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女神様の使い、5歳からやってます  作者: めのめむし
第5章 崩れた日常

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第156話 きんちゃん風呂3

「私の名前はミレーよ」

「ミレー……?」

(私には、ミレーという名に1つ思い当たるものがある。しかし、まさか……)

「ええ、私の名前はミレーだけど、前世があるの」

「前世?」

「ええ、前世の名前は小桜美玲っていうの。美羽ちゃんの母親よ」


 きんちゃんは驚きのあまり固まってしまった。


 その後、ミレーが感極まって再び泣きじゃくってしまったので、それ以上話すのはやめて、泣き止んだところで寝るように促した。


「きんちゃんさん」

「きんちゃんとお呼びください」

「分かったわ、きんちゃん。明日、美羽ちゃんのことを聞かせてもらえるかしら」

「ええ、もちろんです」


 きんちゃんの出しておいたテントに行くと、女性たちが馬車から毛布などを出してきて、寝床を用意していた。


 ミレーも手伝って、自分の寝るところを確保して就寝した。

ミレーは今日は眠れそうにないと思っていたが、疲れと泣いたせいもあり、いつの間にか眠りに落ちていた。


「小桜美玲……美羽様のお母様か……」

 

 きんちゃんはそんなミレーの寝顔を見張をしながら見つめていた。

その金魚ちょうちんの顔からは何を思っているか、誰が見ても読み取れなかっただろう。


 翌朝、ミレーが起きると女性たちは皆起きていて、きんちゃんからもらった食材で朝食を作っていた。


「ごめんなさい。寝坊しちゃって」

「あら、ミレーちゃん。まだ小さいから寝ていてよかったのよ。子供は寝るのも大事な仕事だもの」


 元気な女性がミレーにそう言った。


「ありがとうございます! でも、お手伝いします」

「そう? それならトマトを切ってもらえるかしら。きんちゃんが新鮮なトマトまで用意してくれているのよ。本当にありがたいわ!」

「トマトですね。わかりました。でも、きんちゃんには感謝ですね」

「「「ねー」」」


 周囲の女性たちが朗らかに同意した。


(すごく雰囲気が良くて良かった。昨日の朝は、まだみんな奴隷で苦しんでたから)


 ミレーはみんなの様子にホッとする。


 そこへきんちゃんがやってきた。


「ミレー様、おはようございます」

「あ、きんちゃんおはよう」

「なんのお話をしていたんですか?」

「うふふ、全てきんちゃんのおかげって話よ」

「「「ねー」」」


 ミレーを含めた女性たちは、顔を合わせて笑い合う。

 

 きんちゃんには、なんのことかわからなかったが、ミレーがとても明るくて良かったと思う。


「それは良かったです。食材なら、まだまだ、たくさんあるので遠慮なく使ってくださいね」

「「「「ありがとう、きんちゃん!」」」」

「どういたしまして」

(みんな元気でよかったですね。今日は事情を聞かないといけないと思っていたので、話せそうですね)


 きんちゃんは、周囲に警戒しつつ朝食を作る光景を眺めていた。


 食事が終わり、食後のお茶を飲んでいる時に、きんちゃんがみんなに声をかける。


「これからのことを決めたいのですが、実は私はこのあたりのことに疎くて状況がわかりません。

ですので、世間の常識的な部分を押さえながら、皆さんの現在の境遇をお話いただけませんか?」 


 すると、元気そうな女性が口を開いた。彼女が毎回率先して喋ってくれる。


「私はエリーナって言います。この10人の取りまとめ役になっています。

私たちはここから馬車で3日かかるところにある開拓村に住んでいました。

開拓村といっても、私たちの親の世代が始めた村ですので、開村から20年以上は経っていますが。

村全体で80人ほどいました。

今まで、忙しいながら平穏だったのですが、3日前に大規模の武装した奴隷商人に村が襲われて、みんな捕まってしまったんです。


 それで、全員あの首輪をつけられて、若い女性の私たちとそれ以外に分けられました。

私たち以外の人たちは、隣国の鉱山に送られたみたいです。


 そして、私たちは隣国の都市に送られて、奴隷オークションにかけられることになっていたようなんです」

「80人の村を襲ってみんな奴隷にするなんて、計画的だったんですね」

「はい、その1週間ほど前から村に訪ねてきていた男たちがいたんです。

それが後で分かったのですが、奴隷商の一味でした。みんな親切にしていたのに」

「そうですか、他の方達が送られた鉱山というのは近くなんですか?」

「多分こことは反対方向だと思いますが、そこも馬車で3日ほど行ったところにあると聞いたことがあります」

「それでは、今頃鉱山についているってことでしょうね。ところでエリーナさん、失礼ですが開拓村出身にしては言葉遣いが丁寧ですね」

「実は村長の娘なんです。村の外の人と話すことも多かったので……。父と母と兄と弟がいたのですが、鉱山に連れ去られてしまいました」

「そうだったんですね。ところで、今後はどうしたいですか?」

「私たちだけでは、開拓村はどうにもならないし、まだ、どうすればいいか、分からなくて。それに、家族のことも心配ですし」


 エリーナはこれまで元気だった顔を心配そうに歪めてしまった。


「そうですか。少し考えてください。近くの村や町まで護衛もできますので」

「……ありがとうございます。少し考えさせてもらいますね」


 エリーナは力無い笑顔で言った。


(元気そうに見えても、やはり無理をしていますよね。何か元気になるものは……)


