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うわさのこうさつ

 僕は完成した陣地を一応ひと周りし、問題がないか確認していく。


「うん、ペグもちゃんと刺さってるし、テントの張りも問題なし。『結界』の張り方にも問題ないね。はい、三人共おつかれさん」

「「「やったー!」」」


 三人がハイタッチで喜びあう。


「じゃあ、まず君らから休んでいいよ。おやつも食べちゃってね」

「「「はーい」」」


 テント前に敷いたビニールシートに座り三人はそれぞれのリュックを開け用意したお菓子を取り出す。

 まだ十時だがおやつを食べさせるのには訳がある。

 ダンジョンじゃ何があるかわからないから、できるだけこまめに水分補給や栄養補給させるようにしているためだ。

 歩き回って体力も使うしね。

 喉がカラカラでお腹が空いている時に緊急事態が発生したら水さえ飲む暇がなくなり、余計に危ない。

 常に余裕のある状態にしておく必要があるのだ。


「リザちゃんの今日のおやつは何? 千紗はおばあちゃんちから貰ってきたお煎餅とかりんとうだよ。ついに現ナマが尽きちゃった」


 千紗のテンションが低い。

 うん、先月中頃に換金して渡した二千円以外魔石もアイテムも換金していないからね。

 ダンジョンで食べるおやつはお小遣いから出していたようだから、連日の入ダンで食べすぎたようだ。

 とはいえ一度持ち出した魔石は局に持ち込んで換金はできないからね。

 民間でも買ってくれないことはないけど、少額の場合、足が出る。

 手数料が買取金額のパーセンテージプラス一個いくらかなので、一個あたり最低でも数百円の手数料が取られる。

 約百円の魔石なんか出したら完全に赤字だ。

 そういう不要魔石は、一山いくらのジャンク魔石として売るしかなくなる。

 一個あたりにすると数円とかか?

 というか現ナマ尽きるの早すぎない? 今月分のお小遣いって貰ったばかりじゃないの?

 いつがお小遣い日か知らんけど。


「妾はおねーさま達が差し入れてくれたマカロンを持ってきたから交換しましょう。妾のうちでは似合わないからと、おせんべいもかりんとうも買ってきてはくれませんから」

「ありがとうー、りざちゃん! 純華ちゃんのおやつはなにかな? お煎餅いる?」

「えっと、ごめんなさい。わたしもおせんべいなの」

「でも違うやつだから、みんなでちょっとずつ交換しよ!」

「千紗ちゃんと純華ちゃんはどの色がいい? 食べ過ぎるとお弁当食べられなくなるから一人三つにしましょう」


 マカロン入の箱を広げて二人に勧めるリザ。

 って、ずいぶん入ってるなぁ。

 撮影で使った余りだろうからそれなりに数があったんだろうけど。


「わーい」

「あ、ありがとうございます」


 二人は三つずつマカロンを選んでいく。


「じゃあ、リザちゃんはおせんべいとかりんとうどっちがいい?」

「そうね。マカロンは甘いから塩気のある方がいいかしら?」

「じゃあ、おせんべいだね!」

「じゃあ、わたしのも。……えっ、選ぶ余地がないんですけど」

「大丈夫。おせんべいとか食べる機会がないから嬉しい」


 女児達がおやつを分け合ってきゃっきゃうふふしている光景って癒やされるねぇ。


 ぴこーん


 わかってますって。【みまもり ろく】ですね。

 さて、少女だけじゃなくて陣地もみまもりますか。

 僕は少し陣地から離れ、周囲をチェック。


「クリアさんメッケ。第一おトイレに決定!」


 僕はそのスライムに旗を立てる。


「おっ、もう一匹発見。第二おトイレ確保っと」


 今日は四人いるから集まりが早いのかな?

 いきなり二体のスライムを発見してしまった。

 一層はほぼボッチだったから、パーティー人数の違いによる集まりやすさとかよくわからないんだよなー。

 まあ、人数が多いとおトイレも多く必要だからまあいいけど。


「今度はウィンドか。確保しとく?」


 ウィンドはあんまりおトイレ向きじゃないんだよなー。

 変に刺激するとすぐアクティブになるし。

 こっちが攻撃しなくても、他のスライムとかとぶつかっただけでアクティブになるから油断がならない。

 まあ、使わなかったら普通にリザの練習台にすればいいか。

 ぴんく以外はとりあえず確保で。

 ぴんく、てめえはだめだ。

 職業を持っていない子がいる以上、絶対に近づけさせる訳にはいかない。

 本当は職業を得てからも近づけさせたくはないけど、経験を積ませないといざという時困るからね。

 全裸になっても大丈夫なように着替えを持たせているんだ。

 やらせない手はない。

 いや、全裸になっちゃだめなんだけどね!


