うわさのうるとられああいてむ
「んじゃ、音声切ったついでに、あれ確認しておこうか。リザ、上で拾ったカード出してくれ」
「命令受諾」
リザはポケットからぴんくの落としたアイテムを取り出した。
「どうぞ、導師」
僕はそのカードを受け取って確認。
「……」
「おにいちゃん、何のカードだった? 高く売れそう?」
「高くはちょっと無理そうかな?」
「残念無念?」
「使えなくはなさそうだけど、基本的にはキワモノカードというかネタカードだね」
「水着アーマーみたいな?」
「こんどはそっち方面じゃない」
残念だけど!
「【ふぁんしーくぎばっと】。近接戦闘用打撃武器だね。形はちょっとネタっぽいけど、性能はATKにプラス補正効果があるし、使用しないときにはカード化できるのも使い勝手がいい。プラス効果が絶対値なので、十層から十五層くらいまでなら十分使える武器だ。プラス二十パーセント武器を持っていれば優劣が逆転するのがこのあたりだね。これ以上の性能の武器を持っていなければ、ステータスを問答無用で五十上げてくれるわけだから、これ以降も使わない理由はない」
「十分使えるのにネタ武器なの?」
「デザインがね。こんな感じだ」
僕はカードを千紗に見せる。
「すっっっごく ファンシーだね!」
パステルピンクベースの色合いで、花やリボンをあしらったデザインはすごくファンシーなんだが、釘バットがすべてを台無しにしている残念アイテムだ。
いや、一部ファン? の間では需要があるかもしれないが。
「とりえあず近接系は千紗だけなんだが……」
「うーん……保留で?」
「デザインはともかく性能はそれなりだから、売れば数十万くらいにはなるだろうとは思うけど」
「これが数十万円!?」
「このくらいの性能の鈍器ならざっとこれくらいはするし、使用しないときはカード化できるからデザインがあれでなければ更にプラスアルファが付くだろう。鈍器系は重量や大きさの面で負担になることも多いからね。ネタ武器を求めているマニアもそれなりにいるから、うまくマッチすれば百万円クラスが出てもおかしくないと思う。
前にも言ったけどこういうキワモノアイテムは欲しい人がどれだけいるか、どれだけお金を持っているかで値段が決まってくる。あまり長く使える武器じゃないから、基本的に高く買ってくれるとしてもマニア層だけだろう。低階層の冒険者はあまり稼げていないだろうし。そうなるとオークションにそういう人が参加するかどうかで値段が決まってくるんで、ひじょうに値段の読みにくいアイテムだね」
「高く売れるかどうかわからないアイテムばっかだね」
「まあ、URアイテムなんて、えてしてそんなもんだよ。レア職と同じでレア度が進むほど性能や見た目、制限事項が非常にピーキーになるんだ。ハマれば特定の状況においては強かったり、コレクターズアイテムとしては面白いんだけどね。アイテムはコモンのほうが癖がなくて無難だから使いやすい。売るときの値段も安定しているし」
物が出るからそれなりの相場観が作られる。
めったにでないやつだとどうしても運任せになっちゃうからね。
キワモノコレクターだっていつもオークションサイトに張り付いているわけでもないだろうし。
「まあ、近接武器が必要になるのは三層以下だし、千紗のレベルなら素手でゴブリンが殴り殺せる程度のステータスはあるはずだ。多分その双棒w でもオーバーキルだぞ。このペースでレベルが上っていけばずっと素手でもいいかもね」
「それは嫌! かっこいいランスと盾が欲しい!!」
うん。千紗はランスマニアだったね。
こういうマニア向けに、カッコイイデザインの武器も売ってたりするからね。
聖剣シリーズとか、伝説の武器を模したやつとかw
性能はともかくとしてw それなりに需要はあるようだ。
デザインはともかく魔物素材でカスタマイズすればそれなりの性能にはなるらしい。
後付でカスタマイズしてくれる工房なんかもあるようだし。
まあ、それなりにいい値段はするけど。
「それなら売ってもいいかもだけど……」
「導師。明日はURアイテム集めに行きませんか? たくさん集めればそれだけ選択肢が増えます」
「リザちゃん、ナイスアイディアだよ! ランスとかでないかなー」
「えっと、ほんとにそんなに出るんですか?」
「少なくともいままで外したことはありません。百発百中です」
「ソウデスネー」
考えてみれば全部が最高値で売れたとしたら数十億のレベルに達するのは間違いないね!
彼女たちのレベルアップ速度やスキル取得速度もやばいけど、URアイテム取得率はもっとやばいかもしれない。
「今回のアイテムだと【せいじょのどれす】と釣り合いませんよね?」
「まあ、こいつは【聖女】じゃなくても使えるアイテムだが使えるのは初級から中級者レベル。値段は高くても百万円クラスだ。対する【せいじょのどれす】は売ればおそらく数千万はくだらない。桁違いだ」
「数千万円!」
「末端価格で億の値がついても僕は驚かないね」
聖女は少ないからおそらくこれを最初に手にするのは転売屋なんて言われているバイヤーだろう。
そこから何人かの手を経て最終的に聖女持ちのところに行く頃には億の値段でもおかしくない。
そんなぶっ壊れ性能だ。
ひとつのアイテムでこれだけの性能を叩き出せるものなんて見たことないからね。
他の防具等が装備できないのはちょっとあれだけど、無くたっていいくらいのステータスアップ率だし。
「純華ちゃん、これ着る気なの?」
いや、着せるのは全然かまわないんだけど。
とりあえず通常はマントでも羽織らせておいて、必要になったらがばっとはだければ、りっぱな痴女w じゃなくて、性能を発揮する。
他の冒険者は近寄ってこないから、鑑賞できるのは僕だけだしw
「わかりません。でも必要になった時に売ってしまってたら使えませんよね? 保険として権利は確保しておきたいんです」
「なるほど。絶対に使うことのないアイテムならともかく、使う可能性がわずかにでもあるのなら残しておくほうがいいかもね。これまでの実績からして、まだまだURアイテムが出そうだし、全員が換金に賛成にならない限り、確保しておくか」
「さんせーい」
「同意します」
「いいと思います」
「んじゃ、このカードはとりあえず純華ちゃんが持っておいて」
「いいんですか?」
「ああ。この手のアイテムで一番怖いのは盗難とか全部まとめてなくしちゃうことだからね。だからみんなで分散して持っているんだ」
「千紗も持ってるよ」
「妾も持ってます」
「ということなんで、免許と一緒に入れておくといいよ」
「わかりました」
純華ちゃんはカードを受け取り、パスケースの中にしまう。
「とりあえず僕が確認しておきたいことはこれで終わりだけど、みんななにかある?」
「だいじょうぶー」
「問題ない」
「ありません」
「んじゃ、とりあえず草原フィールドと荒野フィールドの中間辺りまで言って陣地構築するか? それともボス部屋で毛玉と戯れるか?」
「毛玉がいいと思うのですがどうでしょう? アイテムも落ちますし、確実にもふれます。もしかしたら帰りにもう一度もふれるかもしれません」
お主、なかなかの策士よのう。
モフり二回の上URアイテムも二個を狙うとは。
ダンジョンどさ回りするより効率がいいかもしれない。
まあ、自衛隊が処分してしまっているかもだけど。
「さんせー」
「いいと思います」
「じゃあ、カメラの音声は戻しておいてね。まずはボス部屋に行こう」
「しゅっぱーつ!」
「「「おー!」」」
千紗の掛け声で再び音声をオンにして、みんなは歩き出した。
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