はじめてのしんじゅくだんじょん
翌日は皆部室に集まり、純華以外は入ダン準備。
純華はその見学だ。
「準備できたら行くぞー」
「はーい」
「命令受諾」
「ごめんねみんな、わたしのために、新宿まで行くことになって」
「全然問題ないよ! 他のダンジョンも見てみたかったし」
「同意」
「ありがとうみんな」
女の子三人になってますます尊さが増したな!
「今日は予定通り、純華ちゃんが講習と試験。僕たちはダンジョン探索になる。新宿ダンジョンは東京中央エリアに当たるため、階層ボスを倒さないと二層にはいけない」
「問題ありません、瞬殺です」
「今度は手加減しろよ?」
「……善処します」
ちょっと恥ずかしそうにうつむくリザ。
「念のためガスバーナーと固形燃料は余計に持っていく。また新宿ダンジョンのボス部屋付近は荒野フィールドと草原フィールドのまだら模様になっているので、火スラや枯れ木枯れ草も手に入るだろう。多少やりすぎても大丈夫だ。この間のようにガチガチにされると厳しいけど」
「問題ありません。コツは掴みました」
「まあ、失敗も経験のうちだ。好きにやれ。純華ちゃんは講習と試験だけど、一応ざっと基礎は説明したし、講習をちゃんと受ければ問題なく受かる程度の試験だ。緊張する必要はない。渡した例題が解けているんだ。後はアレの類似問題くらいしか出ないようだからな」
「うん、すごく簡単だったよ!」
「同意」
「はい、がんばります」
「そうか、がんばれ。じゃあ出発だ!」
「「おー!」」
「お、おー?」
一人純華ちゃんが出遅れながらも、ちょっと恥ずかしそうに腕を振り上げる仕草が初々しくて可愛い。
一旦分かれ、いつもの通り校門前で合流。
その後仙川駅にて京王線に乗る。
荷物が多いので各駅停車の一番後ろの車両を選択。
ここが一番空いてるからね!
女の子三人が並んで座り、僕は向かい側。
リザと千紗は勝負ロリ服だが、純華は普通のパンツスタイルだ。
ちょっと残念。
純華ちゃんてロリ服嫌いなのかな?
リザとお友達ならモデルに誘われても良さそうな容姿なのに。
まあ、ちょっと恥ずかしがり屋さんなところがあるから、辞退したのかもしれない。
なんてこと考えながらもキャッキャウフフしている女の子たちを微笑ましく見守る。
話題を引っ張るのはやはり千紗だね。
それにリザが乗っかる形で話題をふくらませる。
純華ちゃんはあまり話さないけど、ちゃんと楽しそうだ。
特にもふもふの話題となると目を輝かせて、その話をねだっていた。
ということでやってきました、通称新宿冒険者免許センター。
正式名称はなんかあった気がするが、誰も覚えちゃいないw なんか長ったらしい名前だ。
これは試験に出ませんw
新宿ダンジョンは目と鼻の先だ。
現在でいうところの一種免許は実習が必須だったから、利便性の高いここの建物が使用されることになったらしい。
「さて、忘れ物はないよね? あと余計なものの持ち込みも禁止だから。発覚したら問答無用で失格だからね。不用品はちゃんとロッカーにしまうこと。ロッカーは暗証番号式だから暗証番号は忘れないように。お昼はここに食堂スペースがあるからそこで食べるといい。お弁当の持ち込みも可だ。免許証は即日発行だから忘れずに受け取ること。受け取る前に帰る必要がある場合は郵送の手続きして、あと変な人に声をかけられても返事しないように、危ないと思ったら大声出すか防犯ベルを鳴らす……」
「おにいちゃん、またおんなじこと言ってるし」
千紗が呆れて僕の注意をぶった切る。
いやだって不安なんだよ。受付が終わっても待合室でグダグダ注意するほどには。
千紗達の時ほど入念な準備が行えなかったから、余計にね。
「大丈夫です、先生。いまわたしはやる気に満ちていますから」
「おっ、おう。それならいいが。やる気が空回りしないように平常心で挑め。トイレもちゃんと済ませろよ」
「おにいちゃん、また注意始める気? じゃあ純華ちゃん頑張ってね! おにいちゃんがここにいるとずっとこの調子だろうから、とりあえずダンジョンに放り込んでくるね!」
「うん、純華よ。健闘を祈ります」
「ありがとう、リザちゃん、千紗ちゃん。行ってきます」
純華が試験会場に移動する。
僕も二人に引っ張られて新宿ダンジョン管理局へと連行された。
場所は違えど手続きは同じだ。
安心のお役所仕事w
これが飲食店だともう大変。
先払いに後払い。注文も取りに来るところもあれば、専用窓口での購入、食券からタブレット注文等々。
運んできてくれるところもあれば、セルフもあり。
支払いも現金なら間違いないかと思いきやキャッシュレスオンリーとか稀によくあるし、キャッシュレスも群雄割拠激しく一種類じゃ使えないところが続出。
たまに機械が壊れる、残高がない、カードが対応してなかった等々で、支払難民が発生。
あれ、支払えなかった人ってどうしてるんだろうね。考えると、夜も寝られない、かもしれないw
その他セルフレジもあれば会計だけ店員さんがやって支払いはセルフとか。
専門用語で注文しなきゃいけないラーメン屋とか注文カウンターにメニューのないハンバーガー屋とか謎のマナー・ルールがあるお店とか訳が分からないよ。
ということで初めての新宿ダンジョンでも戸惑うことなく受付を終了。
ここは人が多いから手続きも事務的で、仙川のようなアットホームな感じのフォローもなし。
おじさんが淡々と手続きを済ませてくれた。
流石に幼女の赤ブルマ白ブルマには一瞬ひるんだが、それ以外特にリアクションもなし。
まあ、新宿ならこれ以上に変な輩も多いのであろう(偏見)。
というわけで逮捕されかかるとかのイベントも特になしで、一層入り口まで到達。
しかし。
ぴんぽーん!
