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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第5章 崩れた日常

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第157話 ミレーの涙

 まずきんちゃんは、美羽から聞いた限りの日本でのことを話した。

美玲が亡くなった時に祖父母が美羽と美奈を引き取りたいと申し出たこと。

しかし、父親の賢治がそれを拒否したこと。


 その後、美羽と妹の美奈は外に出るなと厳命され、家に閉じ込められたこと。

食べるものもなく、賢治も帰ってこなかったこと。


 そして、美奈が餓死してしまったこと。

美羽も餓死寸前で、女神レスフィーナに救われて神界に連れて行かれたこと。


 そこまで話すと、ミレーは手で顔を覆った。


「ごめんなさい、美奈ちゃん。苦しい思いをさせてしまって。お腹空いてつらかったわよね。

ああ……、私は許されないことをしてしまったわ。ごめんなさい」


 ミレーは号泣した。

 

 美玲は事故で亡くなったのだ。

その後のことを責めることなど誰にもできない。


 しかし、美玲本人にしてみれば、二人の幼い子を見捨てたも同然なのだ。


「ミレー様……」

「美羽ちゃんも美奈ちゃんも捨ててしまった私を恨んだでしょうね。

当然だわ。二人がいるのだから、もっと気をつけて運転するべきだったのよ。

美奈ちゃんを殺して美羽ちゃんを危険な目に合わせたのは私よ。

なんて可哀想な子達なの。ごめんなさい」


 ミレーは激しい悔恨の念に囚われる。

実際のところ、美玲は車を運転していた時、事故に巻き込まれただけだ。

事故に遭ったことは、完全な不可抗力だった。


 しかし、ミレーの後悔は深かった。

母として最愛の我が子を守ってあげられなかったことに、強く胸を痛めた。


 きんちゃんが口を開く。


「ミレー様。少なくとも美羽様は、あなたのことを恨んでいませんでした。

それどころか、今でも大切な思い出としてあなたのことを大切に思っています。


 毎日のようにあなたと美奈様のことを美羽様の口からお聞かせいただいていました。

それは楽しそうに語っていましたよ。


 それに、私の体は金魚ちょうちん祭りで見た、金魚ちょうちんをモチーフにされているのです。

それは、あなたと美奈様と美羽様の3人で行った、大切な思い出だからではないでしょうか?


 それは、美奈様も一緒で、最後まで、3人で行ったお祭りが楽しかったと言っていたと聞いています。

楽しい思い出なのは、あなたのことが大好きだからではないでしょうか?」


 ミレーが顔を上げてきんちゃんを見る。


「きんちゃん……」

「あなたは、間違いなく美羽様と美奈様に愛されていましたよ。

恨んでいるはずはありません」

「ふえーん」


 前世の記憶があるだけで子供のミレーは、再び泣き始めた。

今度は、少しだけ嬉しい涙も混じっていた。


 状況がわからないが、心配で見守っていた女性たちは、ミレーの様子を見て笑顔になった。


 



 美羽の現在の話は、また今度にすることにして、全員きんちゃん風呂から上がった。


 上がる前にきんちゃんが泡と水流を起こすことによって、みんなの体を洗い、浮かせたお湯の球を頭にかぶせてそれも泡と水流で頭を洗ってあげた。

 みんな、身も心もさっぱりすることができた。


 



 「さて、決めないといけないことがあります」


 きんちゃんがそう言うと、椅子に座ってくつろいでいた女性たちが全員頷く。

エリーナが代表して口を開いた。


「今後の行動のことですよね」

「はい、今夜も疲れを癒す意味でもこちらで休めばいいと思います。

でも、明日には行動をしましょう」

「はい」

「まずは、どこに行くかです。

開拓村に帰るのか、近くの街に行くのか」


 そう言うと、みんなが暗い顔になった。

エリーナが辛そうな顔をして言う。


「私たちだけで開拓村に戻っても、生活することもままなりません。

かと言って、街に出ても親戚や知り合いもいない上に拠点もない街で暮らすには、話で聞くスラムというようなところに行くしかないでしょう。

私たちに耐えられるかどうか……」


 そんなエリーナの返事をきんちゃんは見越していたように、それに応えた。


「ええ、この2択では難しいでしょうね。街の生活も何人かは職を得ることができるかもしれませんが、全員は無理でしょう。

まして開拓村に女性だけ10人でっていうのはかなり難しいかと思います。それに、拐われた人たちも心配ですよね」

「はい……」


 女性たちは俯いてしまう。

これからの生活の見通しのなさと、拐われてしまった者たちのことを心配する。

 

「ですから、第3の選択肢もあります」

 

 すると、すがるように女性たちは顔を上げる。


「それはなんですか?」

「それは、拐われた人たちを鉱山に取り返しに行って、開拓村でみんなで元の生活を送るということです」


 女性たちが驚いた顔をする。

エリーナは恐る恐るきんちゃんに尋ねる。


「そんなことができるのですか?」

「普通ではできないでしょうが、今みなさんには私がついています。私は強いので、鉱山の一つや二つ、陥落させることなど容易です」

「で、でも、ここまでしていただいて、これ以上やっていただくことなんて……わたしたちは貧しいので大したお返しもできません」

「私も、普通だったら善意でこんなことはしません。しかし、今はミレー様があなたたちの一員でいます。

私はミレー様のためでしたら、いくらでも力をお貸ししますので、遠慮はいりませんよ」


 ミレーが自分のことを言われて、驚く。


「きんちゃん」

「ミレー様、あなたのために動くことは、なんの労力とも思いません。ただ、頼っていただけるだけでいいですよ」


 エリーナが、ミレーを見てから、きんちゃんを見る。


「本当に可能でしょうか?」

「ええ、あなたたちを解放した時に私の力は確認したと思われますが」

「確かに……。ミレーちゃん。きんちゃんに力を貸してもらってはどうかしら」


 エリーナがそういうと、ミレーも頷いてきんちゃんを見た。


「それじゃあ、きんちゃん。私に力を貸してもらえる? みんなを助けたいの」


 きんちゃんは、金魚の体をくるっと一回転させてから言った。


「お安いご用です。ミレー様」



 翌日、きんちゃんとエリーナやミレーたち女性10人は、家族や仲間が奴隷として送られた、鉱山へ向けて旅立った。


 ちなみに、奴隷商人や護衛たち11人は、きんちゃんが女性たちの目につかないように、秘密裏に処分した。

女性たちも勘付いてはいたが、誰も口に出さなかった。


 11人が持っていた金目のものは結構な額になったので、村の再建費用にするため、きんちゃんが一時的に預かった。


 もちろん、馬車や馬も頂いたのだった。


 

 

 

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