うわさのすらいむあそび
「じゃあいくよー」
「命令受諾」
千紗が素早く、クリスラの核を抜く。
そしてペンチで挟む。
何かあっても、すぐに処分できるようにだ。
それを確認後、リザは地面にスライムをちぎったりなすりつけたりしていく。
クリアなので当然はたからは何を描いているかわからない。
しばらく後、リザはその中心にてセリフをつむぎ始める。
「我、エリザベート・ド・ベルナールが求め訴える。妾の眷属たる邪竜の本体よ、ここへいでよ!」
ぺちん!
リザの厨二病セリフに合わせてスライムの核を潰す。
「ほわー」
リザの体の周りに光で描かれた魔法陣が現れる。
うん、いかにも邪竜が現れそうな見事な魔法陣だね!
日々練習してるんだろうな。
努力の方向性はともかく、魔法陣博士と呼んでもいいくらいだな。
「りざちゃんすごいです! 本当になにか召喚されそうな感じがしました!」
おう、普段おとなしい純華ちゃんも大興奮だね。
「妾の手にかかればこんなもの、児戯に等しい」
「リザちゃんの魔法陣は何度見てもきれいだよね!」
「これも長年の研究の成果」
長年て、君、まだ十歳でしょうが。
まあ、この頃は一日が長かった気がするな。
新しい体験が多いほど、長く感じるとか。
そう思うってことは僕も歳をとったってことかな。
とか、ジジくさいことを考えながらも周りの注意は怠らない。
「純華ちゃん、感動しているとこ済まないが、どんなときでも警戒を怠ってはだめだぞ。君たちもだぞ」
「は、はい。すみません」
しゅんとなる純華ちゃん。
「謝る必要はないが、ダンジョンではいろんなハプニングがある。驚いてもいい、感動してもいい。だけど頭の片隅で、警戒することを忘れてはいけない。なんてことを言っても、すぐに身につくわけじゃないからね。注意を受けたら次は頑張ろうという気概で臨めばいいさ」
「うん、千紗も何度も注意を受けた。今もだけど、てへっ」
「不覚」
「君たち子供は経験が少ない分、心の動揺も激しい。だから他に気を取られるなというのは本来無理な話なんだ。だけど経験を積めばその分動揺を抑えることはできる。その経験を出来るだけさせるのが僕の役目でもあるからね。いまのだって初めてだから気を取られた。だけど二回三回と見ていけばそのうち気を取られることはなくなる。だからダンジョンでできること、起こることを大いに体験して、大いに経験を積んでほしい。それが君の君たちの力になるはずだ」
「「「はい!」」」
ぴこーん
おっ、【みまもり】が【よん】に戻った!
今回は触っていないからね!
効果がわからないから、上がったからと言ってありがたみはないんだけど。
下がったからと言って大勢に影響はないけど、なんか残念感があるよね。
せっかくここまで育てたのにーみたいな?
「さて、もう少し行ったところで陣地を構築しよう。ここはまだ入り口に近すぎるからね」
「はーい」
「命令受諾」
「わかりました」
僕たちは入ダンしたときと同じ布陣でダンジョン内を先に進み始める。
途中再びクリスラを見つけたけど、無視して進み、
「そろそろいいかな? じゃあ、陣地構築に良さそうな所見つけて、陣地を作って。純華ちゃんはまだ陣地構築については座学でしか習っていないから、千紗とリザが教えながらやってみてね」
「わかったー」
「命令受諾」
「よろしく、お願いします」
「お願いされたー。じゃあ、まず、できるだけたいらでゴツゴツしてなくて、草なんかもあんまり伸びていないところを探すんだよ」
「探しながらも警戒を怠ってはダメ」
「わかりました。やってみます」
純華ちゃんは真剣な眼差しであたりを見回す。
そして見つけた一角。
「あそこなんかどうでしょう?」
「うん、見た目は良さそうに見えるけど、実際に行ってみて石ころとかないか、穴があったり、水が溜まってたりしないか、スライムとか危険なモンスターが潜んでいないか確認しないとだめなんだよ!」
うん、よく覚えているね千紗。
「他にも地面にペグが打てる硬さかとか、陣地にする場所だけでなく、その周辺にも問題がないかを確認する。討伐は基本的に陣地の外でするから。陣地に入られたら負けと思うように」
リザも補足する。
そう、陣地に入り込まれたら負け。
城に攻め込まれたようなものだからね。
陣地は最後の砦と思うように教えている。
スライムに紐やペグを溶かされるのはできれば勘弁してほしい。
一応ビニールテープを巻いてはいるけど、巻ムラがあったり地面に何度も突き刺していれば傷ついて隙間ができたりする。
わずかでも隙間があれば、スライムはそこから侵入して、全体を溶かしてしまうのだ。
まあペグとは言ってるけど、陣地構築に使っているのは、百均のバーベキュー用鉄串だけどな!