「あれ、入れないよ?」
自動改札が閉まって千紗が通せんぼされた。
「誰かまだ出口付近にいるな。ほら、ここの赤いランプ消えたら行けるようになるから。ちょっとまとうか」
「わかった」
待つこと三分ほど。
その間後ろには誰も来なかった。
入るタイミングが偶然かぶったっぽい。
やはり人気の新宿とは言え一層に入る人は少ないのだろう。
後ろを通るパーティーは何組かいたが、順番待ちするものは皆無であった。
「入るぞー」
「うん!」
「命令受諾」
三人で初めて入る新宿第一層。
見た目は仙川ダンジョンとはだいぶ違う。
気候自体は春先で同じなのだが、こちらは荒野フィールドと草原フィールドが混ざりあった感じなのでちょっと枯れた雰囲気がある。
「右翼問題なし! クリア」
「左翼問題ありません! クリア」
「……前方問題なし。クリア」
相変わらずやるのね、これ。
「しゅっぱーつ、しんこう!」
「「おー!」」
千紗の掛け声に二人が合わせる。
もう千紗がリーダーでいいんじゃね?
僕よりみんなのほうが強いしな!
「じゃあ、当初の予定通り、ボスを倒してすぐさま二層に取って返す。階層に出てくる雑魚スライムは無視だが接近には注意しろよ。ぴんくのやつふんづけたらポンチョなんか役に立たないからな」
真下から溶解液攻撃が来るからね!
「わかったー」
「命令受諾」
二人を伴ってボス部屋へ向けて歩き出す。
すると前方よりやってくる冒険者のパーティー。
「少し横に避けようか」
「うん」
ちょっとだけ左側に避ける。
ダンジョンで逆方向から人が来た時は左へ避けるのがローカルルールだ。
ここ試験に出ました。
向こうもこっちに気がついたのか、左へ避けてくれたので、特にトラブルもなしにそのまま歩き続ける。
「おにいちゃん。なんか嫌な予感がするよ」
「同意。妾のシックスセンスが、異変を訴えています」
「き、きぐうだなぁ! 僕もなんか悪い予感がします。第六感とかないけど!」
「「「ハッハッハッハッ!」」」
三人は乾いた笑いを漏らす。
「今のひとたち、絶対ボス部屋からの帰りだよね?」
「なのにものすごい不満顔。悪態もついてました」
「こっちもかよ。あんなもん倒せるかーとか言ってたね」
これはあれだ。
ぴんく再び?
「どうする? 別の所いってもいいけど。ここいらは結構近くに他のダンジョンあるぞ。一旦外出て電車に乗ったほうが早いけど」
「この辺ってぴんくまみれな気がします、導師よ」
「またまた奇遇だな。僕もそんな気がするよ」
第二種免許試験が始まって半月は経つからね。
ゴールデンウィークに合わせて潜るやつもそれなりにいただろう。
前半でそんなのが殺到すれば、あっというまに巨大ぴんくまみれになるに違いない。
そんなの自衛隊や局の職員だけじゃ対応しきれないだろうなー。
なにせボス戦は一度しかできないってものじゃないからな。
リポップまでちょっと時間がかかるとは言え、初心者だとフィールドでスライムを探すより早かったりする。
順番待ちがいない限り狩り放題で、経験値も雑魚より多い。
ぴんく以外は危険も少ないので、これでレベル上げするやつも少なからずいるのだ。
で、厄介なのが出たら引き上げる。
はた迷惑な冒険者が少なくないらしい。
「リザちゃん、これはリベンジのチャンスだよ!」
「ふむ。なるほど、望むところです」
「一応薪になるもの拾いながら行こうか」
僕たちは枯れ草や枯れ枝を拾いながらボス部屋に向かう。
途中さらに一組がボス部屋方向から戻ってきたが、倒したようには見受けられなかった。
こっちの持っている薪の山に不思議そうにしてたけど。
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