「おにーちゃーん。クリアいたー? 純華ちゃんがおトイレしたいって!!」

「千紗ちゃん、こえが大きいよー」


 純華ちゃんが大声で叫ぶ千紗を必死に止めていた。


「おう、そことそこのやつがクリアだ。こっちのはウィンドだから、そっちを使うといい」

「わかったー」


 千紗がそう言って純華ちゃんをテントに押し込む。

 なんか音楽が流れてきた。

 おトイレ用の音楽、ちゃんと用意してきたみたいだね。

 残念、って、それじゃ変態だよー。


「一個予約が入ったから、もう一個くらい確保したいところだが。クリアちゃんいますかー」


 確かに集まりがいいな。

 すぐにもう一体のクリアが見つかった。


「いくらなんでも多すぎね?」


 あっというまに四体。

 しかも入り口からさほど離れていないところにも一体いたし。


「こりゃあ、一層に入ってる冒険者少なくなってるかもな」


 人口十万人あたり一個のダンジョンが生えたとは言え、やはり東京近辺は交通の便もいいことも有って本来は人が集まりやすい。

 二種免許の取得者も増えているだろうし、連休で一斉に新人冒険者がやってきたから、東京近郊の一層ボス部屋はおそらく最大最強のぴんくだらけ。

 それを嫌って地方に流れたのかもしれない。

 それでこの近辺はスライムが討伐されずに残っているというわけだろう。

 運良くぴんく部屋に当たらなかった冒険者はぴんくが出るまで、連戦するだろうし。

 これじゃ、いくら自衛隊が駆除しても駆除しきれるもんじゃないよね。

 全国に千二百あまりあるダンジョンがみんなそんな状態で、自衛隊とかが対処したボス部屋を探してウロウロしてたんじゃ、普通のスライムはほとんど放置されている可能性が高い。


「おにーちゃーん! 千紗たちもしておくから、後二つねー!!」

「大丈夫だー。こっちでクリア一つ見つけた。ウィンドはそっちだけだ」

「わかったー!」


 千紗たちもいたしちゃうのかー。

 想像したらだめだよね!


 スライムはまだいそうだから、無害なやつは確保、ぴんくは処分の方針で見回りを続けた。


「なんか旗が八本も立ってるんですけど!」


 その他ぴんく一体処分したので、十分かそこらの間に九体も発見したことになる。

 一層放置説が濃厚になってきたな。

 これまでの冒険者は他の人のことも考えてボス部屋周回については控えるように講習の時に徹底的に叩き込まれたものだが、二種の講習ではそこらへんは省かれているようだ。

 そのため今の冒険者はそんなことお構い無しでやってるんだろう。

 結果、ボス部屋は自分たちでは処分できないボスばかりになり、通常のモンスターは放置される。

 自衛隊も駆除作業はボス部屋に集中しているのかもね。

 一般フィールドがこの状態では手が回っていない可能性がある。


「これ、法改正が逆に仇になってるかもね」


 モンスター溢れを防ぐ目的のためだったろうが現状、逆の現象が起きているように思える。


「といっても、僕がどうこうできるものでもないし。局でも考えてるだろう、きっと。そうだといいなー」


 なんか手が回っていないのか、後手後手になっているような気がする。

 そりゃあ、にわか冒険者が増えたら、手も足りなくなるか。

 うちのチームだけでも、四人に増えているから、なんと四倍増w

 荷物チェックに受付だけでも人員増は必須だし、経験の浅い冒険者が増えれば救急隊の出動回数も増えているかもしれない。

 監視業務の多くをAIに頼っているとは言え、オペレータ呼び出し案件だって増えているだろう。

 余っているところから足りない部署に人員を回せばいいのだろうがそこはそれ。

 お役所仕事の悪い面が出やすいのが人員の移動だね。

 縦割り行政の弊害で、自分の管轄以外のところへ人員を出したがらない。

 忙しい部署も、他から人員を回してもらうと、そこの既得権益が失われるとしてヘルプを出したがらないか、出しても業務経験のない人を受け入れても教えるほうが面倒だと受け入れたがらない。


 忙しい職場あるあるだね。

 忙しい中に新人を入れると、そいつの教育もしないといけなくなるので余計に忙しくなるという矛盾。

 本当なら忙しくなる前に、人員をローテーションさせる等で他部署の業務に慣れさせておけば、人員の再配置も楽なのだろうが、縦割り行政の壁がそれを阻む。

 最近は複数の行政が絡む案件も増えてきたため、横のつながりを重視した行政づくりに取り組んでいるみたいだが、まだまだ先は長そうだ。


「おにーちゃーん、そろそろ交代しよー!!」

「おう、わかった」


 そんな事を考えていたら、三人共おトイレが終わったらしい。

 しまった。

 三人がおトイレしているところ見守れなかった!

 いや、別にみまもりたかったわけじゃないからね! みまもっていればスキルレベルが上がるかもしれないから仕方なくだな。って、何言い訳してんだよ。


 ……とりあえず戻ろうか。


ここまでお読みいただきありがとうございます。

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script?guid=on異世界のジョブズに、僕はなる ~定年SEの異世界転生業務報告書~
もよろしくお願い致します。こちらは異世界ファンタジーになります。
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