付けを好む人の舌を、薄味でも満足できるようにする健康法がある。私のおまじないは、その健康法と同じ様に、舌の感覚と幸福感を戻しているのかもしれない」
通常は数週間かかる改善法だ。それを一瞬で行って、舌の感覚を鋭敏にし、濃い味でしか満足できない頭を整えているとするなら。自称神様の現象の鎮静化も納得できる。セロはすこし天井に視線を移してから呟いた。
「つまり、様々な味を感じやすくしているってことか」
「極端に嫌いなものとかがない限り、全員が美味しいというのも説明がつくよ」
味覚の検査実験をして確認しなければならないが、予想は正しい気がした。しかし、セロは腕を組んだまま眉を寄せている。
「俺は探索者協会の行動食を週に何度も食べているが……生野菜も何も付けずに食べるのも好きだ。薄味なんて、感じたことないぞ?」
自分の味覚が変わっているという自覚はないらしい。
「セロ、じい様の家で作った味噌、貰っているでしょ」
「そうだな。あの味噌は、本当に美味いが……まさか」
「仕込みに私も参加しているから、味噌を食べるたびに、味覚が元に戻っていると思う」
美味しくなれのおまじないの効用は、セロの方が身に染みているだろう。セロは目を見開いたあと、ふと笑った。
「ポーションのテスターに選ばれる理由も納得だな」
私の料理を食べていれば、味覚が良い状態を保ちやすい。性質としては適任な仕事だ。「確かに」と呟けば、ふたりして笑いあった。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
次話は制作中です。2026.10.4