これなら溶かされてもダメージは少ない。
あんまり硬い地面だと刺さらないこともあるけど、草原フィールドだとこれで十分だ。
荒野フィールドだとちょっと厳しいこともあるので、ちゃんとしたペグも持ってきているけど。
こういった道具の選定と実証実験も僕の仕事だからね。
色々と工夫しているわけだ。
予算が無限にあるわけでもないし。
「大丈夫そうだね!」
「同意」
「よかった。先生、陣地の場所、ここにします」
「はい、よくできました。僕が見たところでも問題なさそうだ。ただ実際に陣地を構築している際に問題が見つかることもあるから注意を怠らずにね」
「はい」
長時間そこに滞在するのであれば、杖とかで地面を突いて、本当に地面に穴やもろいところがないか、地中にモンスターが隠れ潜んでいないか確認するところであるが、数時間程度の陣地ならそこまで必要ではない。
労力の割に成果が少なすぎるからね。
安全確認は重要だけど、だからといってやりすぎてたらダンジョン内で一歩も進めなくなる。
十センチ進む度に安全確認なんかしていられないよね。
安全性と経済性のバランスをどうとるかも課題だ。
安全性を考えるなら冒険者の護衛を何人もつけるべきなのはわかりきっている。
経済的負担を考えなきゃね。
経済的負担をどこまで下げてどこまで安全を確保できるか。
今回の試行で確かめていく必要があるのだ。
「じゃあ、引き続き陣地の構築をお願いね。監視も三人で分担しながらやるように」
「わかったー」
「命令受諾」
「や、やってみます……」
まずは邪眼(笑)の持ち主リザが監視任務にあたるようだ。
陣地構築は千紗と純華の役割。
基本的には千紗は教えるだけに徹しているけど。
純華ちゃんは、千紗のアドバイスを受けながら、陣地を作っていく。
「止まれ。スライムが出ました。監視をお願い。始末してきます」
「わかったー。気をつけてね」
千紗たちは陣地構築を中断し、あたりの監視を引き継ぐ。
リザは出現したスライムに近づいていった。
「ぴんく、死すべし」
リザは装備に問題がないか確認。
ゴーグルにポンチョ。
手袋がしっかりハマっているか。
ポンチが風になびいたりしないように膝で挟み込み、ぴんくのやつに手を突っ込む。
流れるような作業で核を抜きペンチで挟み込む。
ぺちん!
やつは光になった。
「作戦終了。ふっ、たわいもない」
「たしかにたわいもなかったけど、りざなら魔法を使っても良かったんだぞ。最大最強のぴんくならともかく、この辺に出てくるぴんくならガチガチに凍らせれば多分死ぬから」
「がーん。そうでした。魔法使いが物理で倒すとか何たる失態」
「魔力を節約するという意味じゃこれでもいいけど、スライム如き倒すのに魔力はたいして必要ないだろ? ぴんくのいたところは陣地からも離れているし、多少やり過ぎても問題ない。状況に合わせて最適な方法を選択する必要があるんだ。ぴんくはちゃんと装備していれば危険はないとは言え、万が一があり得る。遠距離から倒す手段があるのであれば状況が許す限りそれを選択するべきだね。
魔法使いというやつはレベルが上っていけばいろんな魔法が使えるようになっていく。どんどん選べる選択肢が増えていく。
状況によって最適な魔法、最適な威力を常に選択していく必要に迫られる。その他に前衛への指示もしなければいけない。それが後衛職の役目でもあるから、もっといい方法がないか常に考えて行動するように」
小説なんかでもチート持ちの主人公がいろんなスキルを覚えていくけど、実際に使うスキルなんてほんの数種類だったりするし。
やれることが増えれば増えるほど、選択肢は膨大になる。
実際のところ作者だって忘れているスキルがあるんじゃないだろうか。
スキルじゃないけど、世の中には影の薄いヒロインなんてのもいて、作者にすら存在を忘れられたりもすることもあるらしいw
いつの間にか出なくなっていたキャラとか。
スキルにしろキャラにしろありすぎると、こんなことになる。
スキルが増えてきたら有効性が低いスキルについては無いものとし、有効度の高いスキルの組み合わせで対応することも検討すべきだろう。
「導師、ご指導ありがとうございます。今後も精進してきますので、ご指導よろしくお願いします」
「ああ、僕の力の及ぶ限りね」
ぴろーん!
うん、【みまもり】が【ご】になったね。
ちゃんと見守っているとガンガン上がっていくね、このスキルレベル。
相変わらず有り難みは全く無いけどね!
「じゃあ、陣地構築に戻ろうか」
「命令受諾。作戦は終了しました。監視業務に戻ります」
「うん、こっちは特に異常なしだったよ。リザちゃん、あとよろしくね! 純華ちゃん続きからだよ」
「はい、こちらも異常ありませんでした。陣地構築に戻ります」
監視を引き継ぎ二人は陣地構築に戻る。
うん、ちゃんと引き継ぎしてて偉いね。
これが慣れてくるとろくに引き継ぎもしないで、後はよろしくとかで済ませるやつが出てくる。
問題が有ったのかなかったのか、気になることはなかったか、なかったのなかったとはっきり口に出して言うことが大切だ。
ちょっと気になったことが有っても気のせいだろうとか、軽く考えて後でひどい目に会うのはラノベの定番だねw
しばらくして、千紗指導の元、陣地は完成した。
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