 きんちゃんは、何かないか考えるが、美羽とクララとレーチェルが楽しんでいたものを思い出した。


「そうだ、皆さん。お風呂に入りませんか?」


 エリーナが不思議そうな顔をして言う。


「お風呂……ですか?」

「ええ。村にありましたか?」

「いえ、川で水浴びするか、体を拭くくらいしかありませんでした。存在は聞いたことはありましたが、私たちの村ではとても」

「そうですか。それでは用意しますね」

「どうするんですか」

「見ていてください」


 そういうと、きんちゃんは少し離れたところに魔力を集中させる。

すると5メートル四方で50センチほどの深さの水の塊が現れた。

それをさらに魔力をこめると、今度は湯気がたちのぼり始めた。お湯になったのだ。


 お湯の外側を魔力でコーティングしてお湯が流れないようになっている。


 女性たちがみんな呆気に取られていた。


「これは、私の主人が命名した、きんちゃん風呂です。どうぞ、裸になって入ってください」


 そうは言っても、みんな開拓村生まれだ。お風呂に入ったことがない。

 お風呂の外側のゼリー状の部分をツンツンしたり、遠目から眺めたり、キョロキョロしたりしている。


 そんな中、一番に裸になって入ったものがいた。


「きゃー、気持ちいい」


 前世の記憶では毎日風呂に入っていたミレーである。


「あったかくて気持ちいいですよ」


 ミレーは風呂に浸かりながら、ニコニコして言った。


 きんちゃんが続けて言った。


「服は人のと混じらないようにひとまとめにしておいてください。私が洗っちゃいますから。さあ、どうぞ入って」


 きんちゃんにそうまで言われれば、入るしかないとエリーナが服を脱ぎ、その場に畳みひとまとめにして、きんちゃん風呂に向かった。


 エリーナが風呂の淵に入っていくと、ゼリーのようにぷるんとお湯が震え体がスッと入っていく。とても不思議な感覚だ。


 ミレーの真似をして座ると、体にじんわりと温度が伝わってきて、体がほぐれてきて、疲れが抜けていくような感覚になる。


「まあ、とても気持ちいいわ」


 そんな、ミレーとエリーナを見た女性たちも、我がちにと服を脱ぎ風呂に入っていく。


「「「「気持ちいいー」」」」


 みんな、幸せそうな顔をしてお湯に浸かった。


 (やはりお風呂にして良かったですね。美羽様の世界では気分転換に入る方も多いと言いますからね。気持ちを切り替えられるでしょう)


 きんちゃんは、女性たちの脱いだ服をそれぞれ水魔法で取り込み、ぐるぐると水流を起こして、洗濯をする。

それが終わったら、空中に浮かせた洗いたての服に魔法で温風を吹きかけ乾かした。

空中に浮いた10人分の服が風もないのに、風に靡いている風景は不思議に見えた。


 きんちゃんは、服を乾かす魔法を維持したまま、ミレーが入っているところに近づく。


「きんちゃん、ありがとうね。助けてもらったばかりか、ご飯とお風呂までもらっちゃって」

「いえ、私にも目的がありますし、何よりもあなたからの信頼を得たかったっていうのがあります」

「どうして、私なんかの信頼を得たかったの?」

「それは、もちろん美羽様のお母様ですから。美羽様のお母様でしたら、私がお守りするのは当然ですし、それには信頼していただかないと」

「ふふふ、美羽ちゃんの母親だと、特別待遇なのかしら」

「もちろんです。私にとって美羽様よりも崇高な存在はありません。美羽様が私の存在意義なのです。そのお母様でしたら、もちろん特別待遇なのですよ」

「まあ、美羽ちゃんったら、すごいのね。それで、目的の方は何かしら」

「実はこの世界は、今美羽様がいる世界とは違うのです。異世界というものですね。ですから、美羽様の世界に帰るためにできることはまずは情報を集めることなのです。ただ、ご覧のように、金魚ちょうちんの体では情報収集が難しいので、協力者が欲しかったのです」

「え? ということは、私、美羽ちゃんに会えないのかしら」

「現時点では、不可能ですね。方法を見つけるのにも、どれくらいかかるか。下手したら数年、数十年とかかるかもしれません」

「え〜、そうなの。私、すぐに美羽ちゃんに会えると思って、喜んでしまったわ」

「ぬか喜びさせて申し訳ありません」

「ううん、勝手に勘違いしたのは私だし、美羽ちゃんが生きているってだけで嬉しいのよ」

「美羽様もミレー様と会えれば喜ぶでしょう」

「それで、どう見ても美羽ちゃんの忠実な僕にしか見えないきんちゃんがどうしてこの世界にいるの」


 ミレーのその質問に、きんちゃんは後悔の色を浮かべながら、黙ってしまった。

それを見たミレーは声のトーンを落としながら、静かに聞いた。

 

「何か、深刻なことがあるのね」

「はい。深刻な事態なのです。実は私は邪神によって、この世界に飛ばされたのです」

「邪神?」

「はい、私と美羽様は邪神と戦っていたのです」

「詳しく聞かせて。どうしてそんなことになったかを。いえ、美羽ちゃんがそっちの世界に行った頃から話してくれると助かるわ。

なぜ、日本にいたはずの美羽ちゃんが異世界に行ったのか。あと、美奈ちゃんのことも聞きたいの」

「わかりました。それでは私の知っていることをお話ししますね。」

「ええ、お願いします」

「はい。日本にいた頃、美羽様は……」


 こうして、ミレーはきんちゃんの話に聞き入った。

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