はじめてのりべんじ
それ以降出戻り冒険者に会うこともなく階層ボス部屋へ。
「中には誰もいないね」
「ちゃちゃと倒して、ちゃっちゃと二層に行こう」
「もふもふが行列をなして待っているはず」
いや、待ってもいないし行列も作っていないと思うぞ。
とは思うがもちろん幼い少女の夢を壊すようなことはしない。
僕は紳士だからね!
「この間と同じ戦法でいいのかな? リザちゃんが凍らせて、千紗がぶっ叩く」
「まあ、最大最強ぴんくならそれで行くしかないけどね! 万が一違ったらそれに合わせた戦法で行く」
最大最強ぴんくじゃない確率が万が一ってなんじゃいって感じだが。
「りょーかい」
「命令受諾」
初撃はどうせリザの氷魔法なので荷物はそのままだ。
凍らせすぎて接近できなくなってから、陣地を構築しても遅くはない。
一旦陣地を構築すると撤退にも時間がかかるからね。
「おにーちゃん、メイス貸して」
「はいよ」
千紗にメイスを渡し、準備は完了だ。
三人で一斉に階層ボス結界内に入る。
いつものように湧き出る黒い靄。
しばらく後、それは現れた。
「うん、紛れもなく最大最強最悪のぴんく」
「やったー! ぴんくのやつだー」
「ここであったが百年目。悠久の時を渡りついに巡り合った永遠のライバルよ。妾が力、とくと思い知るが良い!」
いつの間にやらリザとぴんくが永遠のライバルにw
どうでもいいけどぴんくを見て喜ぶのはやめなさい、千紗さんや。
他の冒険者に聞かれたら、エッチなの期待してるかのように聞こえるから!
装備や魔法などの遠距離攻撃スキルが無いと全裸討伐だからね!
思わず後ろ確認しちゃったよ。
大丈夫。
誰にも聞かれていない。
「やっておしまいなさい!」
「命令受諾。凍てつく大気よ、極東の地より来たれ。氷結の刃をもって敵を討滅せしめよ! 【アイス・ブレード】」
リザの厨二病セリフで氷の刃が飛んでいく。
そのセリフ、いりますかね? エリザベートさん。
それに凍てつく大気が極東の地より来たら、それって冬将軍では?w
セリフはともかく見事氷の刃はぴんくの土手っ腹に突き刺さり、そこを中心に凍りつき始める。
「やったか!」
千紗よ。
そのフラグはやめてー。
しかもわかっててやってるからたちが悪い。
にっこにこですよ、千紗さん。
「もちろん、妾の一撃から逃れられるものなど存在しません」
「うん、今度は冷えすぎってこともなさそうだね」
氷の刃が突き刺さり、ぴんくの中心近くから凍ったためか、あまり外側に冷気は出ていないようだ。
「一応念のため、これ以上冷気が広がらないか様子を見よう」
「はーい」
千紗が、僕の待ったで攻撃態勢から待機姿勢に戻る。
五分ほど後、表面がわずかに溶け始めたので、これ以上冷気が強まることはないと判断。
「千紗、よし!」
まるで、待てをかけた犬にするような指示で、千紗がかっ飛んでいった。
【とっしん】のこうかはばつぐんだ。
数発でぴんくの芯まで打撃が届き、あっさりぴんくは光になった。
レベル四になった上、前回より温度が高かったからね。
「ふん、たわいもない!」
千紗が捨てぜりふを吐いて引き上げてくる。
結局僕がすることなんて何もなかったよ。
「ちさー、アイテム、アイテム忘れてるから!」
「そうだった!」
あわてて引き返す千紗がお間抜けで可愛い。
「おー! またかーどだぁ!」
「へっ? カメラきってー!」
「もう切ったー」
二度めだからね。
リザも僕もカメラの映像と音声を切って、千紗に近づいた。
「ニレンゾクトカ、ウンガイイナー。サイアクノピンクダカラカナー」
あまりのことに棒読みになる。
「導師よ、いくらなんでも、ごまかし方が下手です」
「そうだよ、おにいちゃん。最大最強ぴんくの組み合わせは二一六分の一。URがそんなにポンポン出たらこんなふうに放置なんかされてないよね!」
「明らかに導師の謎職業が影響してませんか?」
うん、確実にしてるね。
【スキル:みまもり】か職業の特殊効果か。はたまた他の隠しスキルか。
千紗にしろリザにしろ、一応レア職ではあるがそれなりに持っている人間はいる。
しょせんレアだし、上にはスパーレアやウルトラレアが控え、僕のようなほぼ唯一の【天職】持ちに比べればその数も多い。
それだけ研究されているということでもある。
UR職ならまだしもレア職に隠しスキルや特殊効果など聞いたことがない。
「そういえば、おにいちゃんの職業もスキルも聞いたことないよね?」
「妾達のは聞いてるのに不公平だと思うのですが」
「いや、それは指導者として知らないと指導できないというかなんというか」
「それならパーティーで戦う以上、お互いの能力は知っておくべきではないでしょうか?」
いやまあ、そうなんですけど!
なんとなくこの子達に知られるのはまずい気がする
「ぱ、パーティーではなく引率だ、引率! 引率されるものがすべてを知る必要はない!! 君らだって遠足のときとか 他の先生方がどのような役割を担っているか知らされないだろう?」
どうだ、参ったか。
「むぅ。確かにそうだけど! でもなっとくいかなーい!」
「同意。しかし手はある。ほんとうの意味でのパーティーになればいい」
「なるほど、その手があったか」
「その手はありません。いつまでも君たちは僕の教え子ですから。それより出てきたカードはどんなやつですか? アイテム? スキル?」
とりあえずそうごまかして先を促す。
カメラを十分以上止めるとツッコミが入るからね。
カードで出てきた以上はURアイテムで間違いないだろうが、内容はスキルやアイテムの他、テイム可能なモンスターなんかが出たりする。
モンスターはダンジョン外に持ち出し不可なので、外に出るとカードに戻るというファンタジー仕様だ。
「えっと、【水着アーマー】? 装備するとDEFが+10%、ATKが+20%。水中でのAGI+50%。ただし他の防具、服などは装備不可」
キワモノアイテムきたー!
ある種の人には絶大な人気を誇るアイテムだけどな。
まあ、装備としてはまあまあ良さげ。
防具のくせにATKの方の伸びが良いのはよくわからんが!
気持ちはわかるけど!
「これって高く売れるのかな?」
「微妙? お金持ちのマニアが多く参加すれば高く売れるかもだけど、武具としての性能はほどほど? 水中でのAGIプラス効果が高いから、水中のモンスター倒したい人がいればそれなりの値段がつくかもだけど、トップランクの冒険者が欲しがるものじゃないから、値段はさほどでもないことが多いかな?」
「なーんだ。千紗たちで使ったほうがマシ?」
「いけません! 千紗たちにその装備は早すぎます! 十八歳未満使用禁止です!!」
「じゃあ、おにいちゃん使う?」
「うへぇ。そのイラストにあるような防具を僕が使ってみろ。一発で逮捕だ!!」
女性でもかなり際どいビキニアーマーだ。
ダンジョン外なら確実にアウトだね。
海水浴場ならワンチャンあり?
「なら十八歳になるまで保管するか、売るしかないね」
「まあ、それも保留でいいだろ。この間のだってまだどうするか決めていないんだし」
「そうだね。腐るもんじゃないんだよね?」
「腐ったとかは聞いたことないが、落としたとか、盗まれたとかは聞いたことがあるな」
「一応カメラ切ったから平気だよね?」
「どうかなぁ。世の中には考えもつかない悪人がいるから、切ったつもりでも切れないように細工してあるかもしれん」
「そこまでうたがったら何もできないよ」
「そうだけど。じゃあ、とりあえず千紗が預かっておいてくれ。分散して持っておいたほうが何かあった時、被害も分散されるだろう」
「わかったー」
千紗が自分の免許証入れにカードをしまう。
「導師よ、妾は良いことを思いついたのだけど」
「奇遇だなぁ。僕もだよ。だけど今日はだめだぞ。どこかで足止め食らったら純華ちゃんを迎えに行けなくなるからな」
「そうでした。では今日はもふもふを堪能しにいきましょう」
「うん。この間は全制覇できなかったからね! 今日はリベンジだ!!」
こっちもリベンジだったか。
「よーし、二階層に行くぞ!」
「「おー!」」
意気揚々と僕たちは二層へと歩き出したのだった。
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