拙作物語の基礎となる個人的な思想観
もしかしたら以前書いたものと一部重複する部分もあるのかもしれないが、改めて想起叙述してみたい。
『時神と暦人』、『思い出の潮風食堂』、『ローマ神はいつも気まぐれーロマンティックなSFラプソディ短編集ー』、『神明社のある街角の風景-ハートと御縁の浪漫物語-』が僕の主題や思想を素直に映している作品シリーズである。軽く紹介すると、前者三つがSF ・ファンタジーの部類、後者一つが文芸作品である。そしてすべてハートウォーミングのジャンルに属する作品である。思想的な根幹にはスピルバーグやO・ヘンリー、眉村卓さん、筒井康隆さん、藤子F不二雄さんなんかがあるって言ってもらってきた。読むこと自体は乱読ぎみだったので、別になんでも読んだ。
もし拙作をお読みいただいている方がいらっしゃれば、ご理解いただけると思うが、僕の作品は性善説に立った視点で人物像を描いている。実際、物語と同様に実生活でも僕は性善説で他人様と接するように心がけている。ただ物語と違って現実の世の中というのは、我欲や我儘、仇、齟齬による悪意解釈など黒い心もここかしこにて数多く散見される。とっくの昔に僕自身は放棄したが、特に多いのが罪の擦り付けとマウント取り合戦の小競り合いである。勿論僕の人生での視点から見ての話ではある。
たまにそれをぼやくと「お前さん。いい加減、そのお人よしはやめときな」と十年も二十年も前から知人たちに言われてきたのだが、なかなかやめられない。持って生まれた田舎者気質が思考のどこかにまだ捨てきれずにいるようだ。それを言ってくれた知人たちは「結局、傷つくのは自分だよ、人を見て好意はやらないと」とそれなりの結論を伝えてくれていた。
まあそこで考えたのが、イケずにならず、モメもせず、カモにもならずという立場のキープをするために「貝になる」という方法だった。不完全な僕。励まし、アドバイス、なだめかたなどが半人前だ。ここは宮沢賢治さんのように人間が出来ていなので仕方ない(笑)。まあ、実際地位や名誉、財力も権力もないものが正義など振りかざしても何の効果もないのだ。また揚げ足を取られて悪用されるのがオチで、擦り付けの餌食になりかねない。二次災害である(笑)。
こちらからは必要以上のコンタクトは取らず、その対象人物との時間が長くなる中で時が来るまで黙って観ている手法、性格やお手並みを拝見という感じだ。安全な人物、心の奇麗な人物、信頼に値する人物を見極めるだけだ。僕に対してだけでなく、その人がほかの人と接している対応や所作を観察して、当該の方の人徳や力量を計るというのものだ。それが実は作品の中にも出てきたなあ、と最近は感じることが多くなった。人間観察は小説の良し悪しの根幹に関わると多くの小説家が残しているのだが、ようやくなるほどと合点がいくようになった。
つまり近年の僕の作品の場合、登場人物の行動が以前のような性善説に立った規範的な感情や動きというよりも、プロットに乗せたその場の臨場感に合わせたものが多くなった。いろいろな人物パターンを見て持ち駒、引き出しが確実に増えたようだ。勿論その根底には性善説は依然として生きているのだが(人間根幹はそう変わりません)、いちいち作品中に地の文で説明書きをしなくなった。セリフや振る舞いだけでこの登場人物はいい人だと伝えておいて、さらにその上に物語を盛り上げるための役回りをさせるように仕向けて書くのだ。ここに到達するのに普通の人はきっと若い時期で、もっと早いのだろう。僕はドジでのろまな方なので、おかげさまで今頃である(笑)。まあ、いい作品を書くのに年齢など関係ないという作家先生も多い。心の整合性が達すると勝手に降りてくるらしい。そう願いたいものだ。
叙述場面でいえば、バレた気まずさ、受け入れた信頼感、我を忘れて怒り心頭、無力無抵抗なうなだれ感などが、上手くキャラクターの喜怒哀楽とプロット進行の要所で重なってバランス表現できているのが第一歩なのかな? って思う感じだ。もちろんこんなのは、さじ加減が自分だ。なので自画自賛の域を超えていないから、僕本人の所見として、総括はまだまだではある。人間模様というのは相手に伝わる手法であるから、僕の思いつかない手法が他に何通りもある。僕とは違う手法で作品上の感情や所作を表現できている方の作品もごまんと拝見している。頭の下がる思いだ。
それは単純に知識量ではない。知識なんてのは調べればわかることで、このPC時代になんの役にも立たない。昨今の重要な表現方法は感情表現の引き出し数とその表現法なのだ。両方が揃うと最高の感情の見せ場である。前に自分しか体験していない体得知識は大きいし財産だ、と記したが、まさにその通りで体得知識と感情表現がバランスよく配合されて、それを相手にわかりやすく、しかも美しい文体や単語で織り綴っていくのが理想なのだろう。僕の場合、道のりはまだまだ長そうだ。さて今週は大祓だ。邪気を落とす季節である。何とか少しでも前に進もう。ではまた